本当に使える折りたたみスマホが登場するのは、まだ数年先の話

  • 12,117

  • author Andrew Liszewski - Gizmodo US
  • [原文]
  • そうこ
  • X
  • Facebook
  • LINE
  • はてな
  • クリップボードにコピー
  • ×
本当に使える折りたたみスマホが登場するのは、まだ数年先の話
Photo: Sam Rutherford/Gizmodo US

まだ、ね。

スクリーンが曲がる折りたたみスマートフォンは、まさにこれからのスマートフォンのあるべき姿。畳めばポケットサイズ、ひらけばタブレットサイズなんて夢の端末、SFドラマにでてきたクールなガジェットそのものです。なので、SamsungがGalaxy Foldを、HuaweiがMate Xを発表したときの会場の歓声は「夢が現実になったぞー!」という興奮の声。

ただ、本当の意味で夢が現実になるのはまだ先の話になると思いますけれど。なぜなら、Galaxy FoldもMate Xなど、先陣を切った折りたたみスマートフォン第1号たちは、非常に脆いデリケートな端末だから。夢が現実になったと言えるほど、曲がるスマートフォンが現実的使用に耐えられるのは、技術がもう少し進む数年先の話なのではないでしょうか。

折り目と傷が付いちゃう…

いま使用しているスマートフォンのガラススクリーンを考えてみてください。タップして、つついて、スワイプして、ときにポケットやカバンの中で鍵やタンブラーとゴツゴツぶつかって、うっかり不注意で何度か落っことしてしまったこともある。それでもサバイブするのがガラススクリーンのスマホ。ただ、ガラスなので曲がりません。そこで、折り曲がるスマートフォン(Galaxy FolやMate X)は、まるで紙のように折りたたみ、開くことができる薄いプラスチックスクリーンを採用しています。

でも曲がる利点を持つプラスチックに、おおっぴらに言いたくない秘密があります。紙やプラスチックという素材は、1度曲げてしまうと分子レベルで元の形に戻るのは不可能ということ。結果、どうしても曲がるスクリーンには折り目ができてしまいます。また、プラスチックはガラスと比べて強度が弱いのも難点。1000円ほどのプラスチック製スクリーン保護シートに傷がついてもなんとも思いませんけれど、2600ドルもするスマートフォンのスクリーン(プラスチック製)に傷がついたら落ち込みますよね?

190307magaruyo01
Photo: Sam Rutherford/Gizmodo US

曲がるガラスを待とう

最先端が好きだ! 誰よりも何よりもはやく最新技術を試したい! という人以外は、正直なところ、第一世代である今回の曲がるスマートフォンは見送った方がいいでしょう。Galaxy FoldやMate Xが先陣を切ってくれるおかげで業界は一層もりあがり、そして数年後には曲がるスマートフォンはもっと品質が向上されるはず。なら数年待ってもいいじゃない?

WiredのBrian Barrett氏は、コーニングゴリラガラスの上級副社長John Bayne氏に、コーニングの曲がるガラスWillow Glassについてインタビューをしています。Willo Glassは非常に柔軟性に優れており、曲がるどころか巻くこともでき、工業&建築業界で非常に重宝されているプロダクトです。が、これをタッチスクリーンのスマートフォンに使うには問題がひとつ…。

生産するのにカリウムなど、ナトリウムを含む素材を使うのです。これがタッチスクリーンを作るトランジスタと相性が悪い…。ただ、すでにコーニングは先行サンプル的に、OEMとして柔軟性の高いゴリラガラス商品も展開していはいますけれど。折りたたみスマートフォンのスクリーンの耐久性が、現在のスマホのスクリーンほどあがるには、まだ数年かかるだろうというのがBayne氏の見解。

190307magaruyo02
Photo: Corning

自己治癒プラスチックやヒーリング・ポリマーも

一方で、柔軟性&耐久性ともに優れたガラススクリーン素材だけが、折りたたみスマートフォンの普及につながるわけではありません。たとえば、2014年、イリノイ大学の研究員が人間の肌のように傷を直すことができるバイオプラスチックのデモを行なっています。プラスチックの表面に傷がつくと、そこに液体が滲み、ジェルを作り3時間ほどで固まるというのがこのバイオプラスチック。柔軟性に優れてはいるものの、傷がつきやすいプラスチックスクリーンですが、自分の傷を自分で直せるのなら問題ないでしょう。

また、2011年にはフランスの科学チームが、寒いところでは強く硬いままですが、温めると柔軟性があがるポリマー素材を開発しています。これなら、傷や凹み修理するには温めるだけなのでお手軽です。

柔軟性あるガラスでも、自己治癒できるプラスティックでも、ポカポカヒーリングのポリマー素材でもいいのです。日常的にビクビクしながら使うのではあれば、それは本当の意味で「使える」とは言い難い。そう考えれば、折りたたみスマートフォンが広く普及し、真に現実のものとなるのはまだ数年先の話になるのでしょう。

Source: Wired, The Verge