アタマは本人、カラダは他人。東大が開発した「人間Uber」の二人羽織感

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  • author 岡本玄介
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アタマは本人、カラダは他人。東大が開発した「人間Uber」の二人羽織感
Image: VIRAL NIUS

人々は、そこに本人がいると認めるようです。

大変便利なことに、ネット回線を使えば、出社せずとも世界中どこからでも仕事が完結できる時代になっています。世間では「SOHO」とか「テレワーク」とか呼ばれており、今後もますます増えていくことと思われます。

でもそれを成り立たせるのは、ある程度オフィスの人たちと顔見知りになっていて、気兼ねなく意思の疎通ができる状態であることが望ましいですよね。

そこで東京大学大学院情報学環・暦本研究室が、ロボット的なものに代理出社させるのではなく、本物の人間に遠隔操作する側の人間の顔が映し出されるタブレットを装着させた、「人間Uber」ともいえる「カメレオンマスク」を開発しました。これだと中身は別人であるにも関わらず、周囲は当人だと認めてくれる作用があるのだそうです。

Video: rkmtlab/vimeo

これまで代理出社を可能にしていた自律型ロボットは、何だかんだ言って人間の手助けがないと社内で立ち回れないという欠点がありました。ですが中身が人間であれば、問題は一気に解決です。

公式サイトの説明では、ユーザーは、「カメレオンマスク」を被っている分身にジェスチャーなどの指示を出せるので、身体を伴ったコミュニケーションが可能になる、とあります。

viceは「人間Uber」というよりも、実際にはモバイル版FaceTimeに近い、と表現しています。言われてみれば確かに?

なぜか人は信じてくれる

実際に役所に住民票を取りに行ったり、自分のお婆さんでテストしてみた映像があります。

Video: rkmtlab/vimeo

こうした実験により、人々は違和感を抱かず、ちゃんと個人として認めてくれることが判明したのでした。背丈や体格などが別人でも、顔だけで本人なら誤認してしまうのでしょうか? 心理的な作用もまた気になるところです。逆に分身になった側は、他人の顔を借りることでなにを感じるのか? サイトではこう述べています。

このプロジェクトは、人の顔と身体を分離させることによって、人とは何かを 問いかける試みでもあります

深いですね。

システム

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Image: ChameleonMask

分身はタブレットで視界が塞がれていますが、実はハコスコにタブレットを貼り付けています。ハコスコに装着したスマートフォンのカメラを通して遠隔ユーザーに映像フィードを送り、ユーザーからは音声とハンド・ジェスチャーがスマホに届きます。ユーザーは分身以外の人々と会話する外線と、分身と会話する内線があります。分身は外界の様子も見えていますし、その指示通りに動けば任務完了です。

用途はいろいろ

ビジネスで使っても良いですが、分身とセットが一式あれば、アイドルなどがどこにでも出没し、ファンたちと交流することも、またバーチャル・ユーチューバーなど二次元的なキャラクターの顔を表示しつつ、身体が生身の人間になる、なんてことも提案されています。

凄くどうでもイイ話、これ現在放送中の『仮面ライダージオウ』に登場するディケイドアーマーと完全に一致してます。何度見ても「なんじゃこりゃ?」というデザインですが、この研究を鑑みると、敵も味方もディケイドとして認識しているってことなんですね。

Source: vimeo (1, 2) via vice, Rekimoto Lab, ChameleonMask