シュリーレン現象によるアートな世界です。
NASAが開発した空対空イメージング技術が、飛行中の超音速ジェットの相互作用によって生じた、衝撃波を初めて捉えました。一連の画像は、目を見張る美しさに加えて、NASAがデザインしたジェット機が爆音で衝撃波を生み出すのではなく、穏やかに音の壁を破ることに貢献しているのがわかります。
「Air-to-Air Background Oriented Schlieren flights」略して「AirBOS」と呼ばれるこのプロジェクトは、つい最近カリフォルニア州エドワーズにあるNASAのアームストロング飛行研究センターで行われた、とNASAが発表しています。
ソニックブームの仕組み
その他の飛行機と同様に、ジェット機は空中を移動すると音波を発生させます。航空機が音速より遅い速度(一般的に約1126km/h前後)で移動するとき、音波は航空機の前方に外向きに広がります。
しかし、ジェット機が音速を超えると、航空機は前方の音波よりも速く前進することになります。そこでジェット機が広がる音波を飛び越えると、ソニックブームが起こるのです。そして大音量の衝撃波は基本的に、航空機の前に広がるはずの音波を組み合わせた音となります。
急激な気圧の変化を検出する特殊な画像機器を使用すると、そうした音波を視覚化することができます。この場合、画像は2機の「T-38」が互いに前後10m、そして上下3m離れた編隊で飛行しています。
この写真は、さらに上空を飛ぶ「B-200キングエア」機が撮影しています。NASAいわく、このような写真は科学史上初となるのだそうです。
NASAの研究員ニール・スミス氏は、元来は白黒で撮られ、その後赤く画像処理された写真を指して次のように述べています。
興味深いのは、先頭の「T-38」後方の衝撃波が曲がって相互作用していることです。それは、後ろの「T-38」が先頭の機体に後続しているため、衝撃波の形状が異なっているからなのです。
このデータは、これらの衝撃波の相互作用のしかたについて理解を深めるのに役立ちます
この撮影のために、キングエアは地上約9kmのパターンで飛びました。目標位置に着くと、およそ600m真下を飛び去るT-38を記録することに成功。その特殊カメラは3秒間しか記録できないので、タイミングが完璧でなければなりませんでした。
そして「AirBOS」のプロジェクト管理者、ヘザー・マリスカ女史は、次のように話しています。
一番の挑戦は、これらの写真が撮影できるよう正しいタイミングに合わせることでした。チームがこのような結果を出せて本当にうれしく思います。チームは以前にも、この類の飛行を行なったことがあります。なので彼らはどのように並んで飛べば良いのか熟知しているのです。そしてNASAと空軍のパイロットたちは、とても素晴らしい仕事をしてくれたのでした。彼らはロック・スターですね
「X-59」の開発に役立てる
この実験中に収集されたデータは、NASAのエンジニアが低衝撃波で航空する「X-59 QueSST」(ロッキード・マーティン X-59 Quiet Supersonic Technology)を開発するのに役立てられます。
この航空機は、超音速に達すると爆音の衝撃波を発生させる代わりに、ゴロゴロとした音を出すように作られています。この能力を備えた超音速機は、陸の上を飛行することを承認される見込みで、現在米国での認可を要請しています。
シュリーレン現象について研究していた
NASAの演習の目的は、画像の研究のために撮影することだけでなく、飛行中に新しい画像機器のテストを実行することにもありました。
NASAはかつて、シュリーレン現象の撮影技法について研究していたそうです。ですが新しいシステムはアップグレードされ、同じ所要時間で3倍の量のデータを記録することができるようになったのです。ついでにその他の修正の中、フレームレートが毎秒1400フレームに増加したとのことです。
NASAの物理科学者J・T・ヘイネック氏は、こうコメントしています。
私たちはここまで鮮明で美しい写真が出来るだなんて、夢にも思いませんでした
科学の発展のために撮られた画像ですが、これらはデスクトップの壁紙としても良さそうですよね。どうぞお試しあれ。