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ガッツリ冷やしてガッチリ守る、ZOTAC GAMING最強“AMP Extreme”のヒミツ

text by 加藤勝明

最高峰クロックを実現するカードデザイン

 最新のゲームを高フレームレートで遊びたいなら、迷わず最新のGeForce RTX 20シリーズを選ぶべきだ。レイトレーシング(DXR)対応以外にも、CUDAコア自体の大幅な強化やVirtualLink(USB Type-C)出力対応など、数多くの強化や新機能が盛り込まれている。

 その中でもとくにPCゲーマー垂涎の的となっているのが、最上位に君臨する「GeForce RTX 2080 Ti」だ。さまざまなメーカーが技術の粋を集めたカードを出しているが、とくに注目したいのが「ZOTAC GAMING GeForce RTX 2080 Ti AMP Extreme」だ。同社のビデオカードはオーバークロック(OC)の度合いやクーラーの性能別に製品が用意されているが、この“AMP Extreme”を冠する製品は、最高位のグレードにあたる。

ZOTAC GAMING GeForce RTX 2080 Ti AMP Extreme
ZOTAC GAMING GeForce RTX 2080 Ti AMP Extremeのバックパネル部。見慣れたHDMIやDisplay Portに加え、次世代VR規格であるVirtualLinkにも対応したUSB Type-Cを持つのが新しい

 AMP Extremeは、同グレードのGPUのなかでもとくに品質の高いものを搭載し、高レベルのOC設定が施された同社の最上位モデルとなる。一方日本での発売は未定とのことだが、AMP Extremeよりも少しOC設定を控えめにしたAMP Extreme Coreという製品も存在している。


GeForce RTX 2080 Ti AMP Extremeの分解写真

(1) 3基のファンは2系統のコントローラで制御される

(2) 高密度フィンで高い放熱性能を実現するヒートシンク

(3) 強度と冷却性能を補強するダイカストメタルジャケット

(4) メインの基板

(5) カードのゆがみを防ぐL字形のバックプレート


 この高クロック仕様を支えるため、クーラーや電源回路のクオリティは特筆すべきものがある。3スロットを占有する重厚な3連ファン付きクーラーを採用することで強力な冷却性能を確保。カードが巨大化すると自重による変形がリスクになるが、ZOTACはミドルレイヤーの補強用プレートや、変形に強いL字状のバックプレートの採用で、長期使用時の耐久性を確保している。

 さらに16+4フェーズの強力な電源回路とZOTAC独自の専用チップ「POWER BOOST」のセットでOC時の安定性を向上させている。高負荷状態を長時間続けても安心して使えるというわけだ。

高OC設定を前提とした基板設計で、電源回路は16+4フェーズと強力。NVIDIAのOCモデル「Founders Edition」の13フェーズと比較して大幅に強化されている
カードの裏面、GPUの裏側あたりにある「POWERBOOST」チップ。電流の安定やノイズ除去により、OC時の安定性向上に役立っている

 そして最近の流行であるRGB LEDによるイルミネーション機能は、今世代の製品から格段に洗練され、暗いケースの中でひときわ目立つようになった。ファンガードが全体に発光するので、ケース内で直立させて設置しても魅せることができる。ゲーミング性能はもちろんだが、個性を主張するマシンにしたい場合にも、GeForce RTX 2080 Ti AMP Extremeはオススメの1枚だ。

“AMP Extreme”はファン周囲にアドレサブルLED対応のRGB LEDを搭載。色やパターン、発光の動きなど、光の演出をさまざまにカスタマイズできる

 今回は検証機としてGeForce RTX 2080 Ti AMP Extreme Coreを入手したので、そのパフォーマンスを、NVIDIA製OC仕様カード、RTX 2080 Ti Founders Edition(以下FE)と比較してみよう。FEのブーストクロックは1,635MHzなのに対し、GeForce RTX 2080 Ti AMP Extreme Coreは1,755MHzと高く、さらにメモリクロックも200MHz高く設定されている。これが性能面でどの程度の差となって現れるか注目しよう。

 GPUがハイエンド級なので「PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS(以下PUBG)」をはじめ重量級ゲームの最高画質設定でテストを実施。ほとんどのテストにおいてFEより平均2~3fps高い値を示した。最新ゲームのフレームレートを少しでも絞り出したい人向けのカードであると言える。

 そして気になるクーラーの冷却力だが、室温25℃設定の室内において、ゲーム中の温度はFEよりも約7℃低い70℃前後で安定。クロックも1,860MHz前後の高レベルで安定するなど、オリジナルクーラーを搭載したファクトリーOCモデルならではの安心感と安定性を見せ付けた。

3DMarkのテスト結果
RTX 2080 Ti AMP Extreme Coreは、Fire Strike UltraやTime Spy Extremeなどのより負荷の高いテストで伸びやすい傾向
動作音比較
3連ファン搭載の大型クーラーだが、動作音はFEよりも静か
「PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS」(1,920×1,080ドット)
高リフレッシュレートの液晶の性能が活きるパワーを発揮
「PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS」(3,840×2,160ドット)
4Kでも平均60fps以上を叩き出すのは驚き。RTX 2080 Ti AMP Extreme Coreだと、フレームレートがFEよりさらに伸びる
「シャドウ オブ ザ トゥームレイダー」(1,920×1,080ドット)
いずれもフレームレートは非常に高い。レイトレーシング実装が待たれる
「シャドウ オブ ザ トゥームレイダー」(3,840×2,160ドット)
高OCのAMP Extreme Coreは平均60fpsに届く
ゲームプレイ中のGPUクロックの推移
FEよりOC設定の高いAMP Extreme Coreは1,860MHz前後で安定している
ゲームプレイ中のGPU温度の推移
AMP Extreme Coreは、高クロック動作でも冷却性能が高いためFEより約7℃低い

ZOTAC GAMING FIRESTORM実践編 OC SCANNERで簡単OCに挑戦

 最後に、AMP Extremeの大型クーラーの威力を試すべく、GPUのさらなるOCに挑戦してみよう。OC設定をすべて手動で行なうのは、成功の見きわめが難しく、失敗時のリカバリーの手間がかかる。そこで、ZOTACオリジナルの専用ユーティリティ「ZOTAC GAMING FIRESTORM」からワンクリックで実行できる自動OC機能、「OC SCANNER」を使うのが得策だ。

FIRESTORMで[OC SCANNER]ボタンをクリックし、このメッセージで[YES]ボタンを押すと自動OC機能が起動する。テストと診断が自動実行されるので、約10分待つ
しばらく待つと結果が表示される。ここで[APPLY]をクリックすれば、結果がカードに適用される

 この機能は、RTX 20シリーズ限定の自動OC設定機能で、FIRESTORMが自動的にOC限界を探ってくれるというもの。クロックを少し上げ負荷をかけて動作検証、正常ならもう少し上のクロックへ――という一連の操作を自動処理で実行し、作業開始から終了まで10分程度かかる。待ち時間はあるものの、手間がかからず失敗のリスクが非常に低い。

 OC SCANNERでどの程度OCの上積みがあるかには個体差があるが、今回テストした環境では、ブーストクロックは72MHz増しの1,827MHzまでアップ。この値は上位版であるAMP Extremeよりわずかに高い。

OC SCANNER実行前(左)と実行後(右)のGPU-Zの画面。実行後は[GPU CLOCK]-[Boost]の数値が72MHz上昇している

 OC前と後の性能を比べてみると、3DMarkでは目立った変化が見られなかったテストもあったが(ビデオカード以外の性能が作用する項目も多いため)、PUBGでは初期設定時よりもさらに1~3fpsの伸びが見られた。さすがに4Kプレイ時のフレームレート改善にはそもそものパワーがまだ足りないものの、フルHD/WQHD環境でさらに性能を絞り出したいときには有用だ。ただし、GPU温度とファン動作音も若干上がるため、現状十分快適に遊べているなら無理をしない、という選択も考慮したい。

 なお、手動OCやOC SCANNERの利用はいずれも自己責任であり、OC幅の大小やトラブルについてのサポートや保証はないという点を肝に銘じておこう。

3DMarkのテスト結果
負荷の高いテストのほうが伸び率がよい傾向
「PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS」(1,920×1,080ドット)
大きな上積みとはならなかったが、フレームレートの改善は見られた
「PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS」(3,840×2,160ドット)
4Kでも伸びたが、劇的に改善するというほどではない。やはり4Kは強敵だ
GPU温度の推移
OC SCANNERを使った安全なOCでも、GPU温度は1℃上昇。手動調整でこれ以上を目指すなら、エアフローの改善など、追加の対策が必須だろう

【今回の検証環境】

CPU: Intel Core i9-9900K(3.6GHz)
マザーボード: GIGA-BYTE Z390 AORUS MASTER(rev. 1.0)(Intel Z390)
メモリ: G.Skill F4-3200C14D-16GTZR(PC4-25600 DDR4 SDRAM 8GB×2 ※PC4-21300で動作)
システムSSD: Western Digital WD Black NVMe WDS100T2X0C[M.2(PCI Express 3.0 x4)、1TB]
データSSD: Micron Crucial MX300 CT1050MX300SSD4/JP[M.2(Serial ATA 3.0)、1.05TB]
電源: SilverStone Strider Platinum ST85F-PT(850W、80PLUS Platinum)
OS: Windows 10 Pro 64bit版
PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS:マップ“Erangel”におけるリプレイデータを再生し、その際のフレームレートをOCATで測定、シャドウ オブ ザ トゥームレイダー:内蔵ベンチマーク機能を利用して測定、GPUクロックおよびGPU温度の推移:ゲームを15分プレイした際のGPUクロックおよびGPU温度の変化をHWiNFOで記録

[制作協力:ZOTAC]