恐怖で人が死ぬことってあるの?

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恐怖で人が死ぬことってあるの?
Image: Gizmodo US

あっ…。

恐怖で人が死ぬことってあるのでしょうか? 怖かったり驚いた時に「心臓が止まるかと思った!」なんて言葉が出ますが、それって本当?

ええ、決して大げさではなく、少なくとも過度なストレスが心臓に負担をかけて死に至らしめるということはあるみたい。

しかも1940年代には有名な科学者が「Voodoo Death(呪いの死)」なんてB級ホラー映画さながらの論文を真面目に書いてしまうほど、「恐怖と死」は関係があると考えられているようです。

というわけで、今日は恐怖死についてのお話です。

Video: Gizmodo US

恐怖とは、感情のひとつです。ストレスを感じると、私たちの体はアドレナリンというホルモンを分泌します。アドレナリンは体にいろんな働きかけをしますが、心臓のポンプの働きが活発になります。ふざけたお面をつけた殺人鬼に追いかけられて全速力で逃げなければいけない、といった場合にはいいのですが、これが弱い心臓に起こった場合は問題です。

たとえば、動脈血栓がある人なんかは、過度なストレスによって血液が心臓から脳に正しく送り出されなくなり、心臓発作脳梗塞を引き起こします。

ジェットコースターに乗った後に死んだ、なんて話がありますが、実際に1994年から2004年の間に7人がジェットコースターが引き金となって死んでいます。アメリカ心臓協会は心臓が弱い人にジェットコースターに乗らないよう注意喚起しています。

しかしそういった類の恐怖でなくとも、健康に見える人を恐怖で殺すこともできるのです。自然災害の後など、過度なストレスが心臓の一部を麻痺させることがあります。はっきりと明らかにはなっていませんが、「たこつぼ心筋症」と言われるもので、精神的に過度なストレスを受けた後、心臓の筋肉が収縮しにくくなって血液を正常に送り出すことができなくなります。

閉経後のホルモン作用に関係があるのか、高齢女性に発生割合が高いとされています。 一度発生すると再び発生するリスクがあり、別の心臓疾患を引き起こす確率も上がるといいます。「たこつぼ心筋症」は正しく治療されれば直ぐに症状は収まり、後遺症も残らないと言います。しかしならないためにもストレスを避けるに越したことはないでしょう。

ブードゥー・デスは現実に

1942年、生理学者でありハーバード・メディカルスクールの研究者であるウォルター・キャノン氏は、「Voodoo Death(ブードゥー・デス)」という学術論文を発表しました。

しかし論文の内容におふざけ要素は一切なく、キャノン氏はブードゥーの呪いによってもたらされると思われているものを含む歴史的超自然的死は、超自然的死ではないと主張しているのです。

キャノン氏は「fight or flight(戦うか逃げるか)」という動物の恐怖への反応を提唱した科学者として知られる人物です。

「よく知られていることですが、恐怖は、もっとも深く根付く支配的な感情で、しばしば生物全体に深刻な生理的障害をもたらします。そして持続した障害は有害になる可能性があると証明されています。」

危機感が人を殺す

当時、キャノン氏は強い恐怖が人を「戦うか逃げるか反応」に向かって突き動かし、ホルモンが異常分泌されて、最悪のケースだと心臓に致命的な負担をかける可能性があると推測しました。また、恐怖と孤立が人間を食べ物と自ら遠ざけ、死期を早めるとも理論化しています。

私は個人的にキャノン氏の意見は正しいと考えています。私と同じように「出る部屋」に住んだことがある人なら、「恐怖による衰弱」を経験したことがあるのではないでしょうか。

「出る部屋」での体験

私はLA留学時代に家賃と場所に惹かれて所謂「出る部屋」でルームシェアしたことがあります。入居してすぐにルームメイトが「夜になると首吊り男性の影が見える」と言い出し、徐々に家に寄り付かなくなりました。ひとりになった私は「そこに成仏できていない男性がいる」と考えるだけで恐怖のあまり自室から一歩も出られなくなってしまいました

リビングに行きたくないから家では何も食べず、トイレに行きたくないから飲み物も飲めませんでした。考えれば考えるほど眠りに落ちることができなくなり、常に睡眠不足。一気に白髪が増え、その家にいる間はひたすら心臓がバクバクするようになって、リアルに「このままでは神経が衰弱して死んでしまう。」と感じました。たった4ヶ月で引っ越し、その後、平常な生活と健康体を取り戻しましたが、白髪だけは戻りませんでした。

呪いは気から

あの時、私はルームメイトの発言をきっかけに、雪だるま式に想像を膨らまして怖がっていました。呪いが人を殺すというのも、自分は誰かから呪われているらしいと知ると、神経過敏になって自らどんどん衰弱して結果的に死んでしまうのでは、と思います。

「たこつぼ心筋症」にしても、はっきりとわからないことがあるため、恐怖と死の因果関係を証明するにはまだまだ研究が必要かもしれません。しかし、恐怖がストレスになることは確かなので、恐怖控えめを意識したらいいかもしれませんね。

あ、減恐でお願いします。