Appleデザインはやっぱりスゴかった。新AirPodsのコア「H1チップ」のことをAppleのVPに聞いてきた

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  • author 鈴木 康太
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Appleデザインはやっぱりスゴかった。新AirPodsのコア「H1チップ」のことをAppleのVPに聞いてきた

はぁ…見習いたい。

AirPodsのアップデートが発表されましたね。2017年12月の発売から2年と少し、その快適さにこれまでいったい何人がやられてきたでしょうか。

AirPodsが入ったケースのフタを開けて、近くのiPhoneに表示された「接続」をタップするだけでペアリングはおわり。これをいちど済ませれば、あとはAirPodsを耳に乗せるだけでiPhoneと接続されます。さらにiPadやApple Watch、Macで使いたかったらそれぞれの画面でAirPodsを選べばいいだけ。その都度ペアリングは必要ありません。

AirPodsは世界ではじめてのワイヤレスイヤホンではありませんでしたけど「これだよこれ」と、からだの中からうれしさが湧いてくるような体験をさせてくれた、はじめてのワイヤレスイヤホンでした。いまやワイヤレスイヤホンを評価するときは、AirPodsが基準です。登場から2年が経ったいまでもまったく古びていません。

そんなAirPodsのアップデートです。期待するなっていうほうが無理です。ワイヤレス充電のサポート、最大2倍速くなったデバイスの切り替え、通話時間1.5倍、「Hey, Siri」のサポート、レイテンシー30%オフ。

うんうん、もぐもぐ。おいしい。着実においしくなってる。いい。

けど、はぐれメタル並みにお目にかかれていない充電マットのAirPowerのこともあってか、正直に言うと「もっと食わせろー」って気もしたんです。

でもよく考えると、このアップデートにはAppleデザインのつよさを感じました。

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Image: Gizmodo US

Appleのバイスプレジデントを直撃!

今回ギズモード・ジャパンはAirPodsアップデートのリリース当日、Appleのプロダクトマーケティングのバイスプレジデント、グレッグ・ジョズウィアックさん、そしてハードウェアエンジニアリングのバイスプレジデント、ケイト・バーゲロンさんの2人から、直接AirPodsの話を聞くことができました。オン・ザ・レコードです。

2人から改めてAirPodsのアップデートを紹介してもらったあと、今回のアップデートの立役者っぽいH1チップのことを聞いてみました。初代のAirPodsではW1だったチップの名前がW2じゃなく、アルファベットが変わってH1となっているところにこれは何かあるぞ、と。この新しいAirPodsのコアのことを聞けばAirPodsのことがもっとよくわかると思ったんです。

いざこの話題を切り出してみると、ジョズウィアックさんが言うにはH1はワイヤレスとヘッドホンの機能が統合されたあたらしいチップってことみたい。

H1はまったくあたらしいチップで、ワイヤレスとヘッドホンの機能の組み合わせをさらによくするものなんです。ワイヤレスができるだけじゃなくてヘッドホンの機能が組み込まれたという点でH1はあたらしい。

つづけてケイト・バーゲロンさんがハードウェアのVPらしくもう少し詳しく話してくれました。

シリコンの統合がありました。つまりオーディオを再生するときに、より効率よく、よりパワフルになるということを最初から考えられていたことがH1の非常にあたらしい点です。

ってことは音楽をもっといい音で聞けるようにオーディオの品質が変わったりしているのかというとそういうわけでもないよう。

オーディオのクオリティは最初のAirPodsと同じです。ただワイヤレスのオーディオの統合性と親和性がよくなったということです。

「つまりW1からH1にチップのアルファベッドが変わったのは、単純にチップ作り直したからってことですか?」と聞くと2人揃って「そうです」と答えてくれました。

これってつまりオーディオ製品の心臓部であるチップを作り直したにも関わらず、その性能を処理速度やバッテリー効率を活かす方向に全振りしたってことです。Appleは今回のアップデートでWebサイトにも書かれているデバイスの切り替え速度や長くなった通話時間、レイテンシーの削減にまっしぐらでした

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Image: Apple

AirPodsは音楽を聞く(だけ)のデバイスじゃない

ここでぼくはひとつ間違いに気づきました。

ぼくは自分がたまたま音楽好きなユーザーだったことでAirPodsが「音楽を聞くデバイスである」と思い込んでいたんです。だから音質のチューニングに進化や変化があってもいいのになと考えたのが、先に出てきた2人への質問でした。

ですが、Appleが考えているAirPodsはあくまでワイヤレスのオーディオデバイス。ユーザーは音楽を聞くほかに、通話もすれば、動画も見ます。ゲームだってするでしょう。「Hey, Siri」のコールコマンドが使えればSiriに何かを聞くときもAirPodsを使うんです。AirPodsを使えば通話のときに両手が空いて便利だし、Macで動画を見るときだってワイヤレスの方が楽です。日常のあらゆる場面で必要なんです。

このユーザーニーズに応えられるオールウェイズオンの体験を作るためにAirPodsには 24時間のバッテリーライフが必要で、各デバイスにシームレスで繋がる体験を向上させるためにデバイス切り替えの速度を最大で2倍速く進化させたんです。これがH1チップの成果です。

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Photo: suzuko

調査会社のCounterpoint ResearchによるとAirPodsは2018年にアメリカで3500万台のバカ売れUS No.1人気のヒアラブルブランドになりました。同じ調査でAirPodsが好きだと答えた人はその理由に「快適性とフィッティング」をいちばん多く(61%)挙げました。つづいて3ポイント差の「使いやすさ」が58%で、「音質」は大きく差を開けた41%でした(補足:AirPodsは有線のEarPodsと比べても音質が優れていると思います)。

この調査の結果を受けてAppleが判断を変えたかというとそうではないと思いますが、プロダクトの強みを脇目も振らず追求・強化すること、そしておそらくユーザーが求めているのがそれだと理解していることがつよい。いまのAirPodsの状況は完全にAppleのデザインが成功している証拠です。さらにこれが作り出すシームレスな体験が、ユーザーがAppleから離れたくない理由です。

AirPodsは東京でもほとんど毎日見かけます。渋谷でも新宿でも少しふらふら散歩すればAirPodsをみつけるのは簡単です。

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Source: Counterpoint Research via AppleInsider via iPhone Mania