「反応しない」という、本能への逆らい。
Amazon Prime Videoにて、『HITOSHI MATSUMOTO Presents FREEZE』が配信中です。10人の参加者が互いを笑わせ合う『ドキュメンタル』に続く、松ちゃん×Amazonタッグのバラエティ番組第2弾ですね。
この『FREEZE』は、タイトルの通り動いたらダメというルール。密室に集められた8人の参加者は、「フリーズ」のかけ声が聞こえたら、その場で一切の動きをやめて静止しなければなりません。たとえ水がかかっても、爆発物がやってきても、ドローンが降ってきても。「リリース」の合図があるまでは動いてはならないのです。
とはいえ、人間は危険を感じたら体は動いてしまうし、なにかが起きたら反応してしまう生き物。「絶対に動かない」というのは、本能に反する行いです。じゃあ、動かないことを生業としているプロの人たちならば?
というわけで、動かないことを職業にされている「彫像芸(スタチュー・パフォーマンス)」の方をお呼びして、実際に『FREEZE』を見ても動かないでいられるのかを検証してみることにしました。いうなれば、プロのフリーザー参戦!
ご協力いただいたパフォーマーさん
アストロノーツさん(左):宇宙飛行士のコスチュームに身を包み、浮いているようなポーズで動きを止めるパフォーマンスで日本各地に出没。即興劇集団インプロモーティブ 座長も務められています。
シロちゃん(右):パフォーマンスグループ「東京Hack」メンバー。スタチューとして動きを止めつつ、必要に応じてリアクションも行う、コミュニケーション色の強い「グリーティング」というスタイル。
ギズモード・ジャパンからは、私ライターの山田が素人代表として参加。この3人で『FREEZE』のエピソード1を視聴し、どれだけ動かないでいられるのかを検証します。番組の驚かせシーンに対して、どれだけフリーズできるかということですね。
現場はこのような感じで、立ちながら『FREEZE』を見ている様子をGoProとiPhoneで撮影しました。番組内の参加者は座ってフリーズしていますけど、せっかくプロのパフォーマーに来ていただいているんだし、なんか立ってポーズを作ってもらったほうがそれらしいかなって。
それでは、39分間の立ちっぱなし視聴開始! ルールは番組と同じく、「フリーズ」の合図とともに僕たちもフリーズし、「リリース」の合図で動いてよし、とします。謎の緊張感が現場を覆う…!
これは一回目の「フリーズ」の合図がかったところ。序盤だけあってかなり静止できていますね。にしても、なんか画が、すごい。
これは二回目の「フリーズ」で、回転するアレが登場したところです。実は、僕はすでに番組をいちど視聴済みなんですけど(アストロノーツさんは初見、シロちゃんはちょっとだけ見たとのこと)、このシーンは好きなのでどうしても表情筋がフリーズできませんでした。せっかく三戦(サンチン)立ちしたのに。
にしてもすごいのは横のお二人で、「フリーズ」の合図のたびにポーズを変えてるんですよ。ただ立っているだけでもポーズが違えば、画角は同じでも動きが出てきますねー。
これも好きなシーンが出てきたので表情筋がほぐれてしまいました。この時点で30分以上立ちっぱなしなので、疲労のせいかどうも動きたくなってきます……。もちろん「リリース」のあとは動いてるんですけど、足腰の負担がどうにも。
最後の「リリース」を合図に、なんとか検証は終了。いやぁ、初見だったらもっとリアクションしてたと思うので、事前に見ておいて本当に良かった。むしろ初見のアストロノーツさんはよく耐えたなと思います。表情筋もフリーズさせちゃったの? できちゃうものなの?
せっかくなので、動かないでいるコツをお二人に伺ってみました。そもそも動かないことにコツや練習法はあるんでしょうか?
──動かないパフォーマンスをするにあたって、何かトレーニングはされていますか?
アストロノーツさん:ジムに行って筋トレはしますけど、練習として家で何時間も静止する、というのはやりませんね。イベントや大道芸のなかで本番をやりつつ、それがトレーニングにもなっている、という感じです。
シロちゃん:トレーニングというか、たとえば家でぼーっとテレビを見てるうちに時間が過ぎて、気付いたら何もしてなかったみたいな、そういうのってあるじゃないですか。それを街でやってるという感じですね。風景を見て心を切り離したりとか。
──どうしてもツボに入ったりして、体が動きそうになった時はどうしてますか?
アストロノーツさん:そもそも、あまりお客さんを見てないですね。視線を合わせると「人じゃん」と思われてしまうので、遠くを見て心を落ち着かせてます。そうすると彫像っぽく見えるし、平穏な気持ちにもなれるんですよ。瞑想っぽい感じはありますね(笑)。
シロちゃん:動画を後で見返してもらえばわかると思うんですけど、ずーっとこらえてブルブル震えてますよ(笑)。でも、ワザとやってる時もあって。僕らを見ているお客さんは動くか動かないかを見ているけど、いざ動いた時には彼らが想像しない事をする。止まっているお客さんの心を動かすように。その人を僕たちが動かしたとき「これはいい仕事したな」という手応えありますね。お客さんがびっくりするのと同時に、こっちもびっくりしてみたりとか。
アストロノーツさん:本当に完璧に動かなかったら、それこそ本当の銅像でいいじゃんってなっちゃいますからね。お客さんとしては動きでコミュニケーションがしたいはずなので。
シロちゃん:言葉がなくても会話はできるんです。
──今までにしてきたパフォーマンスで、特にエクストリームだったものって何でしょう?
シロちゃん:深夜に12時間ぶっ続けで建ち続けたやつは今でも覚えますね。ちょっとでも動こうものなら、チェック役に指をさされて注意されて...あれはマジで大変でした。
アストロノーツさん:もう修行僧みたいになってきますね(笑)。
お話の中で「スタチュー芸はその場にいることが肯定される芸」という言葉が出てきたんですけど、これが結構グっときまして。何もしないでいることが芸として成立するのも不思議な話ですし、でもそれは、何もしないことが芸になるほど難しくもあることの証拠でもあるんですよね。
本来動くはずの人間が動かない芸をしていて、それが動く瞬間がある、というのが面白さになっている。この『FREEZE』も、参加者が本物の銅像のように動かなかったらつまらないワケですから、動く瞬間を期待してしまうのでしょう。いやぁ、スタチュー芸、深いです。
というわけで、検証結果としては「動かないプロが『FREEZE』を見たら、リアクションしちゃいそうな時は必死でこらえて、でも体はしっかりフリーズする」でした。表情筋をフリーズするには根性か、遠くを見て心を落ち着かせるかが有効です。というか、笑っちゃっても良いのです。
そんな表情筋クラッシャー番組『FREEZE』は、Amazon Prime Videoにて全話配信中。この機会にプライム会員になった方は、ぜひ前作『ドキュメンタル』もご一緒にご覧あれ。
Source: HITOSHI MATSUMOTO Presents FREEZE
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