日本人は“現金好き”とは言われますが、それでも近頃はカードで買い物をする人は増えてきています。

「カード」といっても種類はいろいろで、クレジットカード、デビットカード、電子マネーなどがあります。

それぞれに特徴があって細かい違いはあるものの、ここでは単に「カード」という場合、それらをまとめて捉えたものと考えいただければと思います。

さて、このカード決済。なぜ増えてきたのでしょうか。主に理由は3つあると思います。

  1. ポイント付与
  2. 便利さ
  3. 現金NG

まずは、ひとつめのポイント付与。

カード決済するたびに、所定のポイントが与えられ、次の買い物時にポイントを利用すれば、簡単に割引を受けられるというもの。

ポイントではなく現金還元といったカードもありますが、いずれにしても、購入した金額に対し、実質的に常に一定の割合で割引を受けられるようなものです。同じ買い物でもこうした“割引”は現金決済では得られません

ポイントは、普通預金金利の1000倍

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クレジットカードによるポイント付与は、現金にはない魅力だ
Image: Rawpixel.com / Shutterstock

カードによって、ポイントの付与率は異なりますが、1%前後が多いでしょうか。

それでも現在の銀行預金金利と比較すれば、はるかに高利率です。

例えば、ポイント付与率を1%としましょう。

現在(2018年3月現在)、大手行の普通預金金利水準は年0.001%。ポイントの方がなんと1000倍です。

単純に100円の利息を得るには、銀行預金では1000万円を預けないといけませんが、ポイントでは1万円の買い物でOKということです。これだけでも十分に“高利率”。

さらに言えば、預金金利は1年かけて利息が得られる利率ですが、ポイントは買い物の都度得られるので、より短期間で付与されます。また、利息には20%、厳密には現在は復興特別所得税がかかり、20.315%課税されます。

こう考えると(仮に買い物から2カ月後にポイントが付与されるとして)、ポイントは実に預金金利の7500倍を超えます。

例えば、1万円の買い物で得られるポイントは、銀行預金に置き換えると、7500万円以上預けて得られる金銭的メリットに相当するというわけです。

2つめの便利さ。レジで財布から現金を出す煩わしさ、かかる時間、おつりの受け取りといった現金での支払いの一連の動きと比較すると、カード決済の方がスムーズに感じられる場面も多いでしょう。

サインレスの決済手段もだいぶ増えました。スイカやパスモは電車に乗る時だけでなく、いろいろな場面での支払いも可能になりました。

以前よりもカードが使える場所が増え、少額決済も可能になったことは、カード利用を後押ししています。

そして3つめの現金NGとは、そもそも現金利用ができないケースです。

例えば、ネットでの買い物。ネットショッピングの場合、代引きなど配達時に現金で支払う方法が選択できる場合もありますが、クレジットカード払いが主流です。

ポイント“呼び水”で無駄なものを買えば本末転倒

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ネットでの買い物には、クレジットカードが欠かせない。
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こうして見てみると、カードはとても便利なもの。

さぁ、どんどん活用しましょう、と言いたいところですが、何にでもメリットとデメリットはあるもの。

今回は「お金使い」の面からデメリットに目を配っておきましょう。

まずポイント付与。なぜ銀行の普通預金よりもはるかにいい利率のポイントがつくのでしょうか。

なぜ売る側はコストをかけて、カードを利用しやすい環境を整えてくれるのでしょうか。

私たちにもっと買い物をしてほしいからです。

当然ポイントが使えるのは、原則として付与した当の店。繰り返し買ってもらうことを期待しています。ポイントはあくまで自分が買い物をした一部が戻ってきているもの。

ポイントを貯めるために、たくさん買い物をしようとしがちですが、これは本末転倒です。

あくまで「自然に貯まる」程度に留めたいところです。またポイントの利用方法ですが、ポイントだからといっていらないモノを買わないようにしましょう。

これでは実質の“割引”になりません。いらないものをおまけでもらった感覚です。ポイントの範囲内で買うにはまだいいのですが、ポイントが“呼び水”となって余計なモノを買ってしまうと、無駄遣いが増えてしまう結果に。

例えば、ポイントが200円分あるからといって、勢いで1000円のモノを買ってしまうと「2割引きで買えたからラッキー」ではなく、「支出が800円増えてしまった」ということ。

もちろん前者であれば、賢いポイント活用です。

キャッシュレスはそもそも無駄遣いを生みやすい

こうした行動を取りやすいのは、行動経済学でいうところの「メンタルアカウンティング(心の会計)」です。

同じ金銭的価値でも、ポイントは“おまけ”というイメージが強いので、自分で働いて得たお金と比べて、散財しやすい。

だからこそ、ポイントは使い途をより意識して利用することが大事です。そこに少額での使いやすさ・便利さが伴えば、さらに消費は進みます。

キャッシュレスでの買い物は「(お金を)使った」意識が薄くなり、そもそも無駄使いが増えやすいものです。

ある時、「カードで支払っていると、どうしても無駄遣いが増えてしまいます。でもポイントがつくからカードで買った方がお得だと思うんです」という相談を受けました。

家計を精査すると、ポイントよりも、無駄と思える買い物の方が金額が大きいことがわかりました。「カードは逃げません。お金使いに自信が持てるようになったら、いつでもカードを再び活用すればいいと思いますよ」

と、この人にはいったんカード利用をやめることをアドバイスしました。どのような支払い方法であっても、その源泉は自分の「お金」です。それ以上には使えません。

現金決済もカード決済も、お金が「形」を変えただけ。

形が変わっても、お金の使い方をしっかり考えていればポイントを無駄に使ったり、余計な出費を防ぐことにつながります。カード決済は、今後もますます広がっていくでしょう。

カードのメリットを十分に生かすためにも、デメリットにも注意して上手にカードと付き合っていただきたいなと思います。

八ツ井慶子:

生活マネー相談室、ファイナンシャルプランナー。どなたでも参加できる「生活マネー塾」を主宰

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BUSINESS INSIDER JAPAN より転載(2018.03.27)