世界中の天文学者たちが小惑星の地球衝突に備えだす

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  • author Ryan F. Mandelbaum - Gizmodo US
  • [原文]
  • 岡本玄介
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世界中の天文学者たちが小惑星の地球衝突に備えだす
Image: NASA/Don Davis

リアル『アルマゲドン』対策を講じます。

2017年10月12日、大きさ20mの小惑星が地球からわずか5万kmを通り過ぎました。そこで何週間もかけ、世界中の研究所からの何十もの天文学者を動員して、もしそれら小惑星が衝突したらどんな衝撃になるのか、それに備えたあらゆる計算を始めたのだそうです。

ちょうど良い機会だったので

この小惑星は2012年に発見されたものですが、天文学者たちはそれが実際には地球にとって脅威ではないことを知っていました。

しかし彼らは、世界中の観測をすばやく調整する天文学者の能力をテストするため、この隕石通過を重要な演習として利用しました。今の私たちは、地球に落ちる隕石の衝撃や、突然の小惑星の脅威には備えられていないという認識があるおかげで、科学者や国会議員らは地球に近い物体の脅威に対する懸念をますます強めることとなったのです。

発案者の思惑

このテストを考案したのは、アリゾナ大学にある月面惑星研究所のヴィシュヌ・レディー准教授。彼は米Gizmodoにこう語ってくれました。

国防総省では、いわゆる「戦争ゲーム」を行っています。だったら私たちもマネして、全システムをテストしてみては? と考えたのです

その隕石とは

ハワイに置かれた観測装置「パンスターズ」は、天空で動く物体を自動的に捕捉します。これが2012年10月4日に、「2012 TC4」と名付けられた小惑星を地球の半径の15倍の距離で発見しました。それは地球の重力によって軌道が変わり、2017年には地球の半径2個分の位置と、45個分の位置のどこかで通過する可能性がありました。

ですがモデリングによるデモンストレーションでは、地球に衝突しないことが判明。直径20mより小さい隕石は、地球にとって脅威になりませんでした。(ちなみに2013年にロシアの都市チェリャビンスク上空に火の玉を引き起こした隕石より小さいものでした)。とはいえまだ、近くを飛ぶ小惑星はレディー准教授がいう「戦争ゲーム」に成り得ることができ、天文学者たちが地球にぶつかるかもしれない、と仮定できるほどの天体だったのです。

シミュレーションについて

最初のステップは、最初の発見のあと、小惑星が地球に影響を与えるかどうかを科学者たちが知らなかった、と仮定することでした。そこで彼らは2017年の夏、チリにある「超大型望遠鏡VLT」で検索し「2012 TC4」を再び発見。これは最も暗く光る、地球近傍天体だったのです。

それから2017年9月25日、「パンスターズ」は2012年に見つからなかったという仮定の小惑星を、自動的に検出しました。これが皆にとって初めて小惑星を見たときで、ここからシミュレーションが始まり、そのごの追跡観測により、天文学者はその回転周期、最大サイズ、そしてそれがどのクラスの小惑星に属しているかを決定することができました。

もし小惑星が本当の脅威であったならば、これらの情報は研究者が地球のどこに衝突するのか、そしてどれほどの損害を引き起こすかをモデル化したでしょう。彼らはまた、小惑星のサイズと組成に基づいて、継続的に更新されるリスク評価を行いました。

自然災害に邪魔された

月面惑星研究所にて博士課程の研究者であるアレソンドラ“ソンディー”スプリングマン女史が、米Gizmodoにこう語ってくれました。

明確な成功はありましたが、いくつかの点で驚くほどの失敗もありました

彼女はふたつの問題があったと言います。ハワイのマウナ・ケア山にあるNASA赤外線望遠鏡施設(NASA IRTF)では、落ちてきた木が山全体を停電にさせたので観測が止まり、ハリケーン・マリアからのダメージが、プエルトリコのアレシボ天文台による観測を妨げてしまったのです。ですがバックアップ・サイトで、代わりに小惑星を監視することができました。

これらの演習は重要です。2005年に行われた議会では、NASAが140mを超える地球近くの天体の90%を追跡することを試みるべきであると命じました。そのサイズが地球に落ちると、国単位または全世界にとって破滅をもたらしてしまうのです。ですがQuartzによると、NASAはまだその1/3の数しか見つけられていないのだそうです。独立系の分析デモでは、いくつかの小惑星の検知はシステム上のエラーに苦しんでいるのだそうな。


国家科学技術会議の報告によると、アメリカは確かにこの種の衝撃に対応する準備ができていません。ですが科学者たちは、とにかくテストを続けるでしょう。

その間、中国がスペース・デブリ除去「レーザー」を完成させているかもしれませんし、ロシアは宇宙ゴミを破壊する「巨大レーザー砲」デス・スター並の威力に改造するかもしれません。またはロケットにブルース・ウィリスを乗せて飛ばせば人類は救われるかもしれません。果たして隕石による人類滅亡は、起こるのでしょうか? それまでエアロスミスの、あの曲を聞きながら待つとしましょう。

Source: Icarus, Quartz