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就職活動の若者、なぜ出て行くの? 地場と大都市 格差に衝撃

 人口流出が止まらない。昨年の長崎県の転出超過数は6311人で47都道府県でワースト6位(総務省人口移動報告)。長崎市は全国の市町村で最多の2376人となり、県都が人をつなぎとめる「ダム機能」を果たせていない。転出の中心は若年層で、15~24歳が約3割を占める。就職活動真っただ中の学生に県外に出る理由を聞いてみると、多くが「働きたい企業がない」。どう受け止めればいいのだろう。

 来春卒業の大学生の採用に向けた会社説明会が今月解禁され、佐世保市の体育館には8日、県内に事業所を置く約60社がブースを並べた。県や長崎労働局が参加企業を地元に特化して開催。ただ、3時間半で訪れた学生は約90人。手持ちぶさたの企業担当者の姿も目立った。

 「将来を考えると、長崎の企業は選べない」。県立大3年の男性(21)はこう話した。長崎市出身。地元に愛着もある。できれば残りたい、との思いから足を運んだ。だが、給与や福利厚生など、大都市圏との“格差”を思い知ったという。「今後は福岡、東京を中心に挑戦する」

 全国的な人手不足による「売り手市場」もあって、県内企業にとっては厳しい現実が垣間見えた。県の担当者は「参加者が約80人だった昨年並みに足を運んでもらえたのでまずまず」と言葉を振り絞った。

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 県内企業の多くは中小企業で、採用の現場からは悲痛な声が聞こえてきた。

 県南のある建材販売会社は昨年、内定を出した大学生5人のうち4人から入社を辞退された。理由は全員が「福岡での就職が決まったから」。学生を逃がさないために、内定後も繰り返し接触を重ねていた担当者は「会社の魅力は伝わっていると思っていたが…」と苦しい胸の内を明かした。

 福祉系の職場の担当者は「年々、就職希望者が減り、応募順に内定を出している。選別していたら人手を確保できない」。数年ぶりに新卒者を募集して事業拡大を目指した通信設備施工会社は、学生の応募が数人にとどまり、「選別される側」の厳しさを思い知ったという。

 県によると、2017年度の大学新卒者の県内就職率は42・7%。ここ5年は40%台前半が続いている。中村法道知事が「まち・ひと・しごと創生総合戦略」で掲げる19年度の目標の55%は遠い。

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 若者が定住し、子どもを産み育て、消費も潤う-。行政側はこんな好循環を期待し、さまざなま施策に取り組んではいる。

 県は18年4月に「若者定着課」を新設。大規模な説明会と並行し、少人数で学生と採用担当者が語る交流会なども開いている。「魅力ある職場」を増やそうと、各種の優遇策を用意し、業種や雇用形態は多様ながら本年度は過去最高の13社の誘致を実現している。

 長崎市も、地元企業を紹介する雑誌の創刊や保護者向け就職セミナーなど新たな試みを打ち出した。ただ、市役所内からは「何をすれば若者が残ってくれるのか…。それが分かれば、すぐに実行するのだが」との声も漏れてきた。

 処方箋をどう描いたらいいのか。長崎大経済学部の山口純哉准教授(地域経済学)は「年収200万円の雇用を千人より、400万円の雇用を100人生み出せるような戦略が必要だ」という。若い世代が働きやすく、住みたくなる長崎。官も民も、知恵を絞るしかない。

=2019/03/16付 西日本新聞朝刊=

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