2018年はサムスン終わった感が隠し切れなくなった1年

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2018年はサムスン終わった感が隠し切れなくなった1年

P&Gを抜いて世界一の広告主になったサムスン(Samsung)。今年はいくら宣伝しても上昇気流に乗り切れない1年となりました。

期待がかかる折りたためるスマホも、まさかの20万円超えで、早くも「誰が買うんだ?」と言われてます。果たして起死回生のチャンスは訪れるのか? 停滞の1年を振り返ります。

中国でさっぱり売れていない

失速が著しいのが中国市場です。絶頂期には2割のシェアを誇ったサムスンスマホ。それが今や中国メーカーの躍進でコンマ以下までシェアが落ち込み、ここ2年は売れ筋トップ10に1機種もランクインできない低空飛行が続いています。8月にiPhoneを抜いたファーウェイ(Huawei)のリチャード・ユーCEOには、「2019年にはスマートフォン市場シェア世界1位の王座をサムスンから奪える」と宣言されてしまいました。

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中国でさっぱり売れなくなったサムスン。今年も低迷が続き、中国2拠点のうち天津工場は今月いっぱいでスマホ製造終了が決まった

終わりの始まりのGalaxy S9

スマホは少しでも弱点克服・武器強化を怠ると追い越されてしまう競争の激しい世界なのに、今のサムスンはそのどちらもうまくいっていない印象です。それが目に見えるかたちで出てしまったのが今年のGalaxy S9でした。

あまりにも微妙なマイナーチェンジで、毎年機種替えしている人も今回は見送ってしまったのではないでしょうか。「Qualcomm Snapdragon 845を搭載した初のスマホ、画面最強」で初速はあったんですが、あっという間に追いつかれて、後に残ったのは…

・ 背面が広角と望遠のデュアルカメラ(スマホでは初)

・ベゼルレスに近い

・AR絵文字

ということぐらい。飛びつく材料としては弱すぎます。自分はカメラが好きなので買ってみたんですが、写真は期待したほどじゃなかったです。AR絵文字も単にBitmojiのパクリの劣化版だし、そもそもデザインになんの新しさも感じません。あんなにとんがっていたGalaxy S5時代のサムスンはどこに消えてしまったのか…。

メタルとガラスのサンドイッチを広める起爆剤となったGalaxy S6、世界初の両サイド曲面ディスプレイを実現したS6 Edge。どちらもスマホのデザインを永久に変えた機種でした。S7ではS5の防水を復活させて、microSDカード用スロットを搭載、見た目はS6風に。次のS8でも「こんなきれいなスマホ見たことない」って思ったものです。ベゼルレスに限りなく近づきながらもフロントカメラと虹彩スキャンはしっかりあって、それをノッチ抜きで、というところがすごくて。 ホームボタンがオンスクリーンになって、ホームボタンに割り振られていた指紋スキャナーは背面に移動しましたけど、これもよく考えてるなあ、と感心しました。

ところがS9は…S8と見分けつかないじゃないですかね! 違いと言っても、背面の指紋スキャナーが横から真ん中に移動したことぐらいで(横でも無問題だったのだけど)。「押し間違えるだけにあるボタン」と呼ばれているAIアシスタント起動用のBixbyボタンも、消してくれるのかと思ったら、残ってるし! ほかの機能の割り当てができるようになってますけど、ボタンは機能1個で、その1個がものすごくよくできる、というのが理想だと思うんですよね。どっちみちサムスンのAIアシスタントは英語版でも使うことはほとんどないので配慮したという言い方もできますけど。

日本語ではいまだにAIアシスタントは使えないので、「Bixbyボタン」で検索すると、ボタン無効化手順ばかりが上位に表示されます。

たとえば上記動画でもBixbyボタン無効化がメインディッシュ…。Bixbyアプリ人気ランキングの1位と2位がBixbyボタン無効化でみんながお世話になるアプリであることがわかります(6:52~)。ボタンをカメラ起動ボタンに切り替えてからも、一瞬Bixbyがにょきっと出てきて、切ない…。

シェア世界一なのに最新OS未対応

一番問題なのはこれです。曲がりなりにも世界一を標榜するスマホメーカーが、発売から4カ月が経っても最新Android OSに対応していないというのは異常です。

フラグシップモデルはどれひとつAndroid 9 Pieには対応していなくて、唯一対応しているのはミッドレンジのA8sだけ(ミッドレンジを主力にするという噂と符号する動き)。それさえもアジア限定モデルだし、やっと最近になって対応が発表になったばかりだし。Androidのフラグメンテーション問題の元凶を作っているのは、今やサムスンと言われても仕方のない状況です。

Androidのスキンが「14日間だけ無料」という冗談のようなポリシー変更

サムスンはずっとソフトウェアがアキレス腱で、それはいまだに克服できていません。11月上旬発表になったAndroid UI「One UI」は初期のTouchWizほどひどくはないのだけど、グーグルのPixel 3にすっかり注目を攫われていますから、のんびりしている場合じゃないです、ほんと。Galaxy App Storeもぐじゃぐじゃだし、写真のAI編集も出遅れてしまったし。

やっとこないだAndroid 9対応の予告が表示されたと思ったら、「Android 9の無料テーマに変わるのは14日間で、その後はデフォのTouchWizに戻る」というポリシー改正のお知らせで一気に萎えました。それって実質有料化じゃないですかね…。まるでスマホが途中で担保にとられたような気分。

ついにハードでも負ける

ソフトウェアだけならまだしも、2018年はハードウェアでも馬脚を露す結果となりました。純粋なスペック比較では、Galaxy S9より100ドル安いOnePlus 6Tの圧勝です(画面の解像度が低いことを除けば)。

OnePlus 6Tレビュー:米スマホ市場の寵児OnePlusはフラグシップキラー

スマホが高価すぎる。って思っているのはわたし一人ではないでしょう。出先で電話かけたりメールチェックするために、10万円も投資するなんてばかげてる。...

https://www.gizmodo.jp/2018/12/review-oneplus-6t.html

北米ではNote 9が相変わらず大判スマホとスタイラスのNo.1ですが、それはアメリカ政府がファーウェイを水際で止めているからであって、アジアではHuawei Mate 20 Proが「3D顔認証、逆ワイヤレス充電、オンスクリーンの指紋センサ、背面カメラ3つ」という驚異的進化を遂げています。そのどれひとつとして1,000ドルのNote 9にはありません。

攻めているのは広告だけ

ソフトもハードも押される中、唯一押しているのが広告です。こちらはP&Gの広告費を抜いて世界一の広告主となっています。

リスキーな賭けも厭わず攻めており、デジタル一眼カメラで撮った写真をスマホで撮った写真ということにしたCMを流して、一度ならず二度もバレる転機の1年になりました。ブラジル、マレーシアなどで流れたご当地CMということですけど、規模の大小の問題じゃないですよね。会社のOKがないとそういうことってできないと思うので、内部統制も問題だし、「楽してゴマかす会社」というイメージダウンになってしまいました。

オールアウトでやる以外、勝ち目はない

そんなわけで、世界No.1の座を守りたかったらもう小手先のまやかしでは通用しないところまで事態は進んでいます。オールアウト(全面的)。それ以外、生き残る道はありません。

旗艦モデルは大小問わずデュアルカメラにしてメモリも増やして「世界初」と呼べる何かを搭載しないと、これまでイノベーションを率いてきたサムスンの名が泣きます。


5Gスマホ曲がるスマホ穴のスマホ。そういうもので攻めていかないと。もう会場の照明を落として隠し玉を出し惜しみしている場合じゃないということで本年のまとめとします。来年はいい年になりますように。