エンジニアのFooneさんは、102個のツイートから成るスレッド(エッセイ形式にしたものはこちら)で、チャレンジャー号爆発事故やタイタニック号沈没事故の背景にあった、本当の原因を説明しています。そして、あなたが最近、不安に押しつぶされてしまった原因も同じだというのです。

「チャレンジャー号爆発事故は、たった1つのミスや不具合、あるいは偶然のせいで、7人の命が奪われ、20億ドルの宇宙船が失われたのではありません」とFooneさんは書いています。

長い間に、さまざまなミスや不具合、偶然が積み重なって起きたのです。それぞれのリスクは非常に小さいものだったし、たくさんの対策が施されているのだから何とかなると考えられていました。そしてたいていの場合、それは正しかったのです。最後の日を除いては。

その場しのぎが最悪の事態を引き起こす

Fooneさんは、怠慢やミスの数々が、これらの有名な事故につながったことを説明しています。そして、同じように怠慢やミスが積み重なって、安全と思われた道路での恐ろしい事故につながることも伝えています。

共通した要素は、次のようなものです。

1つのシステムがつくられ、特定の環境下でストレステストが行なわれます。それから、恒常的に使われるようになりますが、そのなかで、ほかにも負荷がかかっていくようになります。

負荷は次第に大きくなり、しまいには、最適ではない状況下で、何かが限界に達してしまいます。そして、その場しのぎで対応してきたところや、余裕を持たせた部分がすべて崩壊し、最悪の事態を引き起こすのです。

「逸脱の正常化」が起きる原因

Fooneさんは、これは「逸脱の正常化(Normalization of Deviance)」と呼ばれるものだと語っています(Diane Vaughanさんが、著書『The Challenger Launch Decision』〈邦訳なし〉の中で使った造語です)。

例えば、ある道路が、時速50マイル(約80km)の制限速度に対応するようにつくられているとしましょう。でも、ドライバーは常にそれを上回るスピードを出すでしょうから、エンジニアは、正常な状況下で時速70マイル(約110km)まで安全な道路をつくります。

そうするとドライバーは、時速60マイル(約100km)は問題ないと考えるようになります。それが安全の範囲内だと、みな知っているからです。

すると、何人かの人が、「規定」となった時速60マイルより少しスピードを出しても、安全に違いないと考えます。そして、さらにスピードを出します。そして雨が降り、雨の中でも時速80マイル(約130km)で走る人がいて、事故を起こして死んでしまうのです。

システムを設計する人はみな、絶えず「逸脱の正常化」と戦っています。そして、誤った使い方に対応した設計が増えれば増えるほど、誤った使い方をするユーザーが増えるのです。

状況はエスカレートしていきます。そしてこれは、設計者やエンジニアだけの問題ではなく、私たち全員の問題です。私たちは、「逸脱の正常化」と戦いながら、自分の人生を設計しているのです。

最悪の事態に備える

誰でも経験したことがあるでしょう。

  • 徹夜で頑張りすぎて、テストに失敗する。
  • 週末に時間があると思っていたのに、結局時間がなくて締切に間に合わなくなる。
  • ささいな不満を溜めこみすぎて、パートナーと大げんかになる。

そうです。私たちを取り巻くシステムには、さまざまなストレス要因と破壊点が存在しています。そうしたシステムが修正されるまでは、それ以上ほかのストレス要因を積み上げすぎないようにしなければなりません。

3カ月の赤ん坊の父親である私は、最近このことに気づきました。以前は、洗濯や皿洗い、買い物などが終わっていなくても、ほかのことは十分滞りなく進んでいて、家庭を週末まで問題なく機能させることができました。

でも今は、子育てがこのシステムにもっと多くのストレスを与えているため、食洗機を回したり、洗濯機を回したりすることは不可欠になっています。

寝る時間の前に、洗濯物を全部乾かして、たたまなければなりません。赤ん坊といると、小さな事故の連続ですから、ほかの事故を受け入れる余裕は、以前より少ないのです。

「大惨事」を気遣う共感が必要

個人的に学んだ2つ目の教訓があります(新米の親にとっては、もう1つの大きな教訓でした)。まわりの人もみな、プレッシャーが多く、今にも大惨事が起きそうな中で何とかやっているということです。あなたよりずっと大変なこともあります。だから、彼らに対して寛容になり、共感すべきなのです。

私のことはさておき、「5分だけ時間をください」とか、「2~3ドル貸してもらえないでしょうか」と誰かに頼むことが、あなたが思っているより重い頼みごとでありうるのは、そういうわけなのです。

だから、ほかの人に何かを頼むときは、いつでも、可能性のあるすべての障害や犠牲を考慮し(移動時間や機会費用、臨時コストなど)、あなたがそれを負担すべきです。相手の職場の近くで会う、勘定を払う、遅れても大ごとにならないよう、こっそり締め切りを延ばす、などです。

親しい間柄であれば、互いの「逸脱の正常化」を探し、それを緩和しあうようにしましょう。

相手が抱え込んだ仕事を助けてあげ、用事や約束を交換し、リソースを共有して、ストレスの多いときには助け合うのです。そして、自分に対しても同じように思いやりをもちましょう。

それからもちろん、適応する準備をします。「逸脱の正常化」は、私たち全員が経験するものだからです。私たちに取れる最善策は、逸脱の正常化が大惨事につながる可能性を減らすことなのです。

あわせて読みたい

完璧主義はいいことない。米起業家が語った、失敗の恐怖に慣れる方法

完璧主義はいいことない。米起業家が語った、失敗の恐怖に慣れる方法

生産性を高める秘密兵器「タイムブロッキング」。その仕組みとは?

生産性を高める秘密兵器「タイムブロッキング」。その仕組みとは?


Image: Yagi Studio/Getty Images

Source: Twitter, Thread Reader

Nick Douglas - Lifehacker US[原文