ホンダが×で日産接近のGoogle系列自動運転Waymo。伝説の創業メンバーたちは今

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ホンダが×で日産接近のGoogle系列自動運転Waymo。伝説の創業メンバーたちは今
Image: Autoblog

したたかに活動。

Apple自動運転でビリっけつというニュースで思い出しましたけど、トップをひた走るGoogle系列Waymo(ウェイモ)も日産と提携してMaaS開発を目指すというが2月上旬流れましたよね。18日には日産・三菱がGoogleと次世代インフォテインメントシステムで提携するというプレスリリースも流れて、来年から車載とクラウドにAndroidを統合してGoogleのサービスを提供する模様です。

一時提携が噂されたホンダはGMとタッグ

Waymoはちょっと前まではホンダと組むと言われていましたが、あちらは2年前から続けてきた交渉がひとまず暗礁に乗り上げ、ホンダはGM自動運転部門子会社「GMクルーズ」に7億5000万ドル(約829億円) を投じる大型提携を昨年10月に発表しました。GMクルーズは昨年の赤字がちょうど7億2800万ドル(約804億円)なので、それを補填したかたち。さらに向こう12年で20億ドル(約2214億円)の投資をコミットしています。

春にはソフトバンクからもGMクルーズに22億5000万ドル(約2486億円)投じられていますし、この2つの大型投資を取りまとめたダン・アンマンGM社長(GMを経営破綻からターンアラウンドした経営手腕で知られる)が11月にはGMクルーズ新CEOに就任し、「GMが自動運転に本気を出した」とデトロイトでは受け止められています。

Waymoはクライスラーのバンで自動タクシー開始(ただし運転手は常駐)

一方、Waymoは昨年6月、ホンダ以前から提携関係にあったフィアット・クライスラー ・オートモービルズ (FCA)のハイブリッドのミニバン6万2000台を調達し、12月からフェニックスで交通サービスをはじめました。まあ、予定されていた完全自動運転のタクシーではなく、①ドライバー常駐、②地域限定、③招待限定のテスト利用ですが。一定の成果ではあるものの期待外れは否めず、「完全自走車の実用化は出る出ると言われ続けて早〇年」の数字がまた伸びた恰好。

Waymoとホンダが×になった理由

気になるのは、あれだけ「Googleと組んでTeslaに対抗するクルマを作るんだ」と張り切っていたホンダが距離を置いちゃった理由ですが、匿名筋がAutomotive Newsに語ったところでは、Waymo側には自動運転の基幹技術をシェアする気がなくて「Googleはbrain(脳)、ホンダはbrawn(身体)」という棲み分けを望んだんだそうでして、思惑のずれがあったことが原因のようです。また、ホンダがWaymoに約束した電気自動車開発が思うように進まなかったことも、もうひとつの要因。

GMとならFCVやバッテリー開発でホンダも協業の実績がありますし、本年以降に始動するライドシェア用の自動運転車開発にも混ぜてもらえる(ソフトの脳はGMクルーズ側だけど、少なくとも車両デザインに関われる)と昨年10月段階で日刊工業新聞は書いています。

日本自動車メーカーはGM傘下の地図会社Usherを買収、脱Googleマップ依存

13日には、トヨタ・ホンダ・日産・ゼンリンが共同出資する東京のダイナミックマップ基盤が、デトロイトの自動運転用の高精度Map開発会社Usherを推定200億円弱で買収し、Googleマップ依存脱却を目指す方針であることが明らかになりました。このニュースには、なるほどなあ、と。

こないだ「さよならGAFAM」シリーズのGoogle編で、ああ…となったのが、Mapquestで運転するとリアルタイムでデータが集まってこないから渋滞に巻き込まれる、っていうとこです。あれ、怖いですよね。円グラフで紹介したように、ネットの地図はGoogleマップが今ほぼ世界を支配しています。あれを車の世界でもやられて、Googleに全データを回収されて、さらにGoogle系列の車が出ちゃったら既存の自動車メーカーはエンドゲームです。

だってGoogleはライバルの自動運転車が渋滞に巻き込まれるように、やろうと思えば地図を操作できちゃうんだから。もちろんそんなことはやらないだろうけど。怖くて積めない気持ちはなんとなく想像はつきます。もしかしたらWaymoが車両開発をやめてしまったのは、その辺のことがネックなのかもしれませんね。まあ、クライスラーから箱は買ってるけど、自動運転のハードはすべて自社開発なので、事実上の車両開発みたいなものですが。

Waymo伝説の初期メンバーたちは今

実用化が永久に先送りになる中、創業当時の主力メンバーは早々にWaymoを辞めていってしまってます。Googleが頭脳流出を恐れてボーナス払い過ぎたせいでみんなすっかり大金持ちになって独立起業してしまった、というのもありますが。

たとえば、Waymoの顔だったChris Urmson CTOはUber傘下の自動運転トラック会社Ottoを創業しましたし、Waymoでかつてスターと崇められたAnthony Levandowskiも企業秘密ごっそり抱えてUberに転職して両社に訴えられ、AIを神と崇めるAI教団をつくったり、ハンドルノータッチの自動運転で全米横断記録を達成したと動画(下)を発表して Pronto.ai. を創業したり、背信の徒として何やらやってます。

Video: Pronto.ai/Vimeo

Levandowski氏は国防高等研究計画局の自動運転の登竜門「DARPAグランド・チャレンジ」に二輪バイク「ゴーストライダー」で出走した人。スタート地点からすぐのところでヨロけて転んだものの、リスクを承知で二輪に挑戦し、マスコミの取材にも如才なく答える姿で時の人となり、Googleに乞われて入社し、ラリー・ページCEO(当時)から全幅の信頼を得て、自動運転技術開発の極秘プロジェクトを担っていました。

今でこそ「わが社は創業初日から一般道の安全第一で取り組んできた」(トップ写真)とWaymoのJohn Krafcik現CEOは言ってますけど、いろいろ最初は危ない橋も渡っていたようで、10月にピューリッツァー賞受賞ジャーナリストがNew Yorkerに発表した長文記事でLevandowski氏は、「安全第一では何もつくれない。失敗から何も学べない」とキッパリ言っちゃってます。

で、たとえば、Google役員が育休で休んでいる間に、走ってはならないルートで走れるようにソフトをこっそり書き換えて社員が見ている前で大喧嘩となり、だったら書き換えが必要なことを実証してやる!と、怒り狂う役員ともども自走車プリウスでブーッと高速道に行って、たまたま隣りになったカムリに道が譲れないままガードレールに寄り切ってカムリが急ハンドルを切ってくるくるスピン。ぶつかりそうになってやっとハンドルを握り、助手席の役員に脊椎骨折を負わせたりしています。

いろんな逸話を載せて自動運転車も群雄割拠の第2幕ですね。

Sources: New Yorker, Automotive News, 日刊工業新聞