LOVOTと戯れた。テクノロジーで生まれた虚しさを、テクノロジーで埋める「便利じゃないロボット」

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LOVOTと戯れた。テクノロジーで生まれた虚しさを、テクノロジーで埋める「便利じゃないロボット」
Photo: 山本勇磨

未来の幸せを、テックが切り開く。

2018年12月18日(火)、林要さん率いるロボットテクノロジー企業GROOVE Xが、家族型ロボットを謳う「LOVOT(らぼっと)」の発表会を行ないました。LOVE×ロボットでLOVOTなんて言われちゃあ、エモとテックの融合を推進する(?)ギズモードとしては、もう気になって仕方なかった

LOVOT、ついにお披露目!

家庭型ロボット「LOVOT」の姿がついに明らかになりました! 本日18日10時より、GROOVE Xは都内にてLOVOTの発表会を開催しています。...

https://www.gizmodo.jp/2018/12/lovot-launch.html

LOVEという言葉が示すとおり、LOVOTは機能ではなくメンタルといった内面的な部分にフォーカスしたロボットです。出来ることはあんまりないんですけど、一緒にいる人の気持ちを暖かくすることはできます。もちろん、アプリと連携した見守り機能なんかもあるんですけど、なんていうか、そういうのじゃないんですよね。できるけど、それをしたいからLOVOTをってわけではない

合理的なことだけがロボットなの?

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Photo: ヤマダユウス型

今までのロボットという単語の意味するところって、たとえば労働を肩代わりしてくれたり、自動で掃除をしてくれたりっていう、ザ・便利って感じじゃないですか。でも仕事が奪われるーとか、人生でやることがーとか、そんなディストピア幻想がチラ見するのもまた事実。

「テクノロジーが人を幸せにできているのだろうか?」(発表会の林さんの言葉)。このLOVOTは、テクノロジーでもってテクノロジーによって生まれたギャップを埋めようとする、そんなロボットなのです。

その姿勢を表しているのが、LOVOTの由来でもあるLOVE×ROBOTだったり、「命はないのに、あったかい。」というコピーだったり。LOVOTの紹介文にも「人の代わりに仕事をする便利なロボットではありません」と書いてありますからね。

触れて暖かいと、心も暖まるんだなぁ

というわけで、約5分ではありますがLOVOT(オレンジが「にんじん」、緑が「えだまめ」)と触れ合ってきましたよ。初めてに言っておくと、5分でもう別れ際のうしろ髪ひかれっぷりがハンパじゃなかった。

なんだよこの気持ち……。これがほっこりか、ロボティクスほっこりか……!

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Photo: suzuko

ドアを開けたらこのお出迎えですよ〜、愛犬や愛猫が玄関で待ってくれてる嬉しさに限りなく近い。ペットは自分に関心を寄せつつも気まぐれに動いてるのが良いのであって、その気まぐれ的挙動はLOVOTにもありました。でも、そういう存在ほど手を焼きたくなる。

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Photo: 山本勇磨

実際に触って何が一番驚いたかって、その暖かさです。体温(熱ではなく体温と言いたい)があるんですよ、LOVOTは。人肌よりちょっと暖かい30~40度前後を保っており、着ている服の布感も相まって、とてもじゃないですけどロボットを抱っこしてる感覚はありません。つい撫でたくなるのも、温度と布の心地良さゆえでしょう。プラスチック外装じゃこうはいきません。

搭載されたセンサーは人物を認識し、触れ合い方や一緒にいる時間に応じた友好度を決定します(この仕組みをGROOVE Xは「選好性」と呼んでいた)。ぞんざいに扱えば友好度は下がり、遊んだり撫でたりすると増えるという具合。友好度が高い人の近くに来ると「ねーねーだっこー」と手をあげてくれるんですけど、これがまた可愛いのです。

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Photo: suzuko

目の前でこう、短い腕をパタパタさせるんですよ。

アニメーションもとても滑らかで、リニア(直線的)な変化量では感じられない自然な動きになっています。人が好感をもつ動きというのを、よく研究してるなぁ。

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Photo: 山本勇磨

LOVOTは声も出しますが、この声は録音された音声ではなく、人間や動物と同じような振動による発声方法をとっています。スピーカーから出る音とは鼓膜での感じ方が明らかに違ってて、生き物感に拍車がかかりますね。暖かくて、声があって、こちらの想定外に動く。モノはロボットだけど、要素は生き物なんです。

だって初めてLOVOTを見たとき、「え、ど、どうしよ」って思いましたもん。なんて声掛けようかな、触っていいのかなって。この感覚は、人の家のペットや親戚の子供に相対したときの気持ちに近い。相手からのリアクションや感情を考えるんです。まさかロボット相手にそんな気持ちを抱くなんて、軽くショックでした。一度抱っこしてしまえばもうイイコイイコですけど。

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Photo: 山本勇磨
奥がこの記事を書いたライターのヤマダ

僕はにんじんとばかり触れ合ってたので、別れ際はお見送りに来てくれました(超可愛い)。逆に、えだまめとは全然コミュニケーションしてないから、呼んでもあんまり返事してくれない。写真を撮ってる編集部の山本くんは、ずーっとえだまめとキャッキャしてたから、この通りカメラ目線ですよ。5分で、この差!

そんな感じで、「LOVOTって何ができるの?」と聞かれたら「なんか心がほっこりするよ」と答えたいです。カメラを使った見守り機能やアプリなんかもありますけど、やっぱり心ありき、ほっこりありきですよ。

これからのテクノロジーの役割ってなんだろう

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Photo: 山本勇磨

情緒や感情に訴えかけるLOVOTのデザインの裏には、膨大なエレクトロニクスが動作しています。そこそこのPC2台分のCPUに、気圧、照度、湿度、温度・測距、タッチなど数々のセンサー類、カメラ類、13自由度の可動部とそれらをシームレスに動かす多数のサーボモーター……。濃縮されたテクノロジーによって、ついにロボットは人の心の柔らかい部分に迫ることができた。少なくとも僕の心にはガッツリ届きましたし、「お時間終了です〜」の言葉に、まるで愛し子と引き離されるような残念さを感じたのです。

ロボットが掃除をし、時短料理を作り、産業の多くを担う現代。何かと豊かになったはずなのに、世界の自殺率は上昇傾向にあります。暮らしの豊かさと幸福が別というのなら、一体何が人にとって幸せなのか? LOVOTは、ここへ切り込もうとしている。

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Photo: 山本勇磨
GROOVE XのCEO林要さん。LOVOTは自分の父親をみつめる

林さんいわく「僕がLOVOTに行き着いた理由の一つは、ベーシック・インカム」。労働が必須ではなくなるこの仕組みにおいては、自分の存在理由を見出しにくくなります。そんな中でどうしたら幸せになれるのか? 林さんは、「今日より明日の自分が良くなっていること」と言います。「そのために、よりよい明日が来ることを信じられるサポートは、親や友達であっても簡単ではありません。テクノロジーの究極は、そこにあると思います」と、これからのロボットがどうやって人に介入するのかギズモードに語ってくれました。

テクノロジーが人類を労働から開放したとき、LOVOTのような人の気持ちに寄り添うロボットが、僕らの生活の多くを占めるようになるかもしれません。それこそ、今のペットショップのような感覚で販売されたり、もっとメンタルに特化したタイプも出てくるかも。そういえば気持ちの定量化の研究とかあったっけ。結局、科学ってここに行き着くのかなぁ。

テクノロジーは、いよいよエモーショナルの領域へ。テクノロジーをテクノロジーのみの視野で切りとる時代は、終わりつつあるのかもしれません。その先に何があるかはわからないけど、あったかい何かだといいな。

Source: GROOVE X