アップデートきました!
2018年、世間から疑いの眼差しを向けられていたAI。たとえばAmazon(アマゾン)の人材採用向けに開発された機械学習ソフトウェアは、女性差別的な欠陥が見つかり廃止されたり、Microsoft(マイクロソフト)など大手テック企業が顔認証技術の規制を求めたりするなどの動きもありました。
年が明け、こうしたAI分野への疑念を晴らすかのごとくCESで登場したのが、Googleアシスタントの通訳ツールです。これはSF映画などで描かれていたような魔法のツールになり得るのでしょうか?
Google翻訳の「通訳モード」は現在のところ、リアルタイム翻訳で27カ国語に対応。世界には5,970の言語があることを踏まえると、まだまだ世界中どこでも使えるような通訳ツールとまではいきません。ただ、そうしたなかでも重要なのはその精度。ラスベガスのホテルで中国語ー英語で通訳モードを試したユーザーによると完璧とはいえないものの、大体ちゃんと通じるとのこと。
We got to try out Google Assistant's new interpreter mode. I spoke Chinese to a concierge in Las Vegas and he understood me. You can see the mode's not perfect, it still fumbles translations at times, but it works for the most part. https://t.co/hKsyCTaBid
— Shannon Liao (@Shannon_Liao) 2019年1月8日
CESでの取材を担当した米GizmodoのSam Rutherford記者は、中国語で話してみたところ多少訛りがあってもうまく機能したと評価。ベーシックな文章はすべて問題なく通訳できていたとのことです。
ここ数年、自動翻訳ツールが着々と進化を遂げてきていることを踏まえると正直、今回の「通訳モード」にもそこまで驚かされない...と思う方もいるかもしれません。既存のGoogle翻訳も、日本語ー英語ではまだまだ頼りづらいところがありますが、2016年にディープラーニングニューラルネットワークが導入されてから翻訳精度がグンと上がりました。
ただ、徐々に進歩する技術を待つことに疲弊したという意見もあるかもしれません。それもこれも、テック界に留まらず世界中の多くの人々が不自由なく翻訳ツールを使える日を待ち望んでいるからかもしれません。
Google元CEOであるエリック・シュミット氏は2012年の段階で、スタートレックや銀河ヒッチハイク・ガイドで登場した翻訳ツールを引用しながら、「SFの世界が現実になりつつある」と話していました。
こうしたSFの世界に出てくる架空のアイデアが、ときに世界的な大企業のインスピレーションとして影響をもたらすこともあります。NikeやBoeing社など、SFライターに未来のシナリオについて書くよう依頼するケースも出てきました。
概して翻訳ツールは、AIを使ったテクノロジーにしては珍しく「良いもの」とされ、否定的に見る人はそういないように思われます。もちろん、世界中に何百万と通訳者がいるなかで失業する人が出てきたり、クラウド上にユーザーの使用した言語情報を蓄積することへの抵抗が生じたりするなどの懸念も浮かび上がってきます。でも、少なくとも後者に関しては異なる文化間でのコミュニケーションを改良するのに利用されることになっています。
数年前に取材のため中国を訪れていた際、百度(Baidu)の翻訳アプリを使いながら、現地の労働環境についてタクシー運転手と話をしたことがありました。これはテクノロジーによってまさに世界が繋がった場面でした。
Alexaの競合としてGoogleアシスタントを位置づけるなか、Googleは新たな通訳ツールを武器にできるのでしょうか。高度なユーザビリティやフレンドリーなインターフェイスに加え、SFの世界で描かれた夢を実現させるような通訳として、Googleの超スマートAIの今後に注目です。