若いと思われていた天の川は、実は古かったのかも?
地球から約1590光年に位置する、とある小さな星は135億3000万年という古さであり、これまでに発見されたもっとも古くからの星のひとつとなっています。
その名は「2MASS J18082002–5104378 B」。長いので「J1808-5104」と省略されて呼ばれているのですが、これはボルチモアにあるジョンズ・ホプキンス大学のケヴィン・C・シュラウフマン博士が率いる、天文学者のチームによって発見されました。
尚この発見の詳細は、The Astrophysical Journalの次号に掲載される予定ですが、ネットではすでにarXivに掲載されています。
どんな星?
推定135億3000万年前に生まれたこの星は、137億年前に起こったビッグバンの後に登場した星の第1世代のもので、さらには天の川の中でもっとも古代の星の一つであるばかりでなく、宇宙全体の中でももっとも古い星の仲間の可能性もあります。
博士はこの星について、以下のようにコメントをしています。
この星はおそらく、1000万分の1の確率で存在しています。第1世代の星について非常に重要なことを私たちに伝えています
確かに、この発見はもっとも初期の星がどのようなものか、それらがどこに位置しているかについて、人類が発見前に考えていた先入観に疑問を投げかけるものとなりました。
第1世代の特徴
ビッグバンの後に出現した星の第1世代は、水素、ヘリウム、微量のリチウムだけで構成されています。
そうした原始星が超新星爆発したとき、それらは宇宙に重い要素をバラ撒き、次世代の星々がそれを取り込んでいきます。したがって、星の死と誕生のサイクルが永遠に続くに従い、星の重金属含有量が増加していくことになります。
J1808-5104の正体
天文学者がマゼラン望遠鏡とラスカンパナス天文台、そしてジェミニ天文台で分析したこの星は、例外的に重金属が乏しいものでした。
「J1808-5104」は、2つ恒星系の小さい仲間です。小さな星の重力の影響を受ける、大きな星の「揺れ」を測定することで、天文学者は「J1808-5104」の質量を推測することができました。さらに高分解能光学分光法を用いて、炭素、酸素、鉄などの元素を識別したのでした。
今日まで天文学者は、約30の古代の重金属が少ない星々を発見してきました。しかし、「J1808-5104」は太陽の質量のほんの14%で、博士と同僚たちは赤色矮星だと推測しています。
そして実際には、星の中に見られる重元素の量がもっとも少なく、水星と同じ元素含有量を持っていることが判明しました。「J1808-5104」の重金属含有量が極小なため、研究者らは「ビッグバンから1世代離れたものかもしれない」という声もあります。
ちなみにこの新発見以前には、我々の太陽よりわずかに小さい恒星「SDSS J102915+172927(別名Caffau’s star)」が、もっとも重金属が乏しい星とみなされていました。
私たちの太陽の寿命は約100億年ですが、このような低質量の星は理論的には何兆年も燃え続けることができます。博士いわく…
これらのような小さい星は非常に長い間光る傾向があり、この星は順調に歳を重ねています。135億年前に形成されたときとまったく同じように見えますね
ここに最古の星があるということは…
実は天の川に浮かぶこの星の位置も奇妙です。
「J1808-5104」は銀河系の「薄い円盤」の一部であり、私たちの太陽もそこにあります。本来なら古い重金属不足の星は、若い星がたくさんある活動的で混雑しているこの場所には存在しないはずなのです。
逆説的に考察すると、天の川の薄い円盤というのは、我々の考えより30億年も古いってことを示唆しているのです。
もしかすると今後も新発見があるかも?
新しい発見は魅力的ですが、発見は奇妙で予期しないものでした。なので博士と彼のチームが何らかの間違いをしていないことを確認するため、この研究は他の天文学者によって再現されるべきと考えられています。
それはさて置き、「J1808-5104」の発見は天の川にもっと古い星がある可能性を示唆しています。より多くの古代の星が発見されるにつれ、私たちは宇宙についてより初期の時代についてもっと学べるでしょう。
Source: arXiv, The Astrophysical Journal