性別、血縁、職業、世代など、われわれには意外と多くの「立場」があります。そして知らず知らずのうちに、その立場に収まるための「らしさ」を演じているのかもしれません。

IBMが運営するWebメディアMugendai(無限大)では、女性の服を身につける「女性装」を続ける大学教授が登場し、「立場」が招く現代の生きづらさ、そこから脱却するための提言などが語られていました。

「女性装」で抱えていた不快感の正体に気づく

ロングインタビューに登場していたのは、「女性装の東大教授」としてメディアなどでもおなじみの、東京大学教授・安冨歩さん。その見た目が注目されがちですが、著名な文化賞を受賞するなど新進気鋭の経済学者です。

安冨さんが「女性装」を行うようになったのは3年前。ご自身の体型の問題から、たまたま女性用の服を試してみたところ、精神的にも非常にフィットしていると感じたのがきっかけとのこと。

しかし安冨さんが「女性装」から感じたのは、それだけではありませんでした。当たり前のように男性用の服を着て、自分を偽るように行動することが、実は大きなストレスになっていたことに気づいたのだそうです。

「女性装」により、「攻撃的だった性格が穏やかになり、精神が安定することで顔つきも変わった」ほどだそうで、幼い頃から抱えていた「不快感」の正体が分かったといいます。

安冨さんは、ご自身が抱えていた「不快感」は現代社会や会社の中にも存在すると指摘し、以下のように語っています。

日本社会やそれに準ずる企業という枠組みの中では、「男性や女性らしさについて、こうあるべきだ」という基本のマインドセットを前提に、その枠から外れてはいけないという「秩序」が存在します。誰もが感じていることでも、感じないようにコントロールされている。「女性装はそうした枠組みから脱する手段であり、自分はそれにたまたま気付くことができましたが、多くの人は疑問すら感じないまま見過ごしていると思います。

「立場主義」から解放されるためには

前述のような、人々が「らしさ」にとらわれがちになる社会のシステムを「立場主義」と名付けた安冨さん。既成の枠組みから外れないよう、自分の立場を守るために「役」を果たそうと振る舞う行動パターンだと指摘し、戦後の日本社会に登場し、高度成長によって根付いたと分析します。

立場にとらわれすぎるな。「女性装の東大教授」が教える生きづらさの正体とその解放
Image: Mugendai(無限大)

その上で、すでにこの「立場主義に合わない人が少なからず出てきていることを指摘する安冨さん。ご自身の経験以外にも、子どもを学校に行かせず自由にさせた知人を例に出し、既存の社会システムとは「違う方法」があることに気づく人が増えれば、社会が変わっていくと語ります。

今までと異なる動きをする人が増えていけば、現在のシステムはやがて停止し、違う方向に動き出します。「本当に自分が正しいと感じることをやると考える人が増えれば、日本は変わると思います。

一見奇抜にも見える安冨さんの挑戦。とはいえ、こうして行動する人が出ることにより、常識や仕組みが変わっていくのかもしれません。

他にも、ジェンダー論に限らない多岐にわたった安冨さんのロングインタビューは、Mugendai(無限大)よりぜひ続きをお楽しみください。


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