年明けは天文学の新たな夜明けになるのかも。
太陽系で最遠の天体「Farout(ファーアウト)」を発見したニュースでもお伝えしましたが、NASAが2006年に打ち上げた、冥王星を含む太陽系外縁天体の探査を行なう無人探査機「ニュー・ホライズンズ」が、正月にカイパー・ベルトにある天体「Ultima Thule(ウルティマ・トゥール)」を接近飛行(フライ・バイ)する予定で、いまは5万7000km/hで移動している真っ最中です。
3週間かけて前方確認
そして2018年12月19日が、地球の管制センターから「ニュー・ホライズンズ」に最後の軌道調整の指令を送ることができる日でした。5万7000km/hという超高速は、米粒大の障害物でも探査機を破壊してしまうほどの速度になります。ということで、これまで過去3週間、「ニュー・ホライズンズ」の危険予測をするハザード・チームは、コース修正を確かなものにするべく、「ウルティマ・トゥール」周辺に微細は塵や石などが浮かんでいないか、目を皿のようにしてきました。
接近の予定日は新年!
しかし道のりはクリアで、コース上に危険性はないので、NASAは今日そのまま飛ぶことにゴー・サイン。障害物のない軌道を目前にし、探査機は「2014 MU69」としても知られる「ウルティマ・トゥール」まで3,500km以内という範囲まで近付いています。そして接近飛行するのは、2019年1月1日 0:33 ET(日本時間1月1日 14:33)の予定とのこと。あと2週間弱ですね。
上記の画像は、8月から12月のあいだ望遠カメラ「LORRI」で撮影した何百枚もの「ウルティマ・トゥール」写真をコラージュしたもの。内側の円はもっとも近くを距離する場合の距離を、外側のは遠くを通過する場合の距離を表しています。
どんな天体なの?
「ウルティマ・トゥール」はひとつの丸い天体ではなく、ボコボコの隕石みたいな巨岩がふたつ隣り合った、直径30kmの二重小惑星(バイナリー・アステロイド)、もしくはひょうたんのようにくっついた接触二重小惑星(コンタクト・バイナリー・アステロイド)ではないかと考えられています。
「ニュー・ホライズンズ」の主任研究員、アラン・スターンは声明の中で、このようにコメントしています。
探査機は現在、冥王星に飛ぶより3倍近く近い最適な接近飛行を捕捉しています。ウルティマ、いま行くぞ!
接近飛行する星が遠くなるほど、詳細なデータが提供されなくなってしまいます。ですが探査機は、1ピクセルあたり30〜70mの解像度で「ウルティマ・トゥール」の写真を撮ろうとしているんです。蛇足ですが、冥王星を通過したとき、解像度は1ピクセルあたり約183mでした。どんな写真が届くのか楽しみですね。
ハザード・チームの頑張り
ハザード・チームは3年前、「ニュー・ホライズンズ」が冥王星に近づいたとき、彼らは探査機の望遠鏡を使って障害物の可能性を探ったことがありました。彼らは冥王星の月が、探査機の軌道上に危険な星屑をバラ撒いているんじゃないか? と考えてのことでした。結果、何もなかったので杞憂に終わったんですけどね。
そして今回ハザード・チームは、冥王星から何十億kmも離れた「ウルティマ・トゥール」周辺に、塵が反射して光るハレーションと、惑星を公転する小衛星ムーンレットを見つけようとしたのでした。またしてもその結果、何も見つからず「ニュー・ホライズンズ」はそのまま進むことができることになったのでした。
星屑がないのは良いことなので、残念ってことはまったくありません。良い結果なのです。
地球外生命の発見を目的とした非営利組織SETI協会のマーク・ショワルター氏は、このチームについてこう話しています。
私たちのチームは、一緒に探査機に乗っているように感じています。まるで船マストの上から監視をしている船員のように、危険を先取りしているようです。
チームは、探査機は「ウルティマ・トゥール」の近くを通る軌道に留まるべきだと完全合意し、ミッション・リーダーが我々の合意意見を採用しました
データ送信にはどれくらい?
「ニュー・ホライズンズ」からのデータ送信が届くには、約6時間7分48秒かかります。計算すると、日本だと1月1日の夕方(20:41頃)にデータが届くってことになるのですが……合成や色調整などの画像処理があると、発表までもうちょっとかかるかもしれませんね。
どんなお年玉になるのか楽しみにしておきましょう。
Source: NASA New Horizons, SPACEFLIGHT NOW