ある土曜日の朝、私の6歳になる娘は小さなテーブルの前に座り、友達に贈るバースデーカードを書いていました。

周囲の床には、くしゃくしゃに丸められた紙切れが10枚ほど散らばっています。

「Happy Birthday」の「H」の字を書いては、その形が気に入らなくて新しい紙に書き直すことを繰り返しているのです。

娘はイライラが募っていましたし、親の私も、紙を全部使い切ってしまうのは止めなければと思いました。

そこで私は、「あら、どうしたの?」と娘に声をかけました。

「ちょっと落ち着いて。お友達は、仲良しの子が作ってくれたカードなら、どんなものでも気に入ってくれるはずよ」と。

すると娘は「ううん、そんなことない!」と叫び、泣きじゃくり始めました。

「できないの!」

そう言って娘は、もう1枚、紙をくしゃくしゃにしてしまいました。

子どもが見せた完璧主義な一面に戸惑い

我が家では当時、さまざまなことが起きていました。

特に、私たち夫婦の間には男の子が生まれたばかりで、娘も、弟を迎えるという人生における一大変化に直面していたのです。

とはいえ、娘がこうした完璧主義の傾向を見せたことはそれまでなかったので、私は気がかりに感じました。

完璧であろうとするあまり、何もできなくなることがあるのを、私は身に染みて知っていたからです。

「完璧にできること以外は何もしない」という姿勢では、安心できるコンフォートゾーンを脱して挑戦することなど不可能です。

我が子に、もっと自分に寛大でも良いのだとわからせ、うまくいかないこともある試行錯誤の段階を受け入れてもらいたい。

何があっても自分は守られ、愛されていると実感させたい。そのために、親には何ができるでしょう? 

子どもへの接し方をソーシャルワーカーがアドバイス

そこで私は、Rebecca Newkirk氏に、子どもへの接し方についてアドバイスを求めました。

Newkirk氏は免許を持つ臨床ソーシャルワーカーで、完璧主義を克服したいと考える人たちへの助言を専門分野としています。

(答えを先に言ってしまえば、「親の行動によって、子どもに完璧主義が植え付けられてしまうことはありますが、親の態度次第で克服は可能」とのことでした)

子どもが完璧主義に陥る原因は?

完璧主義の核心にあるのは、安心ではないという感覚を抱いたあとで、何とか安心感を得るために「ある程度のコントロールを手にしたい」と望む感情です。

子どもの完璧主義という問題にこの定義を当てはめると、焦点となるのは、感情的な安心感と、保護者との安定した関係です。

子どもというのは、良くも悪くも保護者の支配下にある存在です。

一般的には、保護者の機嫌が良ければ優しく接してもらえるので、子どもは安心感が得られます。逆に、親の機嫌が悪いと、子どもの側は、親との関係そのものが絶たれたように感じるものです。

機嫌が悪い親は、子どもから見るとよそよそしかったり、返答が鈍かったり、ピリピリしたりしています。こうした時の親は、普段なら面白いとか、かわいらしいと感じるような子どもの行動にも、怒りをぶつけてしまうことがあります。

こうした通常と異なる親の行動パターンは、子どもにとっては恐ろしいものです。

子どもは、親の反応(良いものでも悪いものでも)を、自分の行動に対する直接的な反応だと受け止めます。親が不機嫌な理由は何なのかとか、自分と関わりのないことで親の機嫌が変わる場合があるのだと考えることはありません。

従って、子どもは不安になります。そして、こう考えるかもしれません。

「前に僕がまくらを投げた時は、まくら投げ合戦をして、ママも大笑いしていた。でも、さっきまくらを投げたら、きつく叱られた。僕のまくらの投げ方が間違っていたのかな?」と。

このように、因果関係が正当化できない物事に原因を求める呪術的思考が、子どもの心に完璧主義的な傾向を芽生えさせていくのです。

「呪術的思考」が子どもの完璧主義の原因になる

呪術的思考は、幼い子どもにとっては正常な発達過程の一部であり、その傾向は2~7歳のころにピークを迎えます。

「鏡を割ると不幸になる」といった迷信の根幹にも、この呪術的思考があります。

子どもがこの呪術的思考を親との関係に当てはめると、「昨日、僕が青い服を着たらママはすごく機嫌が良かった。今日も僕は青い服を着よう」といった考え方になります。

この思考の問題点は、実際には、母親の機嫌が良かったのは青いシャツのせいではない、というところです。

そのため、2度目に青い服を着た時に、最初の時と同じ反応を得られないと、子どもは自分が間違っていたのだと考えてしまいます。

「今日着たシャツの青色が良くなかったんだ」とか、「シャツの形が整っていなかったのが悪かったんだ」というように。

母親の機嫌が良いのは自分の着ているシャツが原因ではない、と気づいてしまったら、子どもは「自分には親の機嫌を良くする力がない」あるいは「良くする方法を知らない」という現実を突きつけられることになります。

そうなれば不安感がさらに増すので、自分に厳しく当たることで望ましい結果を得ようとするほうが、子どもにとっては望ましい行動となるのです。

「僕がもっと頑張れば/ちゃんと気をつければ/学校で良い成績を取れば/きょうだいゲンカを収めれば、お母さんの機嫌が良くなって、僕も安心できる」という理屈です。

完璧主義の核心にあるのは、安心ではないという感覚

子どもが完璧主義に陥るのは、親の影響?

もちろんそうです。多くの場合、親が言ったことよりも、むしろ親が口に出さなかったことのほうが、影響は大きいように思います。

母親が仕事から帰ってくるのをワクワクしながら待っている、幼い子どもの例で考えてみましょう。

家に帰ってきた母親の機嫌は良くありません。

子どもは「お母さんは私の顔を見て大喜びしてくれるはず」と期待していますが、実際の母親はほとんど反応を示さないばかりか、ひどい場合には、目に見えてイライラしています。

親なら誰もがこうした態度を取ることがありますよね。でも、なぜそうなったのかをきちんと説明しないで放っておくと、子どもの心に完璧主義を植え付ける結果になりかねません。

母親が娘に対し、「お母さんはあなたの顔が見られてとっても嬉しい。でも、今日はお仕事で大変なことがあって、悲しくて疲れているの」と説明してあげれば、話はだいぶ違ってきます。

私が強調したいのは、子どもの年齢にかかわらず、説明は必要だという点です。まだ本当に小さくて、親が話していることの意味がわからないような年齢でも、ぜひこうした話をしてあげてください。

親が自分の気分について子どもに説明すると、子どもの情動や心の知能指数(EQ)の発達が促されます。けれども、効用はそれだけにとどまりません。

「人は時に不機嫌になるけれど、それは普通のことで、誰かのせいではない」ということを、子どもに教えることができます。

それによって、時には不機嫌になって構わないのだという許可を子どもに与えることにもなります。また、親が不機嫌になった時も、子どもはそれを受け入れられるので、自分のせいだと考える傾向にじかに対処できます。

子どもの完璧主義を改善するために、親にできることは?

子どもが努力によって成し遂げた成果よりも、そこにいたるまで(本人が努力を積んだ)過程を褒めるようにしてあげてください。

「よくやった、スペリングテストで良い成績だったね!」と言うよりも、「スペリングテストに向けて、一生懸命勉強したことを誇りに思うよ」と声をかけるほうが効果的です。

人は結果ではなく、努力を褒められたほうが嬉しいものです。

ですから、同じ褒めるのでも、「その服を着た君はとてもきれいだね」と言うより、「そのコーディネートは君らしさをとても良く表現しているね」と言うほうが、相手に喜んでもらえるはずです。

子どもの心に配慮しながら褒め言葉を届ける方法としては、「Nurtured Heart Approach」と呼ばれるメソッドもあります。

簡単に言うと、子どもが特定の課題について挙げた成果を、その子の特質と結びつけて褒めるやり方です。

「とても賢いね」と言う代わりに、「あの質問に答えられたのを見て、君がどれだけ賢いかわかったよ」と言うのです。

あまり良い例ではありませんがイメージは伝わるかと思います。

子どものしたことの中から、褒めるべき特質を具体的に表している事柄を見つけ出すわけです。具体的でない褒め言葉はワンパターンになりがち。

その結果、子どもはいつも同じことを言われて、「この人の言っていることはウソだ」と思うようになってしまいます。

子どもというのは、良くも悪くも保護者の支配下にある存在です。

一般的には、保護者の機嫌が良ければ優しく接してもらえるので、子どもは安心感が得られます。

逆に、親の機嫌が悪いと、子どもの側は、親との関係そのものが絶たれたように感じるものです。

完璧主義の兆しに留意すべきなのは何歳くらいから?

これはなかなか難しい問題です。

私としては「かなり幼いころから気をつけてください」と言っておきたいですね。いつも何かを心配している2歳児は、大きくなってから完璧主義に陥る可能性が高くなります。また、親が怒っている時に、とりなそうとしてくる子どもは要注意です。

最近、私と夫が言い争いをした時に、1歳の娘が音を立て始めました。

私がちゃんと顔を見て反応を示さないと、娘はとても悲しそうな表情を見せました。そして、私が怒りを鎮めた(あるいは「娘のおかげで怒らないで済んだ」と言うべきでしょうか)時にようやく静かになったのです。

これ自体は問題ではないですし、完璧主義の兆しとも言えません。

ただし、こうしたタイプの行動は、今後娘が成長するにつれて、標準的、あるいは健康的と呼べる範囲を超えてエスカレートする可能性をはらんでいます。

それぞれの子どもや、その発達段階によって大きく変わりますが、完璧主義が表れ始めるのは、早い子で4~5歳くらいからと考えられます。

この年代は自分でできることの幅が広がる時期で、字がきれいに書けない/部屋の掃除が完璧にできない/コーディネートがキマっていない/先生からの反応が思ったほど良くなかった、といったことを理由に、必要以上に自分を責める可能性があります。

完璧にできず子どもがイライラし始めた時、親にできることとは?

(例えば、私の娘は自分で書いた字に満足できず、書き損じの紙を丸める行動を繰り返していたのですが)

親は落ち着いて、中立的で、思慮深い態度を保ちましょう。

こうした場面では、私たち親は、子どもに気持ちを抑えてほしいと考えます。ですから、私たち自身もはやる気持ちを抑えなければいけません。子どもの気持ちが落ち着くまで、親はできるだけそばにいてあげましょう。

ただその場に座って、いつでも対応できるようにしておくだけでもかまいません。

子どもが親の言うことをまるで受け入れられなかったり、泣き叫んだりするようなら、「話す気になるまでずっとここにいるよ」とか「あなたは1人じゃない」と声をかけてあげるだけで良いのです。

子どもが少し落ち着いて、親の話を聞ける状態になったら、穏やかな口調でこんな風に語りかけてください。

「思うように字が書けなくて、イライラしたんだね」とか、「これでも十分良く書けているけれど、もっとうまく書かないといけないと思っているんだね」というように。

基本的には、子どもの気持ちを推測して、優しく語りかける姿勢が望ましいでしょう。

それにより、子どもは感情を表す言葉を身につけ、自分の気持ちを言葉で説明できるようになります。起きたことについてあれこれ話すのは、子どもの気持ちが落ち着いてからにしてあげてください。

そうなれば、書いた字(やその時に子どもが不満を覚えているもの)が思った通りでなくても、十分素晴らしく、愛すべきものだと伝えることができるはずです。

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Michelle Woo - Lifehacker US[原文