FDA「若返りたくても若者の血を求めるのはやめなさい 」

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FDA「若返りたくても若者の血を求めるのはやめなさい 」
Image: Happy cake Happy cafe/Shutterstock.com

ちゃんと調べないとダメ。

若さを保つ方法として、古くは血の伯爵夫人エリザベート・バートリなどが実践していたとされる若者の血を使ったアンチエイジング療法。今の時代、「若者の血しょう(血液に含まれる成分で黄色がかった液体、赤血球や他のたんぱく質を体内に運ぶ)を注入して若返らせる」とうたうクリニックや企業が存在しています。しかし先日、アメリカ食品医薬品局(以下、FDA)はそのような療法は利用すべきでないという警告を出しました。声明文の中で、そのような治療が有効だという確証はない、まして時間を逆戻りさせるなんてとんでもないと述べています。

効果があるかは全くわからない

血しょうを注入する治療の背後にある論理的根拠の全部がバカげているわけではありません。科学者たちは本当に、若くて健康な人の血が年配者の血とは著しく異なる傾向にあると発見しています。若者血液のほうが強靭な免疫システム、高い治癒力、そしてその他の健康の指標を伴い、分子とタンパク質が豊富です。そして、若いマウスの血を注入された年老いたマウスが健康的になったことを科学者らが発見した実験もありました。

現在、若者の血しょうの注入療法を売って急ピッチで儲けようとしている企業が存在します。しかし、FDAが指摘するように何よりも問題なのは、この療法に効果があるのか全く分からないという点です。

FDAのスコット・ゴットリーブ長官はプレスリリースの中で、「簡潔に言えば、若いドナーからの血しょうの治療を療法や改善法として売り込んでいる悪徳な業者によって、患者が食い物にされることを我々は懸念しています」と語っています。「そういった治療法は、このようなクリニックが宣伝しているような利用での臨床的有効性は証明されておらず、害を及ぼす可能性もあります」とのこと。

そもそも一般人が臨床試験に大金を払うことってあるの?

輸血はアンチエイジングの治療法としてだけでなく、アルツハイマー病からパーキンソン病まであらゆる病を食い止める方法として研究されています。しかし、慎重に執り行なわれて真の改善へとつながるかもしれない実験がある一方、早い段階での治療の商業化によって、人々は胡散臭い臨床試験に「登録する」ために数千ドル払うなんてことも…。一般的には効き目があるという証拠を提供するはずの、臨床試験にです。

いとも簡単に関係者全員に偏見を抱かせてしまうので、普通ならば合法的な臨床試験に登録するのにお金を払う必要はありません(たとえば、ある人が長年貯めてきた資金をある治療法につぎ込んだとしたら、それの効果があったと信じる傾向が強いかもしれない)。しかし、さらに心配なのはこういった臨床試験はたいてい、盲検がされてなかったり、きちんと管理されてなかったりする点です。なので、もし注入に効果があったとしても、誰もこういった成果を信頼できる証拠として使えません。

むしろ健康被害を起こす危険性も

それはともかくとして、誰かの血液を自分の血管に打ち込む行為は必ずしも無リスクではありません。ごく稀にですが、感染症を起こす可能性がありますし、提供された血しょうにアレルギー反応を起こすことも。そして一度に大量の血しょうを急激に注入されると、循環系は過負荷を起こす危険性があります。その過負荷によって高血圧、腫れ、さらには増やされた体液により肺への深刻なダメージを負うかもしれません。

FDAは若者の血液注入療法に対して、完全にピリオドを打つわけではありません。ですが、それでもこの実験的な治療法に挑戦する気のある志願者は、その可能性についてちゃんと保証する科学者やクリニックを探すべき。そしてもし治験に登録するなら、FDAからこの治療法を研究する許可と治験審査委員会(以下、IRB)からの承認を得た科学者と団体が運営しているものを選ぶべきです。IRBは、被験者を伴うあらゆる研究を承認する大学や他のグループで構成された独立した倫理委員会のことです。

ゴットリーブ長官は、「一般的に、規制されてない製造条件や、安全性や効果が証明されていないいわゆる"治療"を宣伝することで患者の信頼を裏切り、彼らの健康を危険に晒す企業に対して規制処置と強制処置を取ることを考えています」と述べています。

Source: FDA, Britannica, IFLScience, Science Direct, Statnews, NCBI