Facebookは死亡ユーザーが蔓延するデジタル墓場になってしまうのか

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  • author Melanie Ehrenkranz - Gizmodo US
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  • Kaori Myatt
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Facebookは死亡ユーザーが蔓延するデジタル墓場になってしまうのか
Image: Rainier Ehrhardt/Getty Images News/ゲッティ イメージズ

Facebookでお別れ。

登録してから、わずか10年も経っていないと思うのですが、すでに知人の数名の死をFacebookで知りました。心臓発作で急死した友達はなんと、Facebookの更新中にブラウザを開いたまま亡くなっていたとか。また脳梗塞で30代で亡くなった知人もFacebookでお知らせが回ってきました。その後その友人のFacebookはそのままで、ときどき彼が死の直前にシェアしていたリンクから投稿が自動送信で送られてきたことがあり、周辺の友人一帯が凍り付いたことがありました。

そういえば、自分がこの世からいなくなってしまったら、これらのデータは一体どうなってしまうのか、考えたこともありませんでした。米GizmodoのMelanie Ehrenkranz記者がお届けする「デジタル墓場」についての考察をどうぞ。人ごとじゃありませんよ。


Facebookが終焉を迎えるのが先か、それとも私たちユーザーが死に絶えてしまうのが先か。

Facebookは今や世界中の人がこぞって利用しているため、ユーザーの増加が頭打ちになってしまい、株価にも影響しちゃっていることは、以前にも米Gizmodoの記事に書かれていましたね。頭打ちになってしまったユーザー数は今後すぐには伸びていかないんじゃないかとも予想されています。また取締役の中にはちょっとイカれた人もいて、死の恐怖に取り憑かれてしまったりもしているようです。残念ながら死は誰にも避けられないもの。

ある研究によれば、どうやらFacebookは近い将来、ソーシャルメディアとしての機能よりも、ユーザーの「デジタル墓場」としての機能のほうがより有用になるのではないか、などという疑問が呈されているようです。ユーザーの死後のデジタルライフに、現代社会は今後どう責任をとっていったらよいのでしょうか。

2060年に到達する前に、逝去してしまったユーザー数が多くなる!?

その研究とは、『Facebookのユーザー数を死者が上回る可能性について。死の未来についてのビッグデータ的アプローチ』と題された、Big Data & Society社から出版された論文です。著者たちはOxford Internet Instituteの研究者2人。この論文では2つのシナリオで精査しています。まず、Facebookのユーザー数の伸びが昨年の時点で完全に止まってしまったとした場合。もうひとつは引き続き毎年13%の成長率で、狙った国、年、年齢のターゲットマーケットへの進出を達成した場合。

論文では、これらのシナリオがそのままの形で実現されるものではないとしながらも、死亡ユーザーの数は「このふたつのうちのいずれかに当てはまる」ようになるのだとか。いずれにしても、この論文では2060年に到達する前に、「Facebookには必然的に逝去してしまったユーザー数が多くなる」と結論づけています。

この論文では、国連の年齢別死亡率の予測データを使用したとされています。また、Pythonプログラミングを使用して、Facebookのオーディエンスインサイトページを解析。Facebookユーザーの月別アクティブユーザー数を、年齢および国籍別に把握しています。ただし、論文内でも指摘されているとおり、Facebookではどうやらユーザー数を水増ししているようだという報道がありますし、Facebookが公表しているデータからは18歳未満の児童は除外されており、65歳以上のユーザーもひとくくりにされています。またプロフィールが未だにあるものの、すでに死亡しているユーザーも除外されているという事実から、この論文の正確性には議論の余地があるようです。

100年後には死亡ユーザー数が49億人を超える

この研究では、2018年の時点でFacebookが新しいユーザーを獲得する努力を止めてしまったと仮定すると、「最低でも14億人のユーザーがご逝去してしまう」としていますが、あのCambridge Analyticaの余波を受けても新しいユーザーと収入を獲得し続けたくらいなので、よっぽどの壊滅的なすごいスキャンダルが起こらない限りは、これはありえないと言ってもいいんですがね。引き続き今の調子でFacebookがユーザーをばんばん獲得し続けていった場合については、100年までに死亡ユーザー数は49億人を超える見込みになるとか。 論文によれば、死亡ユーザーのプロフィールが増えるのは、南アジアとアフリカに集中するとのこと。

「社会的なレベルでは、まだ疑問を呈するのみにとどまっており、ディープな部分はこれからもっと明るみにでてくるでしょう」とこの論文の筆頭筆者であるカール・オーマン博士はオックスフォード大学に語っています。博士は逝去したユーザーにまつわるデータの権利はどこにあるのか、そのデータは倫理的にどう取り扱うべきなのか、についても言及しています。

遺されたデジタル資産をどう扱うか。最終的にはソーシャルメディアを使うすべてのユーザーが管理の対象となるのです。人は誰でもデータを残していつか死にます。逝去したユーザーのプロフィールは単なるプロフィールの枠を超えた意味を持つことも、ときにはあるでしょう。故人のデータが世界的な遺産になることだってありえるのです。

ユーザーのデータは営利企業だけに帰属すべきではない

この論文は、これからの数十年で、Facebookのようなソーシャルメディアにおいて、死亡したユーザーがどのように社会に影響を与えるのか、その深刻度を理解するための手かがりになりそうです。また、単にここで多くのプロフィールが営利のみを目的としていることや、失った人を悼む遺族についてを取りざたすることが、この調査の目的ではありません。膨大なデータについての重要性と、そのデータがどこに帰属するのか。そこにある課題についての疑問を投げかけるのが、この論文の目的です。

このデータは少なくとも利益を追求する営利企業だけに帰属すべきではありません。特にその企業が物議をかもしているような場合はなおのこと。「歴史的に重要なデータは人類すべてのために保存するべきであり、自己の営利を追求するだけのために営業しているソーシャルメディア企業にそのキュレーションを任せるべきではない」と論文にも記載されています。

論文には研究内容とともに地理的なデータの分布も記載され、専門家に役立つ内容となっています。 データが集中しているのは西洋以外の国々であることにも言及されています。しかし、課題は残ります。個々のユーザーのプライバシーを守りながらどうやってこれらのデータを集めるのか、将来の世代にこれを受け継いでいく、このデータを集めるのにふさわしい者はだれか。共著者のデビッド・ワトソン博士は、Facebookは歴史家、アーカイビスト、考古学者、倫理学者などにその管理をゆだねるべき提案しています

「オーウェルが『1984』で予言したように、過去への記憶をコントロールすることができる者は"現在"もコントロールできるのです」とワトソン博士。これが意味することは何かわかるでしょうか。権力のバランスが崩れることにより近未来がディストピアと化すのがいやなら、また歴史がゆがめられることを懸念するならば、どうするべきか。私たちが取り組むべき課題は、データにどんな利害関係者がいるのか、その人々にまつわるさまざまな価値観を考慮したうえで、持続可能で威厳ある解決策を設計することではないでしょうか。