「頭がいい」というと、どんな人を思い浮かべますか?

以前はIQが高い人というイメージがありましたが、いま注目されるのは「心の知能指数」こと“EI(EQ)”。

EIが高いことが、人とよりよい関係を築く上で必須の条件として重要視されているのです。

書籍『ハーバード・ビジネスレビュー[EIシリーズ]共感力』から、コミュニケーションの新たな指標となる「共感力」についてご紹介します。

「3つの共感」によってコミュニケーションが変わる

“EI(Emotional Intelligence Quotient)”を翻訳すると「感情的な知性」。

標準的には、自分そして他者の感情をよく把握し、それによって自分の感情をコントロールする能力と理解されています。EIでなくEQと略されることもあり、日本ではこちらのほうがよく知られているかもしれません。

いまやEIは、ハーバードをはじめとするビジネススクールがこぞって授業に取り入れるほど、認識が高まっているそう。

いったいなぜ、これほどEIが注目されるのでしょうか?

EIの提唱者であるダニエル・ゴールマンは、EIについてこう述べています。

EIでは3つの種類の共感が重要です。

認知的共感、すなわち他者の視点を理解する能力。

感情的共感、すなわち他者が感じていることをくみ取る能力。

そして共感的関心、すなわち相手が自分に何を求めているかを察知する能力です。

(『ハーバード・ビジネスレビュー[EIシリーズ]共感力』121ページより引用)

働き方や価値観が多様化したいま、従来の論理的知性だけでは多くの人をまとめ、動かすことが難しくなりました。そこで脚光を浴びるようになったのがEI。

「共感」によってお互いを理解しあうことで、コミュニケーションがもっと有意義なものになり、不正や不公平、腐敗や癒着の解消にまでつながる可能性があるといいます。

本当の聞き上手とは?

本書は世界最高のマネジメント誌といわれる『ハーバード・ビジネス・レビュー』から、EIに関する論文や記事を「共感力」というテーマでまとめたもの。

さまざまな学識を持つスペシャリストが執筆しています。

第3章「優れた聞き手は、どう振る舞うか」で取り上げられるのは、「共感力」を駆使した傾聴スキルです。

リーダーシップ開発のコンサルティングを行うジャック・ゼンガーとジョセフ・フォークマンは、長年の経験から「多くの人は、自分が思うほど聞き上手ではない」といいます。

よい傾聴は、相手が話している間に黙っていればよいというものではけっしてない。それどころか、皆が最高の聞き手だと思うのは、発見や洞察を引き出すような質問を定期的に投げかける人だ。

(『ハーバード・ビジネスレビュー[EIシリーズ]共感力』32ページより引用)

「傾聴」と聞くと、相手が話している間は相槌を打ちながらしっかりと聞き、話し終わったところで自分が話すことを想像する人も多いことでしょう。

よく推奨されるのは、「つまり、おっしゃっているのは◯◯◯◯ということですよね」などと、話し手の言ったことを表現を変えて繰り返すというスキルです。

でもそれは間違い

ゼンガーとフォークマンは、このほかにも3つの観点から「傾聴力」とは何かを分析しています。

いわく、優れた傾聴とは「トランポリン」のようなもので、話し手にエネルギー、勢い、高さ、広がりをもたらすとのこと。

「トランポリン」のイメージをもって話すだけでも、何気ない会話が実りの多い対話へと変化しそうです。

ビジネスシーンだけでなく、コミュニケーションの基本となる知見が満載の本書。ぜひ手に取ってみてください。


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Source: 『ハーバード・ビジネスレビュー[EIシリーズ]共感力

マイロハスより転載(2018.12.02)