2015年2月13日公開記事を再編集して再掲しています。

哲学とは実践的なものです。歴史上、世界の偉大な人々が、困難な状況に耐え、乗り越えるためにストア哲学を用いてきました。

ここで、先に言っておきたいことがあります。私(筆者)は哲学者ではありません。ただ、とある2冊の本のおかげで、毎日を少しだけ楽しく過ごせています。

最も困難なチャレンジをするときも、最もストレスフルな決断をするときも、いつもこれらの本が助けてくれました。セネカの『Letters From a Stoic』とマルクス・アウレリウスの『自省録』です。

哲学はただ読むだけではだめです。哲学から利益を得るには、常にそれを念頭に置き、実践しなければなりません。20年近くローマ帝国を統治したマルクス・アウレリウスは、『自省録』の中で次のように書いています。

医者は、メスや医療器具を常に持ち歩いている。緊急時のためだ。哲学を準備しておきなさい。いつでも使えるように。天と地を理解するために。

以下、心配事を忘れ、毎日を少しだけ楽しく意味のあるものにしてくれる、いくつかの教訓を紹介します。

人からどう思われるかより、自分で自分の事をどう思うかを大切に

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社内政治で立ちまわったり、成功した人びとに囲まれていると、人からどう思われているかが気になるもの。人の意見は一時的だということを思い出せば、こうした不安を消すことができます。

もちろん、人からどう思われているかを気にするのは完全に正常なことであり、誰もが同僚に認められたいと思っています。

しかし、四六時中そのことが気になり、落ち着かないようなら、思い出してください。あなたは、ほかの人が思っている以上の存在であることを。

自分の価値は自分で決めるものです。人からどう思われるかよりも、自分で自分の事をどう思うかを大切にしてください。マルクス・アウレリウスは次のように言っています。

私を驚かせてやまない。誰もが他人より自分を愛しているのに、自分の意見より他人の意見を気にするのだ。

この原則を覚えておきましょう。この原則を思い出し、使いこなすほど、自分と他人を比べることもなくなり、自分のゴールと価値観に忠実でいられます。

あなたが物を所有するのだ、物に所有されてはいけない

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財産が喜びと誇りをもたらすとしても、結局、財産はひとつの機能を提供しているに過ぎません。世界一強い馬を所有していれば、名声にはなります。しかし、馬のおかげで仕事が早く片付くこともなければ、車より快適な乗り物でもありません。

セネカ(ストア派の哲学者で皇帝ネロの助言者)は、裕福な人びとのほうが、貧しい人びとよりも生活の心配をしているのに気づきました。明らかに余裕のある暮らしをしているのに、です。セネカは次のように書いています。

私たちは、贅沢の極みの中で、心配を抱えのたうち回っている。鋭い苦悩に突き刺されながら。ああ、これらの人びとにとって、硬い地面がどれほど安らかな眠りをもたらすだろうか!

できるかぎり、自尊心を財産から切り離してください。セネカが以下に書いている通り、これは独り善がりの考えではありません。自分自身と幸福を失わないためのものです。

あなたにどれほど財産があろうと、あなたより多くを持つ者が必ずいるものだ。比べれば、あとこれだけ足りないと思い悩むことになる。

財産が何のためにあるのかを思い出せば(痛みを取り除き、人生に喜びをもたらす)、いま自分が手にしているもので、十分に幸福になれるはずです。

休息が本当の休みにならないこともある

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体は動いていなくても、脳が動き続けていることもあります。そんなときは、本当にリラックスしたり、休息できてはいません。むしろストレスは溜まっていきます。セネカはこのことについても書いています。

体を横たえているからといって、心が平穏であるとは限らない。休息がくつろぎからほど遠いこともある。

身体的に横になっても、精神の疲労やストレスの解消にはならないこともあります。休息とリラクゼーションに耽るかわりに、自分が必要だと思うより休みを少なめにしてください。そのほうがパフォーマンスも向上します。行動すれば心配事も消えるものです。

本当に忙しい人は、思い煩う時間など持っていない。そして、行動しないことによる害悪を、行動が打ち消してくれることほど確かなことはない。

人生の問題から逃避するために忙しく仕事をしろと言っているのではありません。仕事は脳のエネルギーのはけ口になるということです。脳のエネルギーは溜めておくと自ら問題を創りだします。

セネカもこう言っています。

「せわしなく動き回ることを勤勉とは呼ばない。それは、取り憑かれた心の、落ち着きのないエネルギーに過ぎない」

空回りすることと、本当に仕事を成し遂げることは違います。懸命に働くことが良い結果をもたらすのは、優先順位を付ける時間をとり、適切に計画し、適切に準備をしたときだけです。

友人は慎重に選ぶこと、他人を判断するときは時間をかけて

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同僚、仲間、友人、誰であれあなたの周囲にいる人は、必ずあなたに影響を与えます。それが、セネカが自分を向上させてくれる人と付き合えと強く主張する理由です。逆に、あなたが人びとを向上させることもできるはずです。

自分を向上させてくれる人たちと付き合いなさい。そして、向上する余地がある人たちを歓迎しなさい。その過程は相互的なものだ。人は教えることで学ぶのだ。

友人たちがどれほどあなたを向上させてくれるのだとしても、時にはあなたをガッカリさせ、受け入れられないことをするときもあるでしょう。もし、自分が誰かに対して失望しているのに気づいたら、マルクス・アウレリウスの次の言葉を思い出してください。

人びとの悪い行いに出会ったら、振り返り、自分も同じような行いをしたことはなかったかと自問せよ。

友情は一生涯つづくとは限りません。人は常に動いており、それぞれが人生の異なるステージを歩んでいます。付き合うグループが変わることもあります。セネカは、友情がいかに儚いものかを語っています。

友人を最大限に活用するべく全力を尽くしなさい。その機会がいつまであるかは誰にもわからないのだから。

人生における最大の喜びのひとつは、友人たちと体験をシェアすることです。友人を当たり前だと思わないこと。たとえ友人たちが完璧でなくとも(そうあって欲しいと望むことはできますが)、あなた自身も完璧とはほど遠いことを忘れないでください。

ストア哲学は人生という騒々しい旅路に、冷静な分析をもたらしてくれます。また、生涯を通していかに行動すべきかを教えてくれます。どちらの本も、無数の奥深いテーマを探求しており、現代における仕事や財産、休息などにもあてはまる有益な助言に満ちています。こうした不朽の原則は、数千年前と同じくぐらい現代においても通用します。


Photos by Anastasios71, Amovitania, Steve Jurvetson, Gabriel S. Delgado C., Leland Francisco, and Nhan Esteban Khuong.

原文/訳:伊藤貴之)