ソーセージが服を着る動画からわかった、AIが苦手なこと

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  • author George Dvorsky - Gizmodo US
  • [原文]
  • Rina Fukazu
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ソーセージが服を着る動画からわかった、AIが苦手なこと
Video: Alexander Clegg/GIT/Gizmodo US

試行錯誤の結果、リアルな動きになりました。

特にかわいくもキモくもない平凡な顔したソーセージが、人間のように頭や腕を動かしながら服を着る......。正直これだけ見るとどう解釈すればいいか戸惑ってしまいそうですが、私たち大人が毎日している動作がじつは複雑なタスクなのではないかと目をつけたのが、ジョージア工科大学の研究者たちでした。

じつは高度な「服を着る」動作

子どもの頃は誰でも、服から首を出せずにもがいたり、袖に手を通すのに苦戦したりするものです。ジョージア工科大学コンピュータ科学博士課程の学生であるAlexander W. Cleggさん率いる研究チームは強化学習として知られるAI技術を活用し、子どもが学ぶのと同じようにAIのキャラに服を着る動作を学習させる研究を行ないました。

結果的に、ソーセージの顔をした動くボットはTシャツやジャケットを着たり、部分的に手伝いを得ながら服を着たりすることに成功しました。

Video: Alex Clegg/YouTube

うまく服を着るソーセージの姿を見るとスッキリしますが、肘の曲げ方や袖の通し方などに苦戦して服をうまく着れずにいるソーセージの姿には多少の苛立ちを覚える人もいるかもしれません。服を着る動作には、複雑なプロセスが含まれることを研究著者は指摘します。

シャツに頭や腕を通すとき、服とのインタラクションがいかに複雑であるか考える人はそういません。

片方の手でシャツを開いたまま、もう片方の手で袖を通し、腕を袖に押し込み、反対の手も袖に通していく...その間はずっと、手が抜け出せなくなることや服を破くのを防いでいるわけですが、多くの場合には触覚的な感覚が使われています。

たとえばコンピュータアニメーターであっても、人間と同じような動作でキャラクターに服を着させるのは簡単ではありません。Cleggさんのチームが採用した教科学習は、ボットにゼロから複雑な動作スキルを学習させるのに以前から利用されていた技術でもあります。

トライ&エラー

動画でも見られる通り、ソーセージが苦戦していた部分があります。服を着るときに腕を動かして袖を通すため多少の力を使いつつも、服を破いたり手や肘が抜け出せなくなったりするのを防ぐほどの力量にしなければならなかったのです。

そのため研究者らは、強化学習に新たなプロジェクトを追加しました。端をうまく持ったり襟まわりに頭を通せたり望ましい行動をとると加点され、服を破いたり、腕を通せなかったり非生産的な行動をとれば減点されるという制度によって、効率的なルールや戦略を学んで決められた目標を達成させようとしたのです。

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Video: Alexander Clegg/GIT/Gizmodo US
失敗例のひとつ:服に穴を空けてしまっています

ステップ・バイ・ステップ

ただこのやり方はすぐにうまくいかないことがわかり、新たなアルゴリズムが開発されました。子どもに服の着方を教えるようにひとつひとつの動作を段階的に学習させて、ロボットが「いまどのプロセスをやっていて、次のステップは何か」を把握した状態にしたのです。

論文では「服を着るというタスクとその他のサブタスクを分けて各サブタスクのコントロールポリシーを学ばせる必要はあった」としつつ、強化学習によってボットに「服を着るコントロールポリシー」を教えることができるのを初めて示した研究だと位置づけています。

記憶の合体

今回の研究で服を着る動作をしたのは上半身のみでしたが、下半身では片足をあげてバランスを取るなど、また別のタスクが必要になることが予想されます。 研究者らは、必要なサブタスクの数を減らして、学習したスキルを広く一般化することができるシステムの記憶を合体させたいと考えているようです。子どもが経験を通じて柔軟性や行動特性を身につけるのと同じように、システムが学習するのを目指しているといいます。

AIはまだまだ難しい

今回の研究では「強いAIと弱いAI」をつくるのがいかに難しい課題であるか示されています。チェスや囲碁ではAIが人間の名人に勝ちましたが、服を着るなど人間の日常的な作業をやる場合にはシステムにとってかなりのチャレンジであることがわかりました。研究は、12月に行なわれるコンピュータグラフィックスのカンファレンス「SIGGRAPH Asia 2018」で詳しく明かされることになっています。

ソーセージが食べづらいよ。

Source: Georgia Institute of Technology