もし大きな地震に遭って何日も停電・断水に見舞われたらそこに留まらず、「被災していない近隣都市までバス・乗用車で行って、トラベル記事のネタ探しをする」という心づもりがありました。

はたして2018年9月に、当時住んでいた函館市で地震が起き、停電・断水となりました(震源自体はかなり離れた胆振地方)。

そこで、計画通り札幌市まで行こうとしましたが、「北海道全体が停電」という予期しない事態で、どこにも行けません。仕方なく、断水は免れた同市内の実家に寝泊まりすることになりました。

被災経験者おすすめのトランプ

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「災害そなえトランプ」の中身
Photo: 鈴木拓也

照明は小さな電池式LEDランプという中、「こんなに手持ち無沙汰な時は、トランプでもあれば」と思いました。

トランプなら、老親を含め誰でもルールの説明なしに、みんなで遊べるからです。 なので、一被災者のアドバイスとして、地震に備えておきたいアイテムに、ぜひトランプを加えておきましょう。

特におすすめなのが、先般全国発売された「災害そなえトランプ」(ビバリー/プラスアーツ、税込1080円)です。

これは、通常のトランプに震災という非常時向けのTipsが載った、いわば防災ミニマニュアルです。

遠方の家族との連絡の取り方、段ボールでベッドやトイレを作る方法、ハンカチやビニール袋の活用術など、いざという時に役立つ情報がコンパクトにまとめられています。

「災害そなえトランプ」は、実際に被災するまで備蓄品の中に放置しておくのでなく、通勤電車内で単語カードのように1枚ずつ読んで知識を深めておくとよいでしょう。カードの中には、本棚の固定方法など、地震が起きてからでは遅い内容も結構ありますし。

では、具体的にカードはどんな内容から構成されているか、幾つか紹介しましょう。

水はあらゆる局面で必要になる

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「災害そなえトランプ」の水に関するカード(一部)
Photo: 鈴木拓也

電動ポンプで屋上の貯水槽に水を貯めるマンションは、停電するとポンプが止まって断水を引き起こします

もちろん揺れによる水道管の破裂でも、付近一帯が断水します。こんな時に、コンビニやスーパーの棚から真っ先になくなるのが、ペットボトル入りミネラルウォーターです。

水は、飲用、調理、入浴、トイレなど様々な局面で必要とされます。特に飲み水がないと、命にかかわります。

「災害そなえトランプ」では、飲み水は1人1日2リットル、7日間分を確保するよう指示されています。4人家族なら、ペットボトル(大)で28本ストックしておく必要があるわけです。

もちろん調理にも水は使いますが、極力節水することになります。

例えば、「ラップやホイルの上で調理し洗う水を節約」。これは、まな板を洗う回数をできるだけ減らすための知恵。ラップ・アルミホイルは使い捨てます。

トイレはどうする?

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「災害そなえトランプ」のトイレに関するカード(一部)
Photo: 鈴木拓也

もし南海トラフ地震が起きたら、下水道システムは大被害を受け、その影響を被る人は3千万人を超えるとも推定されています。下水道が復旧するまでの間は、トイレは使えないものと想定しなければなりません。

「災害そなえトランプ」で大きなウェイトを占めるのが、下水道が破壊されたときのトイレ対策。まず、事前に備えておくべきは、家族が最低1週間しのぐのに十分な「携帯トイレ」

そして、ゴミ袋、消臭剤、消毒液、トイレットペーパーなど。携帯トイレがなくなった場合の、ゴミ袋と新聞紙で作る緊急用トイレや、屋外でも使えるダンボールトイレなどにも言及されています。

被災時の命をつなぐ食事

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「災害そなえトランプ」の食糧に関するカード(一部)
Photo: 鈴木拓也

大規模な震災時は、初動で人命救助が優先されるため、食料の支給は後回しになります。よって、それまでの間をしのげる食料はストックしておかねばなりません。

目安は1週間分。

この期間を、いつもは食べない非常食オンリーで占めるのではなく、日常の食事をできるだけ続けられる「ローリングストック法」がすすめられています。

これは、ふだんから食料を多めに買いだめしておき、定期的に古いものから消費し、消費した分を買い足すというもの。

また、冷蔵庫が停電で止まったときの対処法や、食器やテーブルがない時の代用品の製作方法なども「災害そなえトランプ」では説明されています。


このように「災害そなえトランプ」には、とても有用性が高い情報が盛り込まれています。

1点だけ惜しい点を挙げるなら、狭いスペースにイラストも交えて解説しているため、どうしても舌足らずな内容もあることです。

本製品のベースになるのは、2016年に刊行された書籍『地震イツモマニュアル』(ポプラ社)です。

本書を読んで「あ、なるほど」と腑に落ちるものが、ちらほらありました。週末の空き時間に本書を読まれ、「災害そなえトランプ」の記載内容を補完するとよいかもしれません。

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Image: 鈴木拓也

Reference: 災害そなえトランプ