「耳栓+音読」の効果がすごい。ノートもペンも必要ない、4つの “脳科学的” 勉強法と暗記術

ペンを持たない勉強法01

勉強したいけれど、忙しくてじっくり机に向かう時間がない。そうお悩みならば、机に向かわないで済む方法を使って、効率よく勉強してみてはいかがでしょうか? 机に向かってペンを握らなくても、勉強の成果を出すことは可能ですよ。今回は、「ペンを持たない」勉強法についてお伝えします。

「ペンを持たない」勉強法1:音読勉強法

Study Hackerの記事「勉強嫌いも関係ない! 京大生おすすめの『とりあえず音読』勉強法のすごいメリット」で説明されている通り、黙読より音読したほうが、勉強の効果は高まります。音読には、上の空になりがちな黙読に比べて勉強の内容に集中できる、脳の部位を多く使うため情報が長期記憶に残りやすい、というメリットがあるのです。

東北大学加齢医学研究所教授で脳機能開発が専門の川島隆太氏によれば、音読をすることによって脳が働きやすくなり、音読直後の記憶の容量は何もしない時と比べてなんと20~30%も増えるのだとか。

さらに、脳科学や勉強法に関する著書を持つ医学博士の福井一成氏は、「耳栓をして」音読をするのが良いと勧めています。耳栓をした状態で覚えたい箇所を指でなぞりつつ、ささやき声で読むと、骨伝導により自分の声が頭の中で大きく響くため集中力が高まるのだそう。

黙読では内容をつい読み飛ばしてしまうこともありますが、音読の場合は1つ1つの単語を意識しながら読んでいるという実感を持つことができますよね。例えば、資格試験の参考書や学校の教科書を、耳栓あるいはイヤホンやヘッドホンをしながらささやき声でゆっくり音読してみてはどうでしょうか。新しい知識でも、声に出して読むことでよりたくさんの事柄を覚えられますし、また集中して勉強ができるようにもなりますよ。

これなら机に向かってペンを持つ必要がありませんので、お風呂でお湯につかっているときや寝る前のちょっとした時間にも勉強することができるはずです。

ペンを持たない勉強法02

「ペンを持たない」勉強法2:聴覚記憶法

また福井氏は、「音読勉強法」に加えて「聴覚記憶法」も勧めています。その名の通り、聞いて覚える勉強法です。聴覚記憶法の手順は、実は下記のたった2つしかありません。

1. 参考書を音読する際、ICレコーダーに録音する
2. 録音音源を繰り返し聴く

録音音源を聴いていると、左脳は「言語」として暗記しようとするのに対し、右脳は聞こえたままの「音」として暗記しようとするのだそう。すると、例えば試験で左脳が語句を思い出せなかったとしても、右脳が覚えている音をきっかけに言葉を思い出せると言います。CMの謳い文句をいつの間にか覚えていたということはありませんか。これは、言語として記憶しようとする以前に、リズム等の助けもありつつ頭の中で音が繰り返されるうちに、その言葉を音として覚えてしまっているのです。

そこで、情報を言語としてだけでなく音としても記憶するために、覚えたい内容を音読して録音しましょう。一度録音してしまえば、就寝前や通勤・通学時など、時間や場所を限定せずに聴くことが可能となります。そうすれば、日常のスキマ時間をより有効に使って勉強することができるに違いありません。今ではスマートフォンにもボイスレコーダーが標準機能として備わっている時代です。その録音機能を利用するなどして、勉強を効率的に進めていきましょう。

ペンを持たない勉強法03

「ペンを持たない」勉強法3:チャンク化

漢字だらけの歴史上の固有名詞、資格試験の勉強に出てくる複雑な専門用語、理系分野の長いカタカナ語……。「難しい言葉を覚えるには、やっぱり書くのが一番!」とばかりに、ひたすらペンを動かしていませんか? 確かに、書くのは悪い方法ではないと思います。でも、手が疲れるわりに単語がなかなか頭に入ってこない、ということもありますよね。実は、ペンを持たなくてももっと効率よく記憶できる方法があります。

ミズーリ大学の認知心理学者であるネルソン・コーワン氏によれば大量の情報を効率的に記憶するためには、情報をいくつかの塊に分けることが有効なのだそう。文字の羅列のようにそのままでは記憶しにくい情報も、いくつかのまとまりに分けると覚えやすくなるのです。

コーワン氏曰く、単なるアルファベットの羅列はせいぜい3つか4つしか覚えられなくても、「CIA」「FBI」「IRS」などの文字列ならばたくさん覚えられるのは、それらの文字が頭の中でグループ化されているからなのだとか。

このように情報を塊で分けることを、チャンク化と呼びます。「チャンク」とは人間が扱う1つの認識のまとまりのこと。身近な例としては、郵便番号や電話番号が3つか4つの数字のまとまりで区切られていることが挙げられます。ただの数字の羅列が、チャンク化によってとても覚えやすくなっているのです。

そこで、先ほど挙げたような漢字だらけの固有名詞や複雑な専門用語、長いカタカナ語などを覚える際は、ぜひチャンク化をしてみましょう。例えば、歴史の「墾田永年私財法」という単語なら、そのまま暗記しようとするよりも「墾田-永年-私財-法」と4つの言葉のまとまりに分けるほうが、断然覚えやすくなりますよ。

ポイントは、コーワン氏が提唱するマジカルナンバー「4±1」単語の長さを意識することです。私たちの記憶の限界は4±1個程度なのだそうです。ですから、ひとつのまとまりのなかに入れる要素の数は4±1個程度にすることを目安としましょう。

長々とした複雑な言葉は、ただひたすらペンを握って紙に書き続けるよりも、チャンク化したほうが、脳に負荷をかけることなく楽に覚えることができるのです。

ペンを持たない勉強法04

「ペンを持たない」勉強法4:勉強前に0.5Lの水を飲み、早足で歩きながら暗記する

イースト・ロンドン大学とウェストミンスター大学の研究者らによれば、CANTAB(The Cambridge Neuropsychological Test Automated Battery)と呼ばれる認知機能テストに取りかかる前に約0.5Lの水を飲んだ人は、飲まなかった人と比べて約14%もテストに対する応答時間が速くなったのだそう。研究グループのリーダーであるキャロライン・エドモンズ氏は、わずかな水分不足であっても知的パフォーマンスに影響を与える場合があると言います。

また精神科医のアンダース・ハンセン氏によれば、アメリカで行われた実験において「週に3回、40分早足で歩く」ことを1年間実践した人のグループは、記憶力をつかさどる脳内の「海馬」と呼ばれる部位が平均2%以上も大きくなったのだとか。他にも、単語テストを受ける際、運動しながらあるいは運動してから暗記をすると、何もせずに暗記をした人よりも覚えられる単語数が20%増えたというデータがあるとも伝えています。

これら2つの効果を組み合わせると、運動と適切な水分補給によって集中力や記憶力を高められることが分かるでしょう。ただし、単語帳や参考書を見ながら外で早歩きすると危険ですから、室内で早歩きするか、また先ほどもお伝えした聴覚記憶法と組み合わせて録音音源を聴きながら早歩きするなどしてみてはいかがでしょうか。その際は、身体の動きが重くならない程度に水を飲んでおくことも忘れずに。

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勉強の効率をより高めるためには、いつでもどこでも勉強ができる環境を整えておくことがきっと役に立ちます。机に向かってペンを握ることだけが勉強ではないのです。みなさんも、ご紹介した方法をぜひ実践してみてください。

(参考)
STUDY HACKER|音読の効果とやり方を丁寧に解説。テキストの選び方・おすすめの本は?【保存版】
AERA dot.|“耳栓して音読”が暗記に効果的 脳科学で苦手を克服!
Sankei Biz|子供の頭を良くする音読&褒めワザ 「脳トレ」で知られる川島隆太所長に聞く
WIRED|人間の脳は本当に「パンク」するのか:研究結果
WIRED|水を飲むと脳が活性化する:研究結果
Frontiers|Subjective thirst moderates changes in speed of responding associated with water consumption
東洋経済オンライン|物覚えの悪い人が知らない記憶のカラクリ
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【ライタープロフィール】
三島春香
神戸大学経営学部所属。京都市立西京高等学校卒業。海、宇宙、音楽、レモンが好き。旅行も大好き。大学生のうちにいろいろな所へ出かけて見聞を広めたい。

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