「ウチの職場、また社員が辞めたんです。ここでは成長できないって。優秀な人ほど、どんどん会社を去っていきますね。私もそろそろ、次を考えないと」。

 最近、IT企業やユーザー企業のシステム子会社といったIT職場で働く人たちの転職が、以前にも増して目立ってきたと感じる。TwitterやFacebookなどを見ていると「○○社を退職しました!」といった具合に、退職の文字がタイムラインでやたら目につく。

 退職者の世代も様々で、20~30代の若手や中堅から、40~50代のベテランや管理職まで幅広い。人材不足による求職者側の「売り手市場」の流れも影響しているだろう。

 だが理由はそれだけではない。率直に言おう。優秀な人ほど今のIT職場に見切りを付け始めたのだ。なぜIT職場から優れた人材が去っていくのか。その背景を問題地図を基にひも解いてみよう。

近視眼的なIT職場の問題地図。社員がどんどん辞めていく
近視眼的なIT職場の問題地図。社員がどんどん辞めていく
(出所:あまねキャリア工房)
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 IT職場はいつも目先の開発案件の納期に追われ、遅れることが許されない。スケジュールもコストも常にカツカツだ。何かが狂えば、すぐにトラブルになる。

 そんな状況では、職場環境や仕事のやり方を改善している時間も余裕もなくなって当然だ。人材を育成するゆとりもない。

 結局いつまでたっても、非効率な働き方が解消されない。顧客の働き方改革を支援しているというのに、自社のIT職場は火の車だ。皮肉な話である。

 現場のモチベーションが上がらなければ、良い人材は育たない。顧客に改善を申し入れる余力もない。そんなことをしている暇があったら、目先の仕事を片付けたほうがマシと考えてしまう。だから顧客のリテラシーはいつまでも上がらない。

 そして今日もまた、顧客は悪気もなく、こう言い放つ。「ついでにこの要件もお願い。でも納期は延ばせないし、予算も増やせないから。あとはヨロシク!」。本来あってはいけないことだが、現実にはこうした発言が飛び交っているのが実情である。はっきり言って、仕事の割りが合わない。本来なら、顧客を「教育」しなければならない。