映像配信を始めるApple。でも彼らの秘密主義にハリウッドがイライラ

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  • author Sam Rutherford - Gizmodo US
  • [原文]
  • 岡本玄介
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映像配信を始めるApple。でも彼らの秘密主義にハリウッドがイライラ
Image: Apple

業界の常識が違う上、配信サービスは劇場作品とも違いますし?

もう早速来週に、Appleから新たな映像配信サービスが登場する見込みです。超巨大テック企業が、彼らのハードウェアで見られるソフトを投入し、App Storeに新たなアプリやページが追加されることと思われます。

ですがエンタメ業界には新参者のApple、その秘密主義が今、古参のハリウッドにとっては非常に厄介に思われているようです。

秘密主義はテック業界ならでは

The New York Timesもまた「Appleが自身のコンテンツ事業への参入という冒険について情報を包み隠しバレないようシッカリ護っているのが問題の根幹のひとつとしてある」と伝えています。テクノロジー業界では、新着情報の漏洩対策は本能みたいなものですよね。しかし自由度が高い異業種でそれをやられると、常識の違いから古参がイラっと来てしまうのです。

何十人もの情報源から話を聞いたあと、The New York Timesは、小出しに最新情報が公開されるエンタメ業界の慣例に慣れている多くの人々にとって「まだ無名のサービスが登場する」程度のいくつかの詳細以外、いつどのように新サービスが登場するのかといった基本的な情報すら知る機会がない、と話しています。

Appleのエンターテイメント班は、制作陣に個人レベルで最新情報が教えられていたことがわかっています。それも、伝えられる個人が関わっている作品に関してのみ。

スポンサーシップと芸術性の狭間

その他の情報源が語る不協和音のひとつは、Appleの「潔癖」気味の体質だとのこと。Appleのコンテンツ内に、彼らのiPhoneやMacBookが映り、劇中で動作させる描写があれば、そこは管理しなくてはいけないのです。エンタメ業界では、歴史的に自主的な芸術性はずっと護られてきましたが…そうしたAppleのやり方は歓迎されない邪魔者なのです。

これはNetflixのような、その他の配信サービスからしても目立つスタートになることでしょう。なぜならNetflixの運営は、クリエイター陣に制作の上で結構な自由を与えているから。それに、劇中にスポンサー企業のロゴや製品を登場させるプロダクト・プレイスメントなんてのは、昔からよくあることです。なのでAppleが望むように製作してくれるよう一流のクリエイティブに強いるなら、物議を醸すことになるかもしれません。

やり過ぎるとどうなるのか?

THE WALL STREET JOURNALは、最大の懸念点として「もしAppleがプロデューサーらに各種の要求をゴリ押しした場合、その作品がの価値を下げることにつながったり(もしくは炎上とか?)しないか」という不安を綴っています。

Appleの社員は、この配信サービスに与えられた10億ドルの予算と、すべての家族に優しいコンテンツのみを作りたいという方針を踏まえて、「高価なNBC」と揶揄しているとのこと。

実はかなり焦っている様子

この配信サービスは3月25日にお目見えするのですが…Bloombergの話では、Appleが先週になってもまだ、Apple独自コンテンツのほかに StarzやShowtime、それにHBO(いずれも米国のテレビ局)からも番組を提供して貰えるよう契約を急いでいたのだそうです。そんなところから、発表に向けての必死さが感じられたりもします。

判明しているコンテンツ

The New York Timesは、現在8本のコンテンツが完成、または完成間近だと伝えています。Apple製コンテンツ第1弾は、たとえばまだ無題ですがリーズ・ウィザースプーンとジェニファー・アニストン出演による、朝の情報番組を題材にしたシリーズ。そして『アクアマン』のジェイソン・モモア主演のファンタジー・シリーズ『See』。M・ナイト・シャマラン監督による詳細不明のプロジェクト。ロブ・マクエルヘンニーとチャーリー・デイ主演のコメディー・シリーズ『It’s Always Sunny in Philadelphia』があります。


いくつもの業界でリーダーになることに慣れているAppleですが、10億ドル以上の予算を投入する彼らの目標は、やや高めに設定されているようです。配信サービスはとにかく作品が命です。果たしてどこまでネットを騒がせ、ヒットを飛ばせるでしょうか?

Source: The New York Times, THE WALL STREET JOURNAL, Bloomberg

2019年3月19日18時17分:冒頭で「Appleから新たな映像配信サービスが登場する見込みです」と断定的な表現を用いられておりましたが、現時点で発表されるという正式なアナウンスはないため、表現を訂正いたしました。