「女は知能が低い」手術見学もできず。医学部学生調査でわかったセクハラ実態

医学部の入試面接で「結婚、出産、育児、介護」について聞かれ、入学後も「女は知能が低い」「女子は外科に興味がないだろ」などと言われ、手術見学の機会を与えられないなど、医学部生の女性差別の実態が明らかになった。

医学部の学生らで組織する「全日本医学生自治会連合」が、医学部のある全国50大学2186人を対象に調査を行い、3月12日記者会見を開いた。中には「解剖実習で嫌がる女子学生の手をつかみ、献体の陰茎を触らせようとした」というような証言もある。

入試差別は「許されない」or「暗黙の了解」

全日本医学生自治会連合

会見した全日本医学生自治会連合のメンバー。左から2番目が山下さくらさん。

撮影:竹下郁子

調査は2018年11月から開始し、2月1日時点のものを中間報告としてまとめた。

アンケートに回答した2186人のうち、男性約6割女性約4割で、約4割が浪人生、約3割が現役生、再受験は約1割だった。

調査は東京医科大学の不正入試問題を受けて、医学部生たちがこの問題についてどのように考えているかを知るために行ったという。

性別や年齢を理由に点数を一律減点していたことについては「大学側が差別を容認しているようなものであり、許されることではない」(男性・2年生)と憤る声がある一方、「差別は暗黙の了解で、あるものとして考えていた」(女性・6年生)「医学部の学生は卒業するまで国から約1億円の投資を受けているに等しい。定年までできるだけ長く勤められる人間を優先して合格させることは致し方ない」(男性・4年生)というあきらめや現状維持を望むような意見も多かったという。

女子には妊娠出産、男子には転勤や介護を聞く傾向

高校生

入試面接の質問はかなりプライベートに踏み込んだ内容だ(写真はイメージです)。

GettyImages/MILATAS

入試の面接で「結婚、出産、育児、家族の介護」などのライフイベントに関わる質問をされた学生は全体の14%だった。

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こうした質問を受けたと回答した人の割合は男女間や現役・浪人・再受験で差はなかったが、自由記述で具体的な質問内容を回答したのは多くが女性だったという。以下が女子学生たちが聞かれた内容だ。

「出産・育児で退職するつもりか?」(女性・2年生)

男性医師は女医と結婚した場合は家庭に入って欲しいが、女医は家事育児に専念したくないのか?」(女性・6年生)

「妊娠をすることはあなたにとってメリットかデメリットか」(女性・2年生)

会見に参加した全日本医学生自治会連合の山下さくらさんによると、女性が妊娠出産について聞かれることが多いのに対し、男性は「転勤する場合は家族も一緒に行きたいか」「親の介護についてどう考えているか」など聞かれた人が多かったという。

繰り返すが、これは大学入試での質問だ。学力よりも将来の労働力を重視する傾向が見てとれる。

実習の機会を剥奪されるケースも

病院

女子学生たちがセクハラを相談できるような窓口が必要だろう(写真はイメージです)。

GettyImages/imaginima

入試を乗り越えても、理不尽は続く。

「入学後に性別や年齢などを理由に嫌な思いをした経験があれば教えてください」という質問には、約200件の回答が寄せられたという。

研修先の医師から、大学の教員から、学生から、女子学生がセクハラを受けている実態が浮かび上がってきた。

「大学の授業で『女は知能が低い、頭が小さいから脳も小さい』と堂々と言われた」(女性・6年生)

「医局説明会で『女医は結婚すれば働かなくていいから楽だよね』と何度も言われた」(女性・6年生)

「男子学生から『先生に媚びれば単位もらえるよ』『顔で入った』と言われる。卑猥なことを言われる、聞かれる。性別でこんなに悔しい思いをしたのは人生で初めてだ」(女性・3年生)

被害は言葉の暴力にとどまらない。「体を触られた」(女性・3年生)ほか、実習の機会を剥奪された女子学生もいた。

『女子は外科に興味がないだろ』と言われ、手術見学の機会を与えられなかった」(女性・5年生)

解剖実習で、嫌がる女子の手を無理やり掴み、ご献体の陰茎を触らせようとした」(女性・3年生)

前出の山下さんによると、こうした差別体験を告白したのは女性が多かったそうだ。

「匿名だから書けたという人が多いと思いますが、中には『アンケートが社会に役立つなら』と、大学名を書いてくれた人もいました。こんなに酷いことが行われているのかと驚くような事例もあり、医学部には差別意識が根強く残っていると感じます」(山下さん)

今回の中間報告については、2月に文部科学省、3月に厚生労働省に内容を報告したという。文科省には面接時の不適切な質問をなくして欲しいと要求したが、反応は薄かったそうだ。

(文・竹下郁子)

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