スティーブ・ジョブズが築き上げた魔法はいつまで続く?
Apple(アップル)最強のプロダクト、iPhone。ハードウェアもOSも、競合と比べてAppleが素晴らしいものをつくっていることはたしかです。でも、AppleはiPhoneをよりよいものにしようとしているかというと、どうでしょうか。2018年、iPhoneユーザーが妥協しなければならなかったことを振り返ってみます。
数年前から始まった違和感
iPhone 7からヘッドフォンジャックを取り除いたとき、Appleはこのことを大きな決断だったと述べていました。でも、実際のところiPhoneとシームレスに使える唯一のワイヤレスヘッドフォン、AirPodsを普及させるための戦略だったのではないでしょうか。
それから去年は、ホームボタンをなくしてノッチという新たなデザインに切り替えたApple。これによりできるようになったことは大きく分けて2つあります。顔認証でのロック解除と、あの不評なアニ文字です。
価格についても、納得いかないところがあります。10万円以上するiPhone XからバージョンアップしたiPhone XS Maxは、12万円以上します。同じような価格帯で同じサイズ感のGalaxy Note 9もありますが、比べると高解像度、超大容量ストレージ、microSD カードスロットにスタイラスペンつきのGalaxy Note 9のほうが断然お得感があります。
今年、改善された点はあった...?
iPhone XSの写真は、少しばかり良くなりました。でも、 Pixel 3と比べるとまだまだです。Mate 20 Proや LG V40といったフラグシップスマホのカメラほど革新的なわけでもありません。
今年発表されたApple最新のチップ「A12 Bionic」によって、新型iPhonesの動作は速くなりました。でも正直なところ、動作の速度が際立って不満だったという人はどれくらいいたのでしょう。iPhone Xと比べてガラスを割れにくくし、Face IDのロック解除スピードがわずかに向上したこと以外、iPhone XSを買う動機はあったでしょうか。もしXS Maxの「6.5インチの画面が絶対に欲しい」という人がいれば話は別なのかもしれませんが、多くの人にとっては正直どうでも良いところでした。
発表前には、高速充電できるACアダプターもついてくると噂されていました。しかし、実際にはそうしたアップグレードはなく、もし充電スピードを改善したい場合には別途お金を払って、アダプタやケーブルを買う必要があります。また、最新のiPadやMacbookがUSB-C対応に変わるなか、こうしたデバイスにiPhoneを接続するには別途ケーブルが必要になるというのも非効率な話です…。
そして今年は、“廉価版”のiPhone XRも登場しました。業界最先端(Apple自称)のLCDスクリーンという特徴にして、価格設定は84,800円〜と、Galaxy S9より高めになっています。そんなiPhone XRのディスプレイ解像度は1792 x 828で、フルHDにも及びません。また6.1インチ画面でピクセル密度の粗さも指摘されています。
iPhoneが提供するユーザーエクスペリエンス
iPhoneが欲しくても安く済ませたい場合には、古いモデルを選ぶことになります。ただそうなると、新型のモデル以外のユーザーほど十分に配慮してもらえるわけではないので、どこかしら諦めたり妥協したりする必要も出てきます。
iPhoneは、一度覚えれば比較的使いやすいため子どもからお年寄りまで使うことができるスマホなのは事実です。ただ、iOS11に関していえばバグだらけで使いづらく、iが打てなかったりで、iOS12の本来の新機能を見送ってバグ修正にあたる事態。
また、もはやバグという枠を飛び越えてきたのがバッテリー劣化問題でした。これに関しては、どんな意図があったにせよ、やり方もユーザーとのコミュニケーションの取り方も問題ありでした。
でも広い意味で、結局のところそれがAppleなのです。ユーザーが現状抱えている問題に対処するよりも、“大義”を見据えているのかわかりませんが…。
多くのAppleファンが、リリースと同時にXSへの乗り換えを急がなかったのも不思議ではありません。ときに、iPhoneユーザーである意義を改めて考えたくなるときもあります。iOS、iMessages、App Storeを使い続けたくても、iPhone以外のハードウェアを選ぶことができないのが現状です。Androidへの乗り換えが許されない、今日のテック界ではある意味ストックホルム症候群が起きているともいえます。