「コーヒーは、果たして健康に良いのか悪いのか?」という、何世紀にもわたる議論に科学が決着をつけようとしています。

2012年に米国の国立癌研究所などの研究者が、コーヒー愛飲者の「心臓病、呼吸器疾患、脳卒中、ケガ、糖尿病、感染症が原因による死亡率が低い」ことを発表しました。

以来、コーヒーに健康改善効果があるという研究結果が、世界各地から続々と出てきました。

現在も新たなエビデンスが伝えられ、いまや身近なスーパーフードの扱い。

そういった情報に触れたことで、自宅でコーヒーを淹れ始めたり、カフェに通うようになった人も少なくないでしょう。

健康効果の高いコーヒー豆の選び方

焙煎中のコーヒー前
Image: Shutterstock.com

でも、ご用心。コーヒーなら、なんでも健康に良いというわけではないのです。その恩恵を受けるには、幾つかの条件を満たさなくてはなりません。

今回は、それについて論じた『米国の医学博士が伝授する 人生を変えるコーヒーの飲み方』(ボブ・アーノット著、佐々木紀子訳、扶桑社)より、コーヒーで健康効果を得るための注意点を紹介しましょう。

健康成分の含有量は産地によって雲泥の差

コーヒーに含まれる健康成分の中でも注目に値するのは、ポリフェノールの1種であるクロロゲン酸(CGA)だそうです。

この成分には、「カフェインの興奮作用を防ぐ」、「炎症を軽減する」という2大効用があります。特に後者は、体内の炎症から派生して発病するがん、骨関節炎、糖尿病、自己免疫疾患、アルツハイマー病といった病気の予防につながります。

さらに、運動中の速度とパワーをアップさせ、体内のフリーラジカル(酸化物質)によるダメージも抑制します。

このように、いいことづくめのCGAですが、産地によって含有量に大きな差があるそうです。

SL28というケニア産のロースト豆は、3-CQAという有益なCGAを1kgあたり約24g含有していました。

これに対して、比較のためスーパーマーケットで入手したあるコーヒーは、1kgあたりの3-CQAがわずか1.8g程度だったのです。

『米国の医学博士が伝授する 人生を変えるコーヒーの飲み方』P.77より引用

そう、「コーヒーってヘルシーなんだよな~」と思いながら飲んでいるスーパーの特売品は、ミルクと砂糖入りのカフェインドリンク以上のものではない、という可能性があるのです(一応、カフェインにもそれなりの健康効果があると書かれていますが)。

どこで採られたコーヒー豆が良いの?

では、どこで採られたコーヒー豆が好ましいのでしょうか?

答えは「赤道付近」の「標高の高い地域」。前述のケニアもそうですし、ほかにはエチオピア、コロンビア、ブラジルの一部地域が該当します。

こうした地域で育つコーヒーは、昼は日光の紫外線が強く、夜は寒冷という厳しい環境に対応するため、盛んにポリフェノール類(本書では「フェノール類」と表記)を作り出します。

これによって、CGAをはじめとした成分がふんだんに含まれたコーヒー豆ができるというわけです。

深煎りコーヒーでは、健康成分が激減する

たとえケニア産の素晴らしいコーヒー豆であっても、焙煎(加熱)温度が高すぎるとNGだそうです。

特に、最も焙煎温度の高い「深煎り」の豆で淹れたコーヒーは、(ブラックで飲まない場合)「より多くの脂肪や砂糖、高いカロリーを摂取することでしかありません」と、手厳しく述べています。

高温でローストすると豆に含まれるフェノール類が破壊されてしまうのです。

そしてアクリルアミドのような毒性物質が増加するおそれも出てくるのです。

アクリルアミドはフライドポテトやポテトチップスなどに見られる発がん性物質です。

『米国の医学博士が伝授する 人生を変えるコーヒーの飲み方』P.106より引用

そこで著者がすすめるのが、深煎りの対極にある「浅煎り」。

なおかつ、「街場の焙煎業者から買う豆は大手業者から買う豆よりも新鮮である可能性が高い」そう。

新鮮な浅煎りのコーヒー豆には、コーヒーに対する見方を一変させる味わいがあるとのことで、地元の良い焙煎業者を探す手間をかける意義はありそうです。

コーヒー豆は、冷蔵庫で保存しない

ご存知のように、コーヒー豆(あるいは挽いた粉)は冷暗所に保存するのがセオリー。では、冷蔵庫に入れておけばパーフェクトでしょうか?

本書の著者の答えは明快です―「冷蔵庫保存はもってのほかです!」

問題が生じるのは、冷蔵庫の中から出した時点。

「豆の表面に結露が生じ、あっという間に劣化」するそう。やはり、冷暗所(日光の当たらない涼しい場所)に保存するのが正解です。

いずれにせよ、焙煎したコーヒー豆は、開封して酸素に触れた時点から少しずつ劣化するので、3~4日で使い切る分量だけ小分けに購入するようにとも、アドバイスがあります。


これまでカフェで出されたコーヒーを飲むのが日常的な人にとって、焙煎業者からコーヒー豆を買って自分で淹れるというのは、少しハードルが高いかもしれません。

でも、そうした方向けに、おいしくてフェノール類もたっぷり摂れるコーヒーの淹れ方についても、本書で解説されています。健康効果を高めるコーヒーを飲みたいなら、一読をおすすめします。

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Source: 『米国の医学博士が伝授する 人生を変えるコーヒーの飲み方

Image: Gettyimages,Shutterstock