サイエンス

DNAの二重らせん構造を発見したノーベル賞受賞学者が人種差別発言により地位をはく奪される


DNAの二重らせん構造を発見して1962年にノーベル生理学・医学賞を受賞したジェームズ・ワトソン氏が、「遺伝的に黒人と白人の平均知能指数(IQ)には差がある」という人種差別発言をしたことでコールド・スプリング・ハーバー研究所の名誉称号をはく奪されました。

Lab Severs Ties With James Watson, Citing ‘Unsubstantiated and Reckless’ Remarks - The New York Times
https://www.nytimes.com/2019/01/11/science/watson-dna-genetics.html

James Watson, Co-Discoverer of DNA Structure, Stripped of Honors Over Racist Statements
https://www.livescience.com/64492-james-watson-stripped-of-honors.html

1950年代にDNAの二重らせん構造を発見したジェームズ・ワトソン氏が、2019年1月2日放送されたPBSのドキュメンタリー番組「American Masters:Decoding Watson」の中で行われたインタビューで、「自然淘汰によって進化した遺伝的差異のため黒人と白人の平均IQには差がある」と述べ、この発言が科学的根拠のない人種差別発言であるとして批判を集めています。なお、学術誌のPersonality and Individual Differences上で2016年に公表された(PDF)論文によると、「(人種による)平均IQの差は遺伝学によって説明できる」という考えは間違いであることが示されています。

科学系メディアのLive Scienceによると、ワトソン氏が人種差別的な発言をしたのは今回が初めてではありません。同氏は2007年に「黒人は白人より賢くない」と語っており、それまで25年以上にわたって取締役を務めていたコールド・スプリング・ハーバー研究所での役職をはく奪されていました。

ワトソン氏はのちに2007年の発言について科学的根拠が何もないコメントだったと謝罪しました。しかし、最新のインタビューの中で、ワトソン氏は再び人種差別的なコメントを残しています。これを受けてコールド・スプリング・ハーバー研究所は「ワトソン氏の科学的に根拠のない無謀な個人的意見をはっきりと拒絶します」と、同研究所がワトソン氏とは異なる見解を有していることを明確に示しました。さらに、ワトソン氏の「偏見を正当化するために科学を誤用するような行為」を批判し、コールド・スプリング・ハーバー研究所から与えられていた名誉称号をはく奪すると発表しています。

Statement by Cold Spring Harbor Laboratory addressing remarks by Dr. James D. Watson in “American Masters: Decoding Watson” - Cold Spring Harbor Laboratory


なお、問題となったドキュメンタリー番組「American Masters:Decoding Watson」の予告編ムービーが公開されており、以下からチェックできます。

Decoding Watson Preview | American Masters | PBS - YouTube

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in サイエンス,   動画, Posted by logu_ii

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