瞑想アプリや鬱な気分を解消するアプリをダウンロードしようとしているあなたに警告です。

アプリのマーケティングは、日々のストレスがメンタルヘルスの問題を引き起こしており、どんな悩みも自分で解決しなければならないかのようにほのめかしています。

最近、61個のアプリが発信するこうしたメッセージの研究を主導したシドニー大学のリサ・パーカーさんに、どういう点が問題なのか聞いてみました。

自力本願過ぎる

アプリを使って頑張ると問題を解決できる気がしますし、そのアプリがセラピストや医師から推奨されたものだと、なおさらそう思います。

でも、社会のサポートがとても大切なのです。

たとえば、サポートネットワークがあると、メンタルヘルスの管理に役立ちますし、場合によってはプロの助けが必要なこともあります。

なのに、そういうことに関して、アプリは沈黙を保っているとパーカーさんは言います。

一方で、メンタルヘルスの問題がある第一の理由は自分でコントロールできない生活上の要因と関係があるかもしれません。自分でコントロールできることに集中することと、自分でコントロールできないことを管理できていないせいで罪悪感を感じることの境目は微妙です。

さらに、そのアプリが自分に適しているかどうかの判断まで自分でしなければなりませんが、いったいどうやって判断すればいいのでしょうか。

たとえば、ストレス管理アプリのPacificaは「助言については、その正確性、完璧性、適切性に関して一切の表明も保証もしません」と述べています。ですから、全責任がユーザー自身にかかってきます。これでは、助けを求めている人には大変すぎます。

何でもメンタルヘルスの問題にし過ぎる

人は誰でも生きていればストレスや失望を感じます。メンタルヘルスの問題があるなら、こうしたストレスは症状を悪化させたり発症の引き金になることがあります。たとえば、締切があるせいでパニックの発作に襲われたり、午後中不安で集中できずに過ごしてしまうことがあります(私が実体験済です)。

でも、だからと言って、締切のことを心配する人が全員メンタルヘルスの問題があるわけではありません。

パーカーさんの研究で吟味されたアプリの中には、疲労感やイラつきなど、日常的によくあることをメンタルヘルスの問題にしているものもあれば、常に幸福感を感じてポジティブでいられないと問題があるかのように示唆するアプリもあります。

あるいは、学校の成績や人間関係など人生のある領域で成功できないとメンタルヘルスの問題があるせいだと定義するアプリもあります。

どれも精神疾患の症状ではありません。たとえば、あまり気分が滅入っていると宿題ができず、そうなると確実に学校の勉強は遅れがちになります。

精神疾患の「リスクがある」ことについて常に話すことも問題を引き起こす可能性があります。

「そういうメッセージは要注意です」とパーカーさんは言います。「人間は弱いものだ」という印象を与えるからです。アプリを使わなかったからといって、偶然精神疾患になることはありません。

アプリの想定ユーザーの条件に該当しない人も多い

アプリはユーザーのプロフィールを推測し想定しています。

メンタルヘルスの問題は人種、社会階層などを超越しているのに、ほとんどのアプリはユーザーが「中産階級」の「白人」で、「仕事」も「家族」もあることを前提にしているようです。「マインドフルネスのアプリのようなシンプルなアプリでさえ、ユーザーを『家族と一緒にオーケストラに行く白人』と想定しています」とパーカーさん。

たまたま、そのアプリが想定するプロフィールに該当している人はいいですが、多くの人は違います。社会からはみ出たグループに属している人は、こうしたアプリの画面をスクロールダウンし続けると、孤独感が深まるでしょう。

また、貧困やホームレスなどの深刻なストレスを抱えている人は、自分の人生とアプリが示す「のどかな画像」とはかけ離れて見えるかもしれません。

アプリを使用し続けたくなるように設計されている

アプリの中には、そのアプリがユーザーの状態を改善できるか確認できるようになっているものもあります。

パーカーさんはこれについても警戒しています。ユーザーがアプリを使い続けるようにしむけている可能性があるからです。特に悩みを抱えていない人だと、時間の無駄になります。

逆に、深刻な問題を抱えている人だと、アプリに期待するせいで、治療が遅れてしまうかもしれません。

アプリはユーザーがたびたび見るように設計されています。日に何度もリマインダーを発したり、アプリが提供するプログラムを途中で投げ出すと罪悪感を感じさせるようにできているかもしれません。

たとえアプリが役に立つにしても、アプリが求める時間と努力を投資するだけの価値が果たしてあるでしょうか。

マシなアプリの見つけ方

このアプリなら絶対自分に向いている、というアプリにたどりつく堅実な規則は存在しません。現存するアプリで、ユーザーのメンタルヘルスを改善できるかどうかテスト済のものはほとんどないので、その人に向いている完璧なアプリなど存在しません。

米国精神医学会はメンタルヘルスのアプリを査定するガイドラインを発表していますが、これはセラピスト向けに作成されたものなので、ちょっと曖昧です。アプリのユーザーは、「そのアプリの会社は果たして自分の商売の相手にしてもいいと思えるような会社かどうか」という観点で、バックグラウンドを調査しなくてはなりません。

プライバシーに関する方針についてもじっくり考えて、本当に使えるアプリであるという証拠があるか判断しましょう。また、ユーザーが使いやすいかどうか、患者からセラピストにデータをシェアできるかどうかも判断のポイントです。

私の場合、個人的には瞑想アプリはリラックスする必要があるとき役立っていると思うので、これからも使い続けますが、アプリが送信してくるメッセージにもっと注意を払おうと思います。

メンタルヘルスのアプリが自動的に悪いわけではありませんが(特にセラピストから推奨されている場合はそうです)、アプリのメッセージに気をつけて、盲信しないことが大切です。

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Beth Skwarecki – Lifehacker US[原文