ビールが好きで、パンも好きな方に朗報です
「パンをつまみに呑むなんてありえない」
「バケットにワインは合うけれど、ビールはNG」と思っていませんか?
イラスト:逸見チエコ
いえいえ、あるんですよ。ビールに合うパンが。
「ビールに合うパン」を作るシェフ。
こちらが世田谷・上用賀にある「パン屋 salut!!(サリュー!!)」の末次佑介(すえつぐ・ゆうすけ)さんです。
下積みはガッツリやりました
──お酒が大好きとの噂ですが、好きなお酒は?
末次:全部好きです(きっぱり)。
──いちばん好きなのは?
末次:選べないんです。ビールもワインも日本酒も焼酎も……どれも大好きなので。
──笑。では、経歴を簡単に教えてください。
末次:もともと農業高校で食について学んでいて、授業でパンを初めて作ったんですが、ドハマりしました(笑)。もう楽しくて。パンのチェーン店のポンパドウルの厨房でパンを作り続けて10年後、単身フランスへ渡り、有名ブーランジェリーのメゾンランドメンヌでパン製造責任者として働きました。
末次:帰国後はチェーンパン店のボヌ―ルに入社、店舗責任者として新規店舗立ち上げに携わりました。ボヌールは責任者が接客からスタッフ育成、そして経営までやるんです。これでグッとキャパが広がりましたね。
──で、その後独立、と。
末次:はい。ノウハウをガッツリ学んでいったら、だんだん自分が好きなパンを作ってお客さんに食べてもらいたくなって。「salut!!」を2014年にオープンしました。日々研究を重ねてレパートリーは今200種類くらいかな。自由にパンを作れる環境になって、大変だけど今は最高に楽しいです。
「お酒と一緒に楽しめるパン」を研究したい
▲店のロゴとイラストは藤枝リュウジさんによるもの
──「salut!!」の人気のパンは?
末次:「乾物カレーパン」は大人から子どもたちまですごく評判で、売り切れるのも早いんですよ。
──乾物って、あの乾物ですか?
末次:そうです、あの「乾物」です。三軒茶屋の昔ながらの乾物屋さんの乾物を取り寄せています。日によって内容は違うんですけど、例えば切り干し大根やひじきを使ったキーマカレーを、クランベリーを混ぜ込んで焼いたバゲットに挟んでいただきます。
▲乾物カレーパン(250円)
──乾物にクランベリーですか? それ、合うんでしょうか……。
末次:これが、すごく合うんですよ! 冷めてもおいしいです。
──作ろうと思ったきっかけは?
末次:“世田谷パン祭り”っていうイベントに、何か出品しない? って誘われて。イベントなんで、やっぱり飲みながら楽しみたいと思ったんですよね。そこで「ビールに合うパン」を開発してやろうと意気込んで。
イラスト:逸見チエコ
──それで意気込んでできたのが「乾物カレーパン」なわけですね。
末次:はい。ビールにぴったりのパンが出来上がりました。イベントで大好評だったので、お店でも出してみたら子どもから大人までリピートして買ってくれる定番商品になりました。それで、さらにお酒と楽しめるパンを作ろうと研究に研究を重ねました。そこで最初に出来たのが、「のり塩バターパン」でした。
絶品! ビールにぴったりすぎるパン
▲のり塩バターパン(320円)
フランスパン生地に、有明産の海苔とバターをたっぷりと練りこんで焼いたパン。底には溶けて焦げたバターが。カリッと香ばしい。
▲さんまのパン(250円)
さんまの缶詰と生姜、山椒をフランスパン生地に練りこんで焼いたハードパン。山椒×パンがこんなに合うとは驚きです。
▲金平チーズ(220円)
やわらかく煮たきんぴらごぼうを、パンで包んでチーズとれんこんスライスをトッピング。ごま油の香りがチーズの風味を引き立てます。
▲春菊とパストラミオリーブ(320円)
フランスパン生地に春菊を練りこみ、パストラミベーコンを包んで焼いたハードパン。香りの強い春菊にパストラミベーコンがベストマッチ。春菊の時期のみ発売の大好評メニュー。
▲パッタイコッペ(310円)
「パンはおいしいお皿です」と末次さん。タイ料理との組み合わせは、ほかにはガパオも評判です。片手でもってシンハービールと一緒に楽しみたいメニュー。
▲豚ひき肉とラー油のデニッシュ(270円)
甘辛豚ひき肉をクロワッサン生地で包み、パン粉をトッピングして焼き上げたパン。ラー油の香りが食欲をそそります。サックサクの食感も楽しんで。
▲旨じゃこキャベツ(230円)
ごぼう、蓮根と一緒に甘辛く煮たじゃことキャベツの組み合わせが合う。
▲野沢菜パン(280円)
フランスパン生地にごま油で炒めた野沢菜を練りこんだパン。「おかずになりそう」とお客さん談。
▲黒オリーブとアンチョビのラスク(400円)
細かく刻んだ黒オリーブとアンチョビ入りラスク。ビネガーでコクを出し、隠し味にお醤油を。お酒もラスクも両方止まらなくなる人続出のメニュー。
末次:一部ですが、こんなかんじです。春菊とかはシーズンがあるし、毎日ぜんぶ作っているわけではないのですが、これらのパンは作ってもすぐに売り切れてしまうことが多いですね。
──全部おいしそうです。日本酒とかにもあいそうですね~。
「お酒に合うパン」を研究し続けていたら……
末次:こんなのも置いてます。
▲海燻(1,130円)
──「海燻(かいくん)」ですか? お洒落な店内に違和感のある瓶が。牡蠣の燻製のオイル漬けなんですね。
末次:岡山から取り寄せてます。お酒に合うし、おいしいんですよー。食べた後のオイルは、サラダにかけてもおいしくいただけます。
──おいしそうです。パンとこれ、買って帰ろうっと。ところで、「salut!!」のFaceBook見てたら、(近くにある)農大の博物館でパンについての講演とかしてるんですね。
末次:そうなんですよ。ご縁があって。
──小学生も先生とお店に来てますよね。
末次:はい。校内でやる街探検の研究発表のネタにしていただいてます。お手紙をもらったり、楽しく交流してますよ。
──もはや地域で大評判のパン屋のお兄さんですね。
末次:ありがたいことです。毎日真剣にお酒に合うおいしいパンを研究しつづけていたら、いつの間にかこんなことになっていました(笑)。「お酒に合うパン」がコンセプトではありますが、子どもたちにウケたのも嬉しいですよね。
──最後に、このパン屋さんはおいしいかもって見抜くコツを教えてください。全国の皆さんに参考にしていただきたいので。
末次:それはですね、自分がそうだからなんですけど、シェフがどれだけ冒険しているかをチェックするといいと思います。意外性のある具材の組み合わせのパンとか、見たことのないパンが並んでいるお店は、シェフがパン作りを楽しんでいる証拠です。僕はパン作りが大好きで楽しくて、(お酒と)食べて喜んでもらうと最高に嬉しい。そんなパン屋はきっとアタリだと思います。
優しい雰囲気の末次さんですが、パンに対する意識の高さと「お酒が大好き」という一本筋の通った男気を感じました。これからもお酒に合うおいしいパンを作り続けてください!
お店情報
パン屋 salut!! (サリュー!! )
住所:東京都世田谷区上用賀4-34-1 馬事公苑前住宅106
電話番号:03-6804-4065
営業時間:8:30~ 19:30
定休日:月曜日(隔週で日曜日は休み)