高音を94%も遮断する新たな音響メタマテリアル。サイレント・ドローンやジェット機の実現に近づく

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  • author Andrew Liszewski - Gizmodo US
  • [原文]
  • 岡本玄介
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高音を94%も遮断する新たな音響メタマテリアル。サイレント・ドローンやジェット機の実現に近づく
Image: Cydney Scott/Boston University

バイクや自動車のマフラーにも使えそうですね。

迷惑な騒音を遮断するもっとも効果的な方法は、単純にを構築することで、それは厚いほど有効です。しかし、安心できる壁の中にいたとしても、カン高いモーター音が騒々しいドローンが空を横切るのはやはりうるさいものです。

そこでボストン大学の研究者らが、空気の動きを妨げることなくドローンの迷惑な騒音を消してくれる、音響メタマテリアル(自然界にはない振る舞いをする人工物質)を開発しました。

この世界は、空気を動かすとノイズが発生するようにできています。なので真空の宇宙空間では音が聞こえません。音が伝わるのは空気が振動するということなので、自分の意志で耳を傾ける会話や音楽は楽しいものですが、家電が発する騒音や上空を飛ぶジェット機、それに年末の道路工事など聞く意志がないのに届く空気の振動は、迷惑だと感じてしまうワケです。

そこで、ボストン大学の研究者Reza GhaffarivardavaghさんとXin Zhangさんによって、本来ならば扇風機やドローンの消音には非常識的であろう、気流を妨げることなく遮音する解決方法が生み出されたのです。

Video: Boston University/YouTube

仕組みと効果は?

彼らはコンピューターによるシミュレーションから開発を始めて、3Dプリンターで騒音が生む空気の流れを妨害せず、振動を音源に向けて反射する素材を印刷しました。音は魔法のように消えることはありませんが、この新しいメタマテリアルを計画的に設置することで、人間の耳から騒音を遠ざけることができるようになったのです。

プロトタイプ1号では、爆音が鳴るスピーカーの前に置いた、塩ビ管を伝う音を抑えようと設計されました。その3D印刷されたパーツは、ユニークで立体的な螺旋に囲まれた、プラスチックのドーナツのような形状で、それは音漏れを防ぎ、空気が中央の穴を通過できるものでした。その結果、スピーカーが発する高音のトーンによって生じるノイズが94%減少。人の耳には気付かれない程度の音量にまで下がったのでした。

多角形でもイケちゃう

試作品の実験結果で、機能が確かなものとなったこの螺旋ドーナツ。チームが完成形に向けて精錬させればさせるほど、その遮音能力は確実に向上していくことでしょう。

面白いことに、材料は必ずしも試作品と同じ円形に成形される必要はないのだそうです。もちろん円形なら羽が高速回転するPCの冷却ファンや、無人機の小さなプロペラの高音を消すのに有効ですが…このメタマテリアルは、立方体六角形といった形状でも同様に機能するのです。なので応用すれば、大きな遮音壁だって簡単に組み立てることができちゃうのです。

そのたの利用方法

MRI装置の振動は大きな雑音を発生させるため、患者が撮像されている間、それも時として1時間を以上もガマンを強いられることで知られています。

ですがソフトウェア・シミュレーションと3D印刷がもたらす柔軟性のおかげで、この音響メタマテリアルは、MRIの磁気コイルと患者の間に収まるようにカスタム設計することができ、あたかも静かな泡で包んだように負担を大幅に軽減することも可能になります。

低音に対しては効き目がないのかもしれませんが、もしこれを耳栓に応用してくれたら、毎朝目覚まし時計に起こされずに済むかもしれませんね。

Source: YouTube via Boston University via New Atlas