2016年2月25日掲載記事を再編集し再掲しています。

一般的には、子どもは2歳になるころには、数百個の単語を話せるようになるものです。

ところが私の息子のアレクサンダーは、2歳の時点で、口に出して言える単語は6つだけでした。

2つの言語(ギリシャ語と英語)の会話を聞くときには、ほぼ何でも理解できていたのにです。

そうした状況にある多くの親と同様に、私も妻も、自分たちのやりかたが何か間違っているのではないかと考えました。

息子よりも年下の子どもたちがどんどん話せるようになっていくのを目にして、私たちの不安は膨らみました。

(私は言語習得の専門家ですが、それでも1人の親として、不安や自責の念からは逃れられません)

バイリンガル教育のウソホント

2カ国語を身につけさせるバイリンガル教育に関しては、昔からいくつもの神話がついて回っています。

たとえば、「言語の発達が遅れる」とか「認知機能の障害を招く」といったものです。

けれども、子どもをバイリンガルに育てても言語習得に問題が生じないことは研究からわかっています。

言語の発達に遅れがあったとしても、それは一時的なもの。ですから、心配する必要などないのですよ!

ほかにも、よく知られている神話で、すでに否定されているものは少なくありません。いくつかの神話を紹介していきましょう。

1. 子どもにバイリンガル教育を行うと発達に遅れが生じる

これは真実ではありません。

それどころか、バイリンガル教育には数々のメリットがあるのです。

たとえば、実行機能(頭の中で計画を立てる力)や、メタ言語意識(言語を抽象的要素として考える能力)、頭脳の柔軟性(情報に順応して処理する力)、創造的思考力が向上します。

2カ国語を操る子どもたちは、言語の発達に関して、「発達のマイルストーン」に正常範囲内で到達することがほとんどですが、正常範囲の下限に近い場合もあるかもしれません(うちのアレクサンダーは、まさにこのケースでした)。

2. バイリンガルの子どもたちは、同い年の子より発達が遅れたままで追いつけない

これは意見の分かれる問題です。

というのも、バイリンガルの子どもたちの間でも大きなばらつきがあるからです。

実際、まったく遅れのみられない子どもたちもいます。

バイリンガルの子どもには、一時的な遅れがみられる場合があります。

これは1つの脳に2つの言語システムを適応させなければならないことが原因ではないかと考えられてきました。

けれども、こうした遅れも、数カ月で追いつける程度のことです(これは一般的な「言葉の遅れ」とは別物です)。

ただし、この一時的な遅れの原因となっているメカニズムの詳細については、さらに踏み込んだ研究が必要です。

3. 2つの言語を混ぜこぜにしてしまう

これは間違いです。

とはいえ、2つの言語が切り離されるタイミングについてはさまざまな意見が出ています。

これまでずっと、生後すぐの段階では2つの言語は融合していて、5歳くらいから徐々に切り離されていくと考えられてきました。

しかし最近の研究成果から、言語は今まで思われてきたよりもずっと早い段階で切り離されている可能性が示されています。

たとえば、バイリンガルの子どもたちは、10カ月から15カ月ほどの月齢でも、喃語(なんご)の発声を、コミュニケーションを取っている相手に応じて変えています。

(たとえば、母親には英語の喃語を、父親にはフランス語の喃語を発声する、といった感じです)

要するに、赤ちゃんはとても小さいころから、自分が話している相手を敏感に察知しているわけです。

これはおそらく、成長後の「コード・スイッチング」(バイリンガルが一連の発話の中で2つの言語を切り替えること)につながるものではないでしょうか。

バイリンガル育児中の親の役立つヒント5

1.励ます言葉をかける

子どもに対して励ますような言葉をかけ、辛抱強く接しましょう(これは、バイリンガルではない幼児に接する場合でも同じです)。

バイリンガルの子どもは、1つの言語のみを学習しているモノリンガルの子どもよりも大変な道を歩んでいることを忘れないでください。

2.言語を使う状況にする

肝心なのは、2つの言語のどちらにも、「実際に役に立つ用途」を持たせることです。

言語は結局、コミュニケーションのためのツールです。

2つのうちいずれかの言語を使う必要がなければ、子どもはその言語を話したり書いたりするのをやめてしまうでしょう。

ですから、両方の言語について、使わざるを得ない状況に子どもを一貫して置くことが大事です。

さらに理想を言えば、それぞれの言語について、さまざまな相手と会話をさせるのが望ましいと言えます。

そうすれば、それぞれの言語について、さまざまな場面での話し方をしっかり覚えられ、効率的な言語処理能力が身につけられるでしょう。

それがひいては、聴く力と話す力の助けになります。

3.同等である必要はない

2つの言語のバランスを気にする親は少なくないようです。

つまり、2つの言語が同レベルで身についているかを心配しているわけです。

従来は、2つの言語について同レベルの運用能力を持っていなければ、正真正銘のバイリンガルとは呼べないと考えられていました。

けれども、2カ国語をきわめて流暢に操るバイリンガルを対象に一連の研究を実施し、何度も観察を行ってきた結果、いくら両方の言語に堪能なバイリンガルであってもやはり、「優勢言語」というものがあることがわかっています。

ですから、両方の言語の運用能力が完全に同等でないからといって気をもむのは、あまり意味がありません。そんな人はめったにいないからです。

4.混ぜこぜでも気にしない

バイリンガルの子どもが2つの言語を混ぜこぜに使っているのを聞くと、たいていの親は問題視します。でも心配しないでください。

それは、2カ国語を同時に学んでいく上ではごく自然な現象であり、混乱のサインではありません。

両方の言語を流暢に使いこなすバイリンガルでさえ、言語を混ぜて話しています。

5.医師に相談する

自分の子どもの言語発達に不安があるなら、医師の診断を受けるべきです。

さらに必要な場合には、言語聴覚士にも診てもらいましょう。

バイリンガルの子どもに言葉の遅れがみられる場合もありますが、それはほかのどんな子どもにも起こりうることです。

なかなか話せるようにならないときは、子どもの言語習得の手助けとなるよう、早めの介入が必要が必要な場合もあります。

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Image: Shutterstock.com

Mark Antoniou[原文:Debunking common myths about raising bilingual children