きょうご紹介したいのは、『四畳半経済のススメ 〜コンパクトな家計を実現する87のコツ〜』(橋浦多美著、ゴマブックス)。

著者は、家計のやりくりをテーマとしてラジオ出演やコラム執筆などを行っているというフリーアナウンサー、ファイナンシャルプランナーです。

そのような立場から本書で強調しているのは、家計をコンパクトにすることの重要性。それこそが、自分を苦しめないいちばん簡単で確実な方法だというのです。

お金の悩みは尽きないものであるからこそ、いつ、どんな事態が起こっても“ブレない家計方針”を立て、それを継続していくことが大切だという考え方。

すなわち、それこそがタイトルにもなっている「四畳半経済」の意味するところなのです。だとすれば、基本的な考え方を知っておきたいところ。

そこで第1章「四畳半経済 7つの心得」に注目してみることにしましょう。

1. 「四畳半」の意味を知る

ライフスタイルの変化に伴って、「四畳半」の部屋を見かける機会も少なくなりました。

かつてはお金のない若者が住む部屋の代名詞のように使われてもいましたが、そもそも千利休が京都・大徳寺の門前に建てた茶室「不審庵」に用いられたことでも知られ、利休は他にもいくつか四畳半の茶室を持っていたのだそうです。

利休が茶室として四畳半を好んでいた理由は、適度な距離感を保てるから

亭主と距離があると大きな声を出さねばならず、かといって二畳や三畳では近すぎるというわけです。

なお利休の茶の湯は、無駄なものを一切省き、道具は高価なものを使わなかったのだとか。

その利休の「四畳半」のこだわりに習えば、「適度な家計の広げかた」「無駄なものは持たずに質素にこだわる」ということがいえるでしょう。

利休の場合は、それが後々「茶の文化」として継承されることになりますが、私たちの財産も一代ではなく、できれば次の世代(子)、またその次の世代(孫)へとつないでいきたいもの。

それを実現するためには、コンパクトであり、かつ、きちんとした家計が実践できていることが重要になります。(16~17ページより)

インターネットの普及が生活の利便性を高めてくれたことは事実ですが、その反面、「ネットショッピングでつい余計なものを買ってしまった」というような機会も増えたのではないでしょうか?

そう考えると、「便利」と「不便」は背中合わせだと考えることはできます。

そこで大切なのは、「便利」「不便」のバランスをコントロールしつつ、家計を上手にやりくりしていくこと。そのために必要な考え方が、「四畳半経済」だということです。(15ページより)

2. 時代に流されない

かつて景気がよかった時代には、日本の総人口約1億人が自分を中流階級だと自覚する「一億総中流社会」の意識が浸透していました。ところが不況に陥ったとたん、状況は激変。

お金に関して「自己責任」「格差」などといような言葉を見かける機会が増え、「自分のお金は自分で管理しなければいけない。なぜなら国は責任を取れないから」といわんばかりの、そっけないそぶりを社会が見せるようになったわけです。

そしてこれからの時代は、「自分のお金は自分で管理する」というカラーがますます強くなっていくだろうと著者は予測しています。

それは、たとえ経済状況がよくなっていったとしても、バブルがやってきたとしても変わらないだろうとも。

だからこそ個人個人が、時代に流されることのない、ブレない意識をもつことが重要だというのです。(18ページより)

3. 必要なモノかどうかを熟考する

四畳半の部屋がよく使われていた高度経済成長期は、いまほどモノが充実しておらず、現在のように簡単に手に入ることもありませんでした。

そのため、必要なモノをできるだけ長く使おうという意識が強かったわけです。

一方、ここ10年間には「断捨離」という言葉が流行し、「なにを捨てるか」「どうやって捨てるか」について悩む機会が増えてきました。

いらないものは捨てればいい」「捨てることは美徳」という考え方が、急速に広まっていったということ。

しかしそれは、「捨てるモノを無駄に買っていた」ということにほかならないはず。捨てているぶんだけ、無駄遣いをしているということです。

しかも現実問題として、捨てるために費用が発生することもあるでしょう。そう考えると、とても無駄が多いことがわかります。

イギリス人は買い物をする時、ものすごく吟味してから「買う」という行為に至ります。本当に買っていいのだろうか、どの位の期間使えるのだろうか、壊れた時には直せるのだろうか…。

そんなふうに思って慎重に買い物ができれば、もう少しゴミも減らせますし、環境にもいいですよね。(22ページより)

「モノ」に対する価値が昔よりも低くなっている時代だからこそ、「モノ」のありかたについて考えなおそうと著者は提案しています。

「それは本当に必要なものなのか」と、買う前に立ち止まって熟考することが、シンプルな暮らし、そして節約にもつながるということです。(20ページより)

4. エコノミー&エコロジーを考える

環境」と「経済」は、切っても切れない密接な関係にあるものです。

たとえばスーパーで買い物をする際にエコバッグを持参すると、お会計から何年か引いてくれるお店が増えました。

いうまでもなくこれは、できるだけレジ袋の消費を減らし、資源の無駄遣いをなくそうという動きのなかから生まれたもの。

同じことは気象についてもいえます。

近年は異常気象が引き起こす暑さのため、冷房の使用量も増え、それがさらに地球温暖化を加速させてしまうという悪循環につながっているわけです。

しかし、たとえば冷房をエコの設定温度にすれば、電気代が節約できます

じつは、環境のエコと経済のエコは「無駄使いをしないとヘルシーになれる」という共通点があります。環境のために、光熱費を節約すれば、電気代やガス代の節約になります。

また、買い過ぎなければ、食品のロスも防げますし、環境にも家計にもよくなります。

ほかにも、着なくなった洋服はリサイクルに出したり、恵まれない国の人たちに寄付したりすれば、お互いWIN-WINの関係でいられます。(24ページより)

つまり環境を変えることでモノやお金の無駄が減り、それがシンプルな暮らしと倹約につながるということです。(23ページより)

5. 暮らしの優先順位を決める

「四畳半経済」を実現するにあたっては、「暮らしのなかでなにを大切にし、なにを省くことができるのか」の優先順位を考えることも大切なポイント。

普段の家計において、なにを大切にしたいのかについて考えるべきだということです。

たとえば「家族の時間」「手づくりにこだわる」「食費の節約」など、自分の家計においてはどういう暮らしが理想なのかを考え、優先順位をつけて考えなおしてみてはいかがでしょうか。

その結果、「いろいろなものを保持していたけれど、実はそこまで重要ではなかった」というものに気づくことができるかもしれないから。

いってみれば優先順位を決めることが、シンプルな暮らしと無理のない家計を実現するひとつの手段だということです。(25ページより)

6. 「ま、いっか」の“適当さ”を身につける

ひとつのことを続けていくのは、決して容易ではありません。時間をかけても成果が出ない場合には、途中で投げ出したくなったりもします。

しかも、それを無理して続けようとするとストレスがたまり、心身の健康にまで影響をおよぼすことすらあります。

そのため、成し遂げたいことがある場合には、「ストレスを溜めない方法」を模索し、選択することが重要です。

常に完璧を目指すのではなく、心に余裕をもち、「ま、いっか」という気持ちで適当に臨む。

私の経験上、また周りの人たちを見ても、適当でも長く続けていけば意外と効果が出ることが多いのです。

ここでいう「適当」とは、「いい加減にやる」「雑にやる」ということではなく、肩の力を抜いて「ほどよくやる」ということです。(27ページより)

それは「家計」も同じで、無理が生じたとたんにやる気を失ったり、面倒くさくなったりするもの。

そこで、まずは「目標はできるだけゆるく立てる」「無理をしない」を意識してみるといいそうです。(26ページより)

7. 健康な心身を手に入れる

健康に問題が出てくると、人生の楽しみが減るだけでなく、医療費もかかってくることになります。

現時点(2019年1月)において日本の医療制度は手厚く、「高額療養費制度」という制度が用意されています。

収入によって金額の差はあるものの、医療費が多くかかったとしても、支払う月額の上限が決まっており、その上限を超えた分を負担してもらえるというもの。

ただし現在、日本の医療費は高齢化社会によって膨れ上がっています。そのため今後も、この制度が同じような内容で続くとは限らないため、そのときに備えておく必要があるのです。

また今年(2019年)には消費税がさらに上がるといわれていますから、いまよりもさらにしっかり家計を管理することが必要になることは間違いなさそうです。

そんな時代だからこそ重要なのは、これまで以上に健康に気を使い、できるだけ病気にならないように心がけること。

そんな姿勢が、この先の家計を助けてくれることになるわけです。(31ページより)


これらの考え方を念頭に置いたうえで、以後は「管理」「節約」「投資」の活用法など実践的な解説が続きます。

また、「20代でなすべきこと」から「60代でなすべきこと」まで、年代別の「すべきこと」も紹介されているので、ライフプランを設計するにあたっても役立つはず。

より豊かな暮らしを実現するために、手元に置いておきたい一冊だといえるでしょう。

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Photo: 印南敦史

Source: ゴマブック