世界最大のデジタルカメラを見学してきま....ってデカ!!

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  • author Ryan F. Mandelbaum - Gizmodo US
  • [原文]
  • 塚本 紺
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世界最大のデジタルカメラを見学してきま....ってデカ!!

カメラ自体がインスタ映えですよ。

クリーンルームに入る経験はなかなか日常生活では無いかもしれませんが、いざ実際に入るとなるとかなり神経を使う作業だと分かります。スマートフォンであれ、カメラ用三脚であれ、クリーンルームに持ち込むのであればすべてが糸くず一つ付いていない状態にしなくてはいけません。自分自身も特別な全身スーツを装着します。

グローブの装着方法を間違えれば、そのグローブは廃棄されて新しいグローブを装着しなくてはいけません。もちろん、このグローブを付けて肌を直接触るなんてことはもってのほかです。触れた瞬間に皮脂、死んだ皮膚細胞、さらには想像もつかないような物まで拾い上げてしまうわけです。そんなわけでクリーンルームを体験した私ですが、ルームの中と同じくらい、ルームに入る準備に時間を費やすこととなりました。しかしこれはグローブの装着ミスを繰り返してしまった私の責任なのですが...。

なぜここまでの苦労をしてクリーンルームに入ったかと言うと、3.2ギガピクセルのデジタルカメラを見学するためです。これは史上最大のデジタルカメラとなります。3.2ギガピクセルです。

大きさは小さい車ほどのサイズがあり、焦点面はテーブルほどのサイズとなります。現在建設中の大型シノプティック・サーベイ望遠鏡(LSST)の内側にこのデジタルカメラが内蔵されます。そして完成したものはチリのアンデス山麓に建てられます。

この望遠鏡に課せられた仕事はそのサイズに見合うような、壮大なものです。毎晩星空を撮影し、南半球全体の空をすべて捉えたものを一週間に二つ制作するというもの。このプロジェクトに関わる科学者たちはダークマター、ダークエネルギー、そしてその他の天文学的な謎についての理解を深めることを目標としています。

LSSTによって行なわれるこの調査は夜空を対象とした、最も進んだものとなる予定です。ハッブル宇宙望遠鏡の場合は、空の小さな一部分や特定の物体を観察するのですが、LSSTは夜空全体の映像を制作します。暗闇の中での突然の光はスーパーノヴァを示しているかもしれませんし、何らかの変化はダークマターと呼ばれる宇宙における謎めいた重力的な作用、もしくはそれを押し広げるダークエネルギーと呼ばれる力を示しているかもしれません。

これほど巨大な望遠鏡がなぜ「デジタルカメラ」なのか。それを理解するためにはその構造に注目する必要があります。レンズが光りをセンサーへと促し、光を電気信号へと変換し、コンピューター上のデータとして保存するというもの。iPhoneのカメラのセンサーは700万から1200万画素ほど、デジタル一眼レフカメラの場合は1800万から5000万画素となります。そして今回の巨大なデジタルカメラであるLSSTは189個の1600万画素チップを持ち、すべてが完全にフラットな面の上に並べられます。

一般消費者向けのカメラの場合はCMOSセンサーを装着していることが多いですが、LSSTの場合はCCDと呼ばれるものです。CMOSセンサーは基本的に、ワイヤーを使って各ピクセルの電子を送ります。CCDは電荷を転送し、電圧への変換をチップ上の別の場所で行ないます。CCDはCMOSセンサーよりも高価で、電力消費が大きいものの、ノイズが少ないとされています。

センサーはクリオスタットの中に入れられ、摂氏-100度の真空の中に保存されます。これでさらにノイズを防ぐことができ、またセンサーにチリやホコリが付くことを防げます。私が冒頭で書いたような苦労をして特殊スーツを着る必要があったのはこのためです。そしてレンズがフォーカスする光を集めるための鏡があります。LSSTが持つ最も大きいレンズはなんと1.55メートルの幅になります。

生み出すデータの量も半端ではありません。おそらく一晩に15テラバイトにはなるとのこと。コンピューターがその都度データを処理し、高速光ファイバーがデータをアメリカまで送り届けるというわけです。最終的なデータはすぐに、あらゆる人が見ることができるようになります。そうです、研究者じゃなくても見られるんです。これはワクワクですね。

しかしLSSTも万能というわけではありません。何か面白い現象を見つけた場合には、赤外線や紫外線を集める他の望遠鏡が追跡調査をすることになるでしょう。あくまでも一つのことをするためのツールなわけです。

しかしデジタルカメラと言われるとご飯やビーチを撮影してInstagramに上げるようなものを想像してしまいますが、これは文字通りスケールが違うデバイスとなっていますね。