人は選ぶけど、ワクワクするスマホ。
リリースになるなり各所で壊れて、幕引きって意味のほうのフォールドになりかけてるGalaxy Fold。1週間使い切った米Gizmodoが、壊れてないときのFoldの貴重な姿をレビューします!
SAMSUNG Galaxy Fold
これは何?
折りたためる2画面スマホ
価格
1,980ドル(20万円超)
好きなところ
7.3インチなのにポケットに収まる。
バッテリーもち、めちゃいい。
処理性能抜群。
ストレージが巨大。
好きじゃないところ
重い。分厚い。高い。防水なし。閉じた状態の画面小さすぎ。
なんせ20万円。
普通にレビューする意味あるのかな、と思っちゃいますよね。
買う人は値段なんか気にしない。ただ新しいもの、イノベーティブなもの、ワクワクするものを求めて買うわけだし、どっちみち予約注文は完売なので、今からじゃ買えませんしね。これだけの欠点を抱えていながらGalaxy Foldはいろんな意味で真のゲームチェンジャーと呼べる、今どき珍しいガジェットです。
数でみるGalaxy Fold
まず、重量は263g。厚さ17mmちょい。 Galaxy FoldはGalaxy S10の倍近く重くて、倍以上に厚いです。
ポケットには入ります。が、入れたの忘れてパタパタと体を探すようなことはまずありません。とんでもない存在感です。ゴムが緩んだパンツや、ベルト締め忘れたままポケットに入れて外に出ると1日中、ズボンがずり落ちて客先に迷惑をかけます。胸ポケットに入れると、フォート・ノックス陸軍基地の地下金庫から金塊盗む人みたいに見えるのでそれもできません。
値段は2,000ドル(約22万円)。(ほぼ同じことができる)OnePlus 6Tが4台近く買えます。5人家族の家族全員と親せきのおっちゃんにNintendo Switch配ってもまだ余るお値段。
カメラは6個。RAMは12GB 、ストレージは512GB、閉じると蓋が画面になる「カバースクリーン」が4.6インチ、中の画面は7.3インチ。一番デカいiPhone XS Maxの6.5インチよりさらにデカいです(値段はXS Maxの512GBが16万4800円) 。こうやって見てくるとバカみたいに高い。ワイヤレスイヤホンのGalaxy Budsとケブラー素材っぽいケースが同梱なので少しはマシだけど。
バッテリーは4,380 mAhで、これまたバカみたいに電池もちがよくて、動画テストでは17時間6分ももちました。米Gizmodoのスマホテストでは歴代最長記録です。
曲がる巨大画面になんの意味があるのか?
編集部の人たちの反応(動画上)が面白くて、一番多かったのが「こんなデカい画面で何するの?」でした。まあ、確かに…。Twitter、Instagram…どれも普通のスマホと何ひとつ違わなくて、ただ単にデカくなるだけ。タブレットと変わんないって言われると、そうなんですよね。
まあ、しかし、タブレットといえばおじいちゃん、おばあちゃんじゃないですか。アイコンは確実に押せるし、文字も読める。老眼世代には救世主でしょう。でもFoldは折りたためるから、タブレット持ち運べないところにも持ち運べる…というと、ちょっとわかりづらいか。僕的にはとにかくFoldは、デカくて、曲げられるところがすごさで、これができるといろんな端末がひとつにまとまるわけで、そのシンプルな思い付きを実現してしまったところに可能性を感じるわけですよ。
マンガはほんと、タブレット並みというか、ひょっとするとGalaxy Foldで読むほうが快適かもしれません。電子書籍も同じで、Kindleアプリをダウンロードして背景を黒にしたら目にイイ読書端末に早変わり。タブレットもKindleも同時にバイバイですから、コスパはそれほど悪くないかも。
電車で動画観るときも、Google Mapで近くのスポット確かめるときも、PUBGとかAuto Chessのゲームで遊ぶときも、大画面のほうが絶対視界が広くてプレイは面白い。頭に命中する確率は確実に上がります。ジムのランニングマシンの画面並みの大きさでありながら、Galaxy Foldの画面はめちゃシャープです。
アプリは3つのマルチタスキング
アプリは3個以上同時に開けて使えます。これはほかの端末がやろうとしてもできなかったこと。その意味でもGalaxy Foldはパワーユーザーが使って満足できるスマホだと思います。
ハイテク x ソフトウェア
「App Continuity」というのがあって、Foldは外画面と内画面の間でアプリがシームレスに行き来するんです。まあ、中にはダメなアプリもあるけど、SamsungはGoogleの協力も得て進めたので、SamsungのアプリとGoogleの基本アプリはすべて対応しました。
折り畳み画面フル対応はAndroid Qからですけど、マイナーなアプリも特に問題なく使えます。
YouTubeにカメラが食い込んでる
数少ない例外がYouTubeで、画面いっぱいに広がる、映像の元のアスペクト比を忠実に再現する、ということができなくて、ほぼ毎回16:9のデフォ比。横に構えると上下に黒帯が出ます。別にいいけど、もったいないかな。もっと困るのはこの写真の右下みたいに、ありあまるカメラのノッチが映像に食い込んじゃってること。しかもこれ、YouTube TVやほかの動画プレイヤーではこうはならないんですね。ヘンなの。
そもそもカメラ6個も要らない
カメラといえば、Galaxy Foldは6つ目。これは入れすぎ。Samsungの意図はわかります。外画面と内画面にそれぞれ自撮り用の正面カメラ入れたらこんなに増えちゃったんです。顔面アンロックだし。でも外にカメラあるのに、この大画面広げて自撮りする人なんているんかいな、という気が…。せっかく黒帯になってるんだから、この向きで搭載すればいいんじゃん、と…。
背面のトリプルカメラ。これはセンサーもレンズもS10と一緒です。メインのレンズが12MPで、 2x望遠レンズが12MP、超広角レンズが16MP。特に驚く材料はありません。 Pixel 3と比べると、もっと明るくて色鮮やかに見えますが、ディテールは拾えてません。望遠は勝ち。自社のS10と比べるとまったく横並び、です。
紆余曲折のスタート
発売早々ここまで評判が地に落ちるローンチも珍しいです。だいたい保護フィルム外すと画面が壊れるなんてそんな大事なこと、先行レビュー端末配るときになんでひとこと言わなかったのか…。レビュワー(記者、ライター、インフルエンサー)が受け取る端末は市販のものとは少し違うので、デリケートなところに爪突っ込んだりしないようにっていう細かい注意書きは入っていたんですけどね。
まあ、しかし、終わってしまったことはしょうがない。時計の針を戻すことはできないし、Samsungはこの現実を受け入れて生きていかないといけません。発売延期は英断かと。
悪評その1:折り目
まず多かったのがこれ。折り目が見える、っていうやつ。見える、感じる、気が散る、と。でも1週間ほぼノンストップで使ってみたけど、これはせいぜいワースト順に数えて4番目か5番目の問題です。
悪評その2:むしろ外画面が小さすぎるほうが困った
自分的に一番困ったのは4.6インチの外画面で、これはあまりにもちっちゃい。ただメールとかメッセージを眺めるだけなら問題なんですけど、返事を書こうとすると、たちどころにイライラMAXに。めちゃ縦長なので、キーボードの横幅が十分とれてなくて、すんごい目詰まりなんですよ。
Galaxyのこれまでのベゼルレス路線はどこに消えたんだってぐらい、スペースを無駄に使ってて、小さすぎるシャツ着て肉がはみ出てる人みたいなことになってます。
悪評その3:壊れる?
5年パカパカできるって話は機械だけなのか? こればかりは時間をおいてみないとわかりません。 The Vergeは画面の下に何か異物感があるなと思ったら、そこから画面にピピーッと線が入ったし、CNBCニュースはフィルムを剥がしたわけでもないのに2日で画面がチカチカ瞬く症状が出てレビューできなくなりました。
うちがもらったのは欧州版モデルなせいかもしれませんけど、Fold、まったく問題なく使えてます。ケースもつけないで、木の床に60cm上から落としても無事。Galaxy Foldは値段が値段なので悪評の振り幅も大きくなってしまいますよね。
悪評その4:透き間。確かにある
あと心配なのが、これ。Galaxy Foldは折れ曲がる画面の上下とヒンジの間にちょっとやばい感じの透き間があって、 結局いつかゴミやホコリが入って故障しそう…。わかんないけど。
悪評その5、6、7:重い、厚い、画素密度も低い
重さと厚みも課題。改善されるだろうけど、今これがネックで買い控える人がいてもなんも言えないなあ…。
画面もイマイチで、ほかの端末に搭載になってる自社製ディスプレイに比べてもまだ劣ります。明るくて鮮明ですが、なんせ2,152 x 1,536 pxの解像度を7.3インチに伸ばしちゃってるんで、画素密度はS10+より30%近く低いんですね。よっぽどピクセルおたくじゃないと気付かないレベルだけど、ほかの超鮮明ディスプレイで文字を見慣れてるとやや輪郭がもやっと感じるかもしれません。
悪評になってない問題:左右でスクロールが微妙にずれる
Foldはスクロール速度が所によって気持~ち、ずれます。均等じゃなくて、左側が右側より若干、未来を行くんです。本当に微妙なので、これも言われないと気付かないレベル。でもずれは確実に、あります。
でも最高だった
ま~欠点並べたらキリないけど、それは次世代Foldの課題ですよね。酷評の嵐で折れそうになるかもしれないけど、これだけイロイロありながらFold、僕はすごくワクワクしました。分厚いけど、それは確かな手ごたえと言い換えることもできます。内側に磁石が隠れていて、閉じるたびにカチッとなって安心だし、やっぱりこれだけデカいんです。楽しくないわけがない。
買い?
あらゆるシーンで答えはNOです。安さを求める人は最初から、Galaxy Foldは買いません。耐久性を求める人にも、Galaxy Foldはすすめられないし(防塵防水規格IP68は今やフラグシップモデルのスタンダードだけど、Foldは何ひとつ満たしてるものがない)、デカさを求めない人にもGalaxy Foldはすすめられない。説明書を細かく読んで調べるのが苦手な人、新しいもの試すのが苦手な人にも、Galaxy Foldは絶対ノー。目指したゴールは高いけど、まだ途上というところですね。いきなり100点満点求めるほうが現実的じゃないよね。Galaxy Foldを見てもなんの興味も湧かないという人がいても、それは別にその人が悪いんじゃない。無利に買わなくていいです。
キツいレビューになってしまったけど、革命ってこんなものかも。初代iPhoneだって世界が刮目した伝説のガジェットだったけど、本当に買って大丈夫になったのはiPhone 3Gからでした。初代SurfaceだってキーボードとOSが使えるレベルになったのはSurface Pro 3からです。きっとGalaxy Foldもそのクラスのガジェットなんですよ。
折り畳みスマホに興味がある人も、初代が怖いなら、悪いことは言わないのでGalaxy Fold 2か3まで「今は待て」です。その頃には今のSamsungの悪夢も終息しているはず。今のGalaxy Foldはまだ、アーリーアダプターの気骨があって多少のことには目をつぶれる人のためのガジェット、です。
曲がる未来を見せてくれ
値段は高く、野望は大きく。Galaxy Foldは未来の携帯。大勢の人がそう位置づけていますけど、Galaxy Foldは未来そのものというより、未来の一翼ですね。今ある携帯と共存できる。キラーではないです、少なくとも今はまだ。
これだけ欠点並ベてこんなこと書くのもあれですけど、Foldはちょっと手を離してほかのテストとか作業やるたびに、さっさと片付けてFoldに戻りたくなるスマホでした。こんな気持ちになるスマホはちょっと久しく記憶にないです。Galaxy Foldは全員の心に響くわけじゃないけど、響く人には、どストライクで、いくら写真や文章で見ても手に取るまでその良さはわかりません。Samsungもこれからが山ですけど、折り畳みの未来は確かに見せてもらったと、そう思いました。
5分でまとめると
- ただのギミックと思ったら大間違いで、タブレット、eリーダーは実質不要に。
- 防水、ヘッドフォン差込口がないのが最近のSamsungらしくない。耐久性も「?」。
- 技術、耐久性、値段に疑問を感じるなら買わないのが正解。
- 欠点だらけなのに、手放せない愛機。