在キューバ米大使館への音響攻撃の件「あれただのコオロギだよ」と研究者が語る

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  • author Tom McKay - Gizmodo US
  • [原文]
  • 岩田リョウコ
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在キューバ米大使館への音響攻撃の件「あれただのコオロギだよ」と研究者が語る
Image: Maurizio De Mattei/Shutterstock

え、テロでも陰謀でもなくて、虫!?

2017年以降キューバ中国のアメリカ大使館職員が「謎の音」のせいで脳損傷を負うという事例が起こっていました。これまで超音波兵器、スパイ装置、マイクロ波放射兵器か、などの陰謀説的な推測がされてきましたが、New York Timesは、2名の科学者がその謎の音のことをただのコオロギの可能性がかなり高いと話していると報じています。ズコーっ!

音響パターン解析

アメリカのカリフォルニア大学バークレー校のAlexander Stubbs氏と、イギリスのリンカン大学のFernando Montealegre-Z氏が、AP通信発表のキューバで録音されたという謎の音の音源を分析したところ、コオロギの一種であるIndies short-tailed cricketの鳴き声と酷似していると結論付けたそうです。

New York Timesでは以下のように書かれています。

Stubbs氏とMontealegre-Z氏が音声ファイルをダウンロードしたところ、一定の音響パターンがあることに気づきました。パルス繰り返し数と強い周波数...これはある特定の虫の鳴き声に似ていると思った2人はフロリダ大学保有の北米に存在する昆虫の鳴き声データベースにアクセス。するとある種の虫の鳴き声がこの謎の音に酷似していることに気づきました。それがIndies short-tailed cricketというコオロギだったのです。

最初は完全一致というわけではなかったそうですが、コオロギの鳴き声の録音を室内で流してみたところ、壁に跳ね返って聞こえてきた音はかなり詳細なニュアンスの部分までマッチしたそう。やっぱりコオロギだったんでしょうか...。

謎は深まるばかり

でもこの種のコオロギはフロリダ、ジャマイカ、グランドキャニオンのみに生息するということ。じゃあ違うのかと思いきや、キューバにもこの種のコオロギの親戚の種が生息するため、もしかするとその親戚コオロギの鳴き声なのではないか、と研究者の2人は考えているようです。

2018年3月に、ジャーナル・オブ・アメリカン・メディカル・アソシエーションからキューバで被害を受けた館員の調査結果が発表されています。そこでは高音と低音の両方の音が報告されており、その音を表現するのに使われた言葉は「ブンブン」、「ギーギー」、「悲鳴のような音」などでした。また「圧がかかったような」や「振動があった」などの感覚刺激も報告されています。そして報告されたそれらの音や感覚刺激の多くはある特定の方向・場所から流れてきたと報告されているのです。体調不良を訴えた館員の中でも何も聞こえなかったという人もいたそうです。

かなり詳細な報告となっていますが、ということは、コオロギの鳴き声説は一体どうなるんでしょうか。Stubbs氏は「私が言えることは、AP通信の音声は確実にコオロギのもので、どの種かが私たちにはわかるということだけです」と話しています。なんだかまた謎が深まっただけ...?

Source: New York Times