今回Vol.9にまできた『幸福論』ですが、いよいよ最終回。「豊富な選択肢が、人を不幸にする」という前回に続き、ラストは「感情」がテーマです。

まずは、有名な小話を紹介します。

メキシコ人の漁師とアメリカ人のビジネスマン』の話です。内容をみていきましょう。

「幸せ」を考える上で最高の題材を見てみよう

僕らの時代の幸福論9
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メキシコの海岸沿いの小さな村を、アメリカ人のビジネスマンが休暇中に訪れました。波止場に停めてある漁師の小さな船をのぞくと、大きなマグロが数匹獲れています。

アメリカ人:それだけ釣るのにどれくらいかかったのですか?

漁師:そうやなー。2、3時間ってとこやな。

アメリカ人:なぜもっと長く海にいて、もっと魚を獲らないのですか

漁師:家族が必要としてる分は十分にあるからな。

アメリカ人:じゃあ、漁の時間以外は何をしているのですか?

漁師:遅くまで寝て、子供らと遊んで、野球中継でも見て、嫁さんと昼寝。夕方なったら散歩して仲間のとこ行って、ギター弾いて何曲か歌って、みたいな感じやな。

アメリカ人:よく聞いてください。私はハーバードでMBA(経営学修士)を取得しています。もっと儲かるアドバイスをしてあげましょう。

まずは、毎日7〜8時間、漁に出るべきです。そして、余った魚を売り、大きな船を買います。さらに多くの魚を獲って売って、漁船を増やしていきます。

また、仲介業者をはさまず、直接、加工業者に魚を出荷しましょう。自分の加工工場をつくるのもいいでしょう。製品加工流通をすべて自分でコントロールするのです。

そうしたら、この小さな村を離れてメキシコ・シティに移る、もしくはロサンゼルスやニューヨークでもいいです。そこで事業をどんどん拡大していくのです。

漁師:それって、どれくらいの期間がかかるん?

アメリカ人:おそらく15〜20年ほど。

漁師:その後はどうなるん?

アメリカ人:ここからが最高ですよ。株式公開して、自社株を売り出し、ミリオネアになるのです!

漁師:ミリオネア? それでどうするん?

アメリカ人:そうしたら、幸せに早期リタイアできますよ。海岸沿いの漁村なんかに引っ越して、遅くまで寝て、孫たちと一緒に遊んで、野球中継でも見て、奥さんと昼寝でもしましょう。

夕方になったら、散歩でもして仲間のところに行き、ギターを弾いて歌って過ごす。最高じゃないですか?

究極の選択なら、どっちを選ぶ? その理由は

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小話の内容は以上です。

漁師の「それいまやっとるし!」というツッコミが聞こえてきますね(笑)。

この小話に関しては、多種多様な意見があります。

たとえば、

  • 漁師は「お金」という手段を使わずに幸せを得ている
  • 漁師はリスクマネジメントができていない。魚が取れなくなったときや、家族が病気になったときに困るはず
  • アメリカ人はやりたいことをやるステージにたどり着くのに、膨大な時間を浪費している
  • アメリカ人は納税額が多く、社会貢献度が高い
  • お金持ちになったとしても、結局質素なライフスタイルを望む
  • アメリカ人は選択肢が豊富だが、漁師は少ないし、そもそもどんな選択肢があるかも知らない
  • みんな違ってみんないい

もちろん、漁師とアメリカ人、どちらかの人生が正しいという、正解はありません

ただ、「究極の選択」としてどっちかを選ばなければならないとすれば、あなたはどっちの人生を歩みたいですか? そして、その選択の理由は何ですか?

人間の感情は27種類。どれを感じていたい?

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私ならどっちを選ぶか。

それを答える前に、アンソニー・ロビンズ氏(世界一のコーチともいわれる)の言葉を紹介しておきたいです。

人生の質は日常感じている感情の質

大金持ちだったとしても、日々、怒っていれば、それは「怒りの人生」。

自由な時間を大量にもっていたとしても、日々、暇だと感じていれば、それは「退屈な人生」。

お金も時間もなかったとしても、日々刺激を感じていれば、それは「エキサイティングな人生」。

人生の質は、「日々、どんな感情で過ごしているか」にかかっています。

では、私たちはどんな感情で過ごしたいのか

カリフォルニア大学の研究チームによると、人間の感情は以下の27種類があるそうです。

称賛(admiration)、憧れ(adoration)、美の鑑賞(aesthetic appreciation)、娯楽的なおもしろさ(amusement)、怒り(anger)、不安(anxiety)、畏敬(awe)、気まずさ(awkwardness)、退屈(boredom)、落ち着き(calmness)、混乱(confusion)、切望(craving)、嫌悪(disgust)、苦悩(pain)、歓待(entertainment)、ワクワク(excitement)、恐れ(fear)、恐怖(horror)、関心(interest)、喜び(joy)、郷愁(nostalgia)、安心(relief)、恋愛(romance)、悲しさ(sadness)、満足(satisfaction)、性的欲求(sexual desire)、驚き(surprise)

この27種類のうち、どの感情を感じていたいのか

私の場合、「満足」が50%、「ワクワク」が30%、「その他」が20%、の割合が理想です。

「満足」という感情をベースとして、「ワクワク」感情で人生をカラフルに彩る。「その他(25種類)」の感情は人生に深みとアクセントをもたらしてくれる。

Vol.6で書いたように、幸せのキーワードは「感謝」と「変化」です。この2つがうまく機能すれば、継続的に幸せでいることができます。

上記の27種類の感情の中で、「感謝」にいちばん近いのは「満足」であり、「変化」にいちばん近いのは「ワクワク」ではないでしょうか。

そもそも、「幸福」を辞書でひくと「満ち足りていること(=満足)」と書かれています。「満足」という感情をベース感情の構成を考えるのは、「幸せな人生」を送るための王道なのでしょう。

希望の感情を得られるのはどちらの人生か

話を戻します。私なら、「漁師」か「アメリカ人」、どっちの人生を選ぶか。

私自身が理想とする感情構成は、「満足50%」「ワクワク30%」「その他20%」です。私にとって、どっちの人生がその構成をつくりやすいのか

Vol.1で書いたように、「当たり前当たり前としてとらえないだけで、「満足」という感情は、いつでも、どこでも大量生産できます。だから、「満足50%」を達成するのは簡単です。

一方、「ワクワク30%」「その他20%」を作り出すのは、「変化」に富んでいるアメリカ人の人生のほうが達成しやすそうです。

したがって、究極の選択としてどっちかの人生を選ぶなら、私はアメリカ人の人生を選ぶと思います。

幸せは保証されているから、冒険しよう

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「幸せ」は貯金できません。でも、すぐにつくり出すことができます。

幸せはつくれる

その保証があると知っていれば、ワクワクを求めていつでも冒険に向かえるのではないでしょうか。

私は、フィジーと日本の二拠点で生活(デュアル・ライフ)をしています。

南国の楽園であるフィジーをベースに「満足」「感謝」を感じつつ(日常)、たまに日本に戻り、「ワクワク」する刺激的な経験非日常)をブレンドしています。

さて、最後の質問です。

人生の質は、日常感じている感情の質

あなたはどんな感情で日々、過ごしたいですか?

そのためには何をすればいいですか?

これを最後の質問として、南の島からの「幸福論」を締めくくりたいと思います。

全9回にわたり、お付き合いして頂き本当に感謝です。ありがとうございました!

『幸福論』過去記事

永崎 裕麻(ながさき・ゆうま)Facebook

fiji_happiness 11.jpg 「旅・教育・自由・幸せ」を人生のキーワードとして生きる旅幸家。 2年2カ月間の世界一周後、世界幸福度ランキング1位(2016/2017)のフィジー共和国へ2007年から移住し、現在12年目。在フィジー語学学校COLORS(カラーズ)校長。100カ国を旅した経験を活かし、内閣府国際交流事業「世界青年の船」「東南アジア青年の船」に日本ナショナル・リーダーや教育ファシリテーターとして参画したり、某企業のCHO(Chief Happiness Officer/最高幸福責任者)を務めたり、アフリカやフィジーで教育事業をしたりと、多拠点生活をエンジョイ中。 大阪府生まれ。神戸大学経営学部卒業。二児の父。著書に「世界でいちばん幸せな国フィジーの世界でいちばん非常識な幸福論」(いろは出版)。

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Source: TABI LABO