欅坂46「不協和音」「サイマジョ」はどうやって誕生したのか 作曲家「バグベア」に聞く“ヒットの裏側”(1/3 ページ)

「サイレントマジョリティー」「不協和音」などの作品で知られる「バグベア」に「作曲家になる方法」などを聞きました。

» 2018年12月27日 12時30分 公開
[Kikkaねとらぼ]
※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

 欅坂46やAKB48、ラストアイドルなどに楽曲提供をする売れっ子作曲家ユニット「バグベア」を取材。「サイレントマジョリティー」「不協和音」といった人気曲の制作秘話や、ユニットを組んだ意外な理由、作曲家として活動するためにはどうすればいいのかなどをうかがいました。


欅坂46 乃木坂46 AKB48 HTK48 ラストアイドル バグベア 作曲家 作詞家 作曲家ユニット「バグベア」。「サイレントマジョリティー」ポーズを決めるのは、こぎみいいさん(左)、「不協和音」ポーズを決めるのは、ここみらいさん(右)

「バグベア」が語る作曲家の仕事

 「バグベア」は、メロディーの作曲を全般的に担当する「こぎみいい」さんと、トラック(歌がないインストゥルメンタル)制作やアレンジを担当する「ここみらい」さんによる2人組ユニット。作曲だけにとどまらず、作詞や編曲などマルチに活動し、2018年にはアイドルグループ「Sha☆in」が歌う西日本豪雨岡山復興支援チャリティーソング「僕は君を全力で笑顔にする」の楽曲提供を行っています。

――「音楽は進化するときが来た」をキーワードに活動されている「バグベア」のお2人ですが、出会いはどんな感じだったのでしょうか。

こぎみいい僕とここみらいは高校生のときにやっていた音楽系の部活動の先輩後輩で、ここみらいについては「すごく音楽的センスがいい人だな」と思って注目していたんです。その後お互いに大学へ行ったり、就職をしたりしたのですが、ある日ここみらいから「栄養士として働いているんだけど、今の職場は酷くて……」という相談を受けたんです。それで話を聞いたらあまり良くない環境だと分かったので、「そんな目に遭う必要はないんじゃないの」という話をして、ここみらいの上司に連絡をしたんですよ。


欅坂46 乃木坂46 AKB48 HTK48 ラストアイドル バグベア 作曲家 作詞家 作曲を全般的に担当する「こぎみいい」さん

――上司に連絡ですか、すごい……!

こぎみいい結局ファミリーレストランで、僕とここみらいと、その上司と話し合いをして好条件でここみらいを退職させてもらうことになりました。最終的にそんな感じの職場をやめられたのは良かったのですが、僕が話し合いをして辞めさせてしまったので「責任取らなきゃ」と思って、「2人で音楽をやってみないか」と打診したのがはじまりです。僕の中では2人でやったら絶対いける、という確信があったんですよね。

――ドラマチックですね。そもそも作曲家というお仕事について、何となく分かっているような分かっていないようなところがあるのですが、どうやったら作曲家になれるのでしょうか。

こぎみいい必ずというわけではないのですが、大体は「作曲家事務所」というものに所属する必要があります。

ここみらい今は作曲家事務所自体がとても多いのですが、デモテープを送ったり、オーディションを受けたりして、お返事がもらえたら所属が決まります。作曲家事務所に所属すると、その後は各レコード会社などがやっているコンペに参加できるので、勝ち抜けば楽曲提供をすることができます。


欅坂46 乃木坂46 AKB48 HTK48 ラストアイドル バグベア 作曲家 作詞家 トラック制作やアレンジを担当する「ここみらい」さん

――楽曲提供が決まった後、編曲などはまた作曲家が行うんでしょうか。

こぎみいいコンペにもよりますが、基本的にはアレンジャーさんという方々がアレンジしてくださったりします。僕たちの場合はトラックメーカーのここみらいがいるので、あまりイメージが変わるということはないですね。

――イメージが変わって良くなった曲はありますか。

こぎみいいラストアイドルの「愛しか武器がない」は当初ごりごりのEDM系で結構重たい曲だったのですが、ラストアイドルに沿った感じにアレンジしてもらったなと思います。ストリングスなどが加わったので、ジャンルが変わった感じがしてよくなりましたね。

ラストアイドル「愛しか武器がない」


――お2人はどうやって作曲家のお仕事を知ったのでしょうか。

こぎみいいもともとはアーティストを目指していたのですが、早稲田大学の文化祭で偶然「SCS」というアカペラサークルに所属していた杉山勝彦さん(※)のステージを見たんです。そこで杉山さんが「今年から作曲家になりました。嵐に楽曲提供します」とお話しされているのを聞いて、「作曲家という仕事があるのか!」と衝撃を受けました。作曲家になるきっかけを作ってくださったのは間違いなく杉山さんです。

(※)杉山勝彦さん……嵐「冬を抱きしめて」、乃木坂46「制服のマネキン」「サヨナラの意味」、家入レオ「ずっと、ふたりで」などを手掛ける作家。作詞・作曲・編曲などを手掛けながら、上田和寛さんとのフォークデュオ「TANEBI」のギタリストとしても活動している。

――バグベアのお2人は年間何曲ぐらい作曲されるのでしょうか。

こぎみいいこれまでは年間200曲以上作っていましたが、最近はクオリティー重視なので、100曲ぐらいでしょうか。100曲書いて、その中から選んで、仕上げてコンペに出すという感じです。

ここみらいAメロ〜Bメロ〜サビまでのワンコーラス(90秒ぐらいのもの)を作っていきます。

――作業工程はどんな感じなのでしょうか。

こぎみいい流れとしては、ここみらいが作ったトラックをもらって、それに僕が歌詞やメロディーをつけていくという形になります。「どんなトラックにするのか」については、はじめにかなり時間をかけてミーティングをするようにしていて、そのなかで「こういうコード進行にしよう」とか「こんなイメージにしよう」と決まったものをここみらいが作ります。

ここみらいトラックとは歌がないインストゥルメンタルのことで、カラオケ音源をイメージしてもらうと分かりやすいかもしれません。まずは1パターン作ってみて、「イメージと違う」と言われたら直してという感じで作業していきます。

こぎみいいそれを聞いて後はインスピレーションでメロディーをつけていくのですが、ここみらいのトラックって結構予想外のものが出来上がってくることが多いんですよ。あえて外してくるっていうよりは発注通りできないみたいで(笑)

ここみらい逆にこぎみが合わせてくれるよね(笑)。

こぎみいいでもそれがここみらいの個性で良いところだなと思っていて、ここみらいの感性に自分の音楽を掛け合わせると、さらに上がるような感じになったりするんです。最初に思っていたのとは違って予想外のものができるから、化学反応的な何かが起きるというか、面白くなるんですよね。

――作曲家さんの1日ってどんな感じなのですか。

こぎみいいお互いすごく近くに住んでいるのですが、僕の自宅にスタジオがあるので、ここみらいが出勤してきます。夜から来てもらって朝まで作業し続けるときもありますし、本当に寝に帰るだけという感じのときも多いので、漫画家のアシスタントさんみたいな生活ですね。

メチャカリのCMで流れる「サイレントマジョリティー」を聞いて号泣

――曲を作るのにはやっぱりかなり時間がかかるんでしょうか。

こぎみいいいや、僕たちはかなり早い方だと思います。最短だと……3分でできた曲がありますね。そのときは本当に時間がなくて、ここみらいに適当なトラックを流してもらってそこに曲を1発でつけて録ってという感じでした。僕たちはコンペに出す仕事が多いのですが、打率が高いのはそういう1発でできた曲ですね。逆に時間がかかったのは、「僕戦(ぼくせん)」かなぁ。

欅坂46「僕たちの戦争」


――欅坂46(FIVE CARDS)の「僕たちの戦争」ですか。あの曲良いですよね……!

こぎみいいすごく気合を入れて作った曲なので良かったです(笑)。「僕戦」はAメロBメロで転調するという変わった構成にしているのですが、そういうギミック的なところで苦労しました。坂道AKBGだとサビで転調する曲はあっても、ABメロで転調する曲って珍しいと思うんですよね。そのあたりはかなり工夫して作っています。

――コンペのお話が出てきたので、気になっていたことを聞いてみたいと思うんですが、坂道AKBGの曲って秋元康さんの作詞がマストですよね。あの詞ってコンペの段階でもうできているものなのですか。

       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2405/29/news029.jpg 彼女が「ほんまやめて」と嘆く“彼氏の撮影”が1231万表示 電車で見ちゃダメな傑作に「歯磨き中に吹いた」「どう撮ったらそうなるの?」
  2. /nl/articles/2405/29/news048.jpg 夜道をさまよう子犬を見た、幼い息子の一言に「ハッとします」「何度見ても涙が…」 天使のような優しさに95万再生の反響
  3. /nl/articles/2405/28/news145.jpg 四肢欠損症のママタレント、第1子出産時に受けた“心ない言葉”明かし悲嘆「心がとても痛みました」「私は甘えたのではない」
  4. /nl/articles/2405/29/news027.jpg 1歳娘、海外赴任帰りのパパを見た瞬間…… 涙なしには見られない“再会”に「かわいすぎる!!」「よかったねえええ」
  5. /nl/articles/2405/29/news031.jpg 【今日の計算】「7−7×7+7」を計算せよ
  6. /nl/articles/2405/29/news014.jpg 土を使わずペットボトルでイチゴを育てたら…… 225日後の夢のような光景に「とんでもなかった!」「アイデアの勝利ですね」
  7. /nl/articles/2405/28/news043.jpg 大雨の中ソロキャンしてたら思わぬ客が…… そばを離れず寄り添う姿に「楽しさ100倍やん笑」「優しいひとには寄ってくる」
  8. /nl/articles/2405/29/news159.jpg 83歳・巨人OB張本勲の“激変”姿に驚きの声 「一気にお爺さんになった」「人間ってこんなに激変するものなのか」
  9. /nl/articles/2405/29/news071.jpg 浅野温子、金髪ボブの“激変”姿が話題 デコルテ露出のタイトなドレス姿に「かっけー」と注目の声も
  10. /nl/articles/2405/29/news015.jpg 子犬のころはタヌキのようだった愛犬、成長すると…… 激変のビフォーアフターに「1匹で3度美味しい」「かわいい事に変わり無い」
先週の総合アクセスTOP10
  1. 「これを見つけたら緊急事態」 農家が恐れる“生えると危険な雑草”の繁殖力に「悪いやつだったんですね」「よく食べてました」
  2. 「虎に翼」、ヒロインの弟役が初登場 演じた人物のギャップに驚き「同一人物なのか?」「朝ドラにも出るの凄いな」
  3. 【今日の計算】「9−9×9+9」を計算せよ
  4. スーパーで買ったレモンの種が1年後…… まさかの結果が635万再生「さっそくやってみます」「すごーい!」「手品みたい」
  5. YUKI、大胆なスリット入った近影に驚きの声 「52歳なの意味わからんな」「ここまで変わらないって本当凄い」
  6. 誰にも懐かないボス犬を、1歳娘が散歩へ連れて行くと…… 従えて歩く驚きの光景に「あの狂犬が…」「凄い…凄すぎる」
  7. 晩酌中、ふと机の下をのぞいたら…… 背筋が凍える光景に反響続々「皆様は覗かないようにしてくださいね」
  8. 小林麻耶&國光吟、600万円超する“新型外国車”購入に「中古で売る時の値段は考えてません」 高額iPadもゲットで生活フルエンジョイ
  9. 真田広之の俳優息子、母・手塚理美と“超大物司会者”に対面 最新ショットに「ご立派な息子さん」「似てる雰囲気」
  10. 「トップバリュを甘く見てた」 ジョブチューンで審査員大絶賛の“マストバイ商品5選”に反響 「買ってみよ」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 庭に植えて大後悔した“悪魔の木”を自称ポンコツ主婦が伐採したら…… 恐怖のラストに「ゾッとした」「驚愕すぎて笑っちゃいましたw」
  2. 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
  3. 生後2カ月の赤ちゃんにママが話しかけると、次の瞬間かわいすぎる反応が! 「天使」「なんか泣けてきた」と癒やされた人続出
  4. 「歩行も困難…言動もままならず」黒沢年雄、妻・街田リーヌの病状明かす 介護施設入所も「急激に壊れていく…」
  5. 車検に出した軽トラの荷台に乗っていた生後3日の子猫、保護して育てた3年後…… 驚きの現在に大反響「天使が女神に」「目眩が」
  6. 「虎に翼」、新キャラの俳優に注目が集まる 「綺麗な人だね」「まさか日本のドラマでお目にかかれるとは!」
  7. 釣りに行こうとしたら、海岸に子猫が打ち上げられていて…… 保護後、予想だにしない展開に「神様降臨」「涙が止まりません」
  8. 身長174センチの女性アイドルに「ここは女性専用車両です!!!」 電車内で突如怒られ「声か、、、」と嘆き 「理不尽すぎる」と反響の声
  9. 築152年の古民家にある、ジャングル化した水路を掃除したら…… 現れた驚きの光景に「腰が抜けました」「ビックリ!」「先代の方々が」
  10. 「葬送のフリーレン」ユーベルのコスプレがまるで実写版 「ジト目が完璧」と27万いいねの好評