サイエンス

100年以上も謎だった「とろりとしたチョコレートの舌触り」の裏にある科学を物理学者が究明

by Marta Dzedyshko

チョコレートが口の中でとろりと滑らかに溶けるには「コンチング」という練り上げの作業が重要になりますが、なぜコンチングによってチョコレート特有の舌触りが生まれるのかという科学的な理解は、これまでほとんど進んでいませんでした。そこで、物理学者たちが「チョコレートの舌触りの秘密」を究明し、人々を夢中にさせるチョコレートの裏にある科学を明らかにしました。

Conching chocolate is a prototypical transition from frictionally jammed solid to flowable suspension with maximal solid content | PNAS
https://www.pnas.org/content/early/2019/05/06/1901858116

Great chocolate is a complex mix of science, physicists reveal -- ScienceDaily
https://www.sciencedaily.com/releases/2019/05/190508134531.htm

1657年にホットチョコレートがイギリスで登場してから、人々の欲望をかき立ててきたチョコレートですが、その魅力の1つは口の中でとろける滑らかさにあります。この滑らかさを生み出すために重要なのがコンチングという作業で、ココアバターを均一に行き渡らせるためにはチョコレート製造独特の「コンチェ」と呼ばれる攪拌(かくはん)機が使われます。コンチェは1879年にスイスのロドルフ・リンツによって開発されましたが、これまで、そのコンチェの背後にある「チョコレートを滑らかにする科学」はほとんど理解されてきませんでした。

実際にコンチェでチョコレートをかき混ぜている様子は以下のムービーで確認可能。これはチョコレート専門店「Cacaotier Gokan(カカオティエ ゴカン)」での製造の様子で、コンチングの作業は最低でも24時間続けられるそうです。

チョコレートを24時間かき混ぜ続ける「Cacaotier Gokan」の厨房 - YouTube


コンチングの科学を解明するために、エジンバラ大学の研究者は液体チョコレートに似せた混合物をコンチェで攪拌し、混合物の密度や、それぞれの段階で混合物がどのように流れるのかを分析。この結果、「コンチングは、微視的な砂糖の結晶およびその他粒状の材料が持つ物質的特性を変える」ということが示されました。

チョコレートは数時間にわたるコンチングにより、材料の固まりがきめ細かい粒子となり、粒子間の摩擦が減ることで滑らかな舌触りが生み出されます。コンチングを経る前の材料の粒子は粗く、サイズが不均等であるため、ココアバターと混ぜてもスムーズに流れることができません。このためコンチングを行わない方法で作られたチョコレートはざらっとした質感になってしまいます。

by Pixabay

研究者らの発見は、低脂肪のお菓子開発において重要なカギになるほか、チョコレートをより効率的に作る方法にも役立つとのこと。また、セラミックやセメントの製造といった別の産業でも多いに役立つことが期待されています。

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in サイエンス,   , Posted by darkhorse_log

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