システム大手のワークスアプリケーションズ(東京・港)の筆頭株主が経営権を売却する交渉を進めていることが16日、日経ビジネスの取材で明らかになった。働きやすい会社としての評価も高く、若者を中心に就職先として人気を集めてきたが、最近は業績不振に陥っていた。ワークスアプリの株式を6割強保有している投資ファンドが、全株を手放す意向で、売却に向けた入札を実施している。新たなスポンサーの下で経営の立て直しを迫られることになりそうだ。

働きやすい環境を売りにしていた(写真はワークスアプリケーションズ本社が入る都内のビル)  
働きやすい環境を売りにしていた(写真はワークスアプリケーションズ本社が入る都内のビル)  

 ワークスアプリは業務の無駄を省く仕組みづくりに力を入れる企業として知られ、2017年には米調査会社が日本で実施した「働きがいのある会社」で1位に輝いたこともある。ワークスアプリを率いる牧野正幸CEO(最高経営責任者)は文部科学省の中央教育審議会の委員を務めたほか、リクナビの「理想の経営者」で1位に輝いたこともある。

「理想の経営者」と言われたCEOの牧野正幸氏(写真:尾関 裕士)
「理想の経営者」と言われたCEOの牧野正幸氏(写真:尾関 裕士)

 華々しいイメージのある同社だが、業績は振るわなかった。2018年6月期の売上高は452億円と前年より1割減少。加えて年間1000人とも言われた積極的な人材採用で人件費負担も重くなり、最終損益は170億円の赤字(前の期は29億円の最終赤字)と業績は年々悪化している。

 この結果、昨年6月末の利益剰余金のマイナス額は325億円にまで膨らみ、純資産の額は32億円まで減少した。さらに日経ビジネスの取材で明らかになった今期の最終損益の見通しは18億円の赤字。純資産の額は一段と小さくなる見込みで、業績が少しでも下振れすれば債務超過に転落しかねない状況だ。

 そうした状況を見かねてか、ワークスアプリ株の6割超を握る筆頭株主であるACAグループが保有株を売りに出した。ACAは日本とシンガポールに拠点を置く投資ファンド。ワークスアプリはジャスダック市場に上場していたが2011年にMBO(経営陣が参加する買収)で上場を廃止。その後、ACAグループが6割強を持つ筆頭株主になっていた。残りの株式の大半は牧野氏ら取締役が保有している。

 ワークスアプリは17年に再上場を東京証券取引所に申請したものの認められないうちに経営が悪化、現段階で上場計画は先が見通せない状況になっている。ACAなどの投資ファンドは、上場時に保有株を売り出して利益を確保することが多い。今回、ACAが入札による株式売却に踏み切ったのは上場のメドが当面立ちそうにないことの裏返しとみられる。

 ACAやワークスアプリ側は売却先の選定を早ければ2月にも終えたい見通しだが、経営が苦しいワークスアプリに好条件の入札があるかは不透明だ。

 厳しい状況を踏まえ、ワークスアプリは今後3年間で人員を3割減らす方針を固めたもよう。自然減や採用抑制を中心に、18年6月期に7000人程度だった人員を21年6月期には5000人強まで減らす考えとみられる。

関連記事:スクープ解説 ワークスアプリ、開発遅延で顧客とトラブルも

このシリーズの他の記事を読む
まずは会員登録(無料)

登録会員記事(月150本程度)が閲覧できるほか、会員限定の機能・サービスを利用できます。

こちらのページで日経ビジネス電子版の「有料会員」と「登録会員(無料)」の違いも紹介しています。

春割実施中

この記事はシリーズ「TOPIC」に収容されています。フォローすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。