ファーウェイ、19年秋にも自前OSか
【広州=川上尚志】中国通信機器最大手の華為技術(ファーウェイ)は今秋にも、スマートフォン(スマホ)など向けに自社開発した基本ソフト(OS)を実用化する。複数の中国メディアが同社幹部の発言として21日報じた。同社は自社のスマホなどに米グーグルのOSを採用しているが、米国による事実上の輸出禁止措置で関連ソフトが使えなくなる恐れがあり、自前のOSに切り替えて対応するとみられる。
中国メディアによると、ファーウェイの消費者向け端末事業グループの最高経営責任者(CEO)である余承東(リチャード・ユー)氏が、2019年秋から20年春にかけて自前OSを実用化すると明らかにした。スマホだけでなくタブレット(多機能携帯端末)やパソコンなど自社の幅広い端末に採用するという。
ファーウェイはスマホなどの端末でグーグルのOS「アンドロイド」を採用している。さらに海外で売る端末については、アプリ配信の「グーグルプレイ」やメールソフトの「Gメール」など、グーグルの主力ソフトも搭載する。ただ、米商務省による事実上の輸出禁止措置が16日に発効したことで、ファーウェイが今後作る端末ではグーグルの主力ソフトが使えなくなり、利便性が下がる可能性が出ていた。
ファーウェイの任正非・最高経営責任者(CEO)は21日、中国メディアの取材に対し、自前のOSを「作って運用することはできる」と説明し、開発を進めていることを明らかにしていた。
ファーウェイ制裁、米ハイテクを直撃
【ニューヨーク=宮本岳則】中国の通信機器最大手、華為技術(ファーウェイ)への米国の事実上の輸出禁止規制が、米ハイテク企業に打撃を与えている。ファーウェイ向けの出荷減で顔認証部品の米ルメンタム・ホールディングスが収益見通しを引き下げた。インテルなど部品供給を制限する動きも広がる。米商務省は制裁措置の一部を3カ月猶予すると表明したが、米ハイテク企業に成長鈍化の懸念が強まる。
スマートフォン(スマホ)向けの顔認証部品を手がけるルメンタムは20日、2019年4~6月期の売上高見通しを最大12%下方修正した。ファーウェイへの禁輸措置で、売上高の2割弱を占める同社向けの部品供給ができなくなったためだ。販路の変更にも時間がかかり、営業利益率の予測も引き下げた。
ファーウェイへの禁輸措置を受けた米企業の業績修正が判明するのは初めてとみられる。20日の米株式市場ではルメンタム株が4%安と売り込まれた。
20日の米市場では半導体関連株から資金が流出した。ブロードコムやクアルコムは6%安、インテルは3%安になった。半導体株の値動きを示すフィラデルフィア半導体株指数(SOX)も4%安となり、約2カ月半ぶりの安値をつけた。米ジョーンズトレーディングのストラテジスト、マイケル・オルーク氏は「ルメンタムの下方修正で、ファーウェイ向け輸出規制の影響が早くも顕在化した」と指摘する。
ファーウェイが18年に調達した約700億ドル(約7兆7000億円)の部品のうち、米企業からの調達分は110億ドル超あった。米国の禁輸措置はファーウェイの拡大戦略にとって痛手となるとともに、米ハイテク企業も大口顧客を失う事態に直面する。
すでに影響は出ている。米メディアによると、インテルやクアルコム、ブロードコムといった半導体メーカーは20日までにファーウェイに半導体を供給しない方針を従業員に伝えた。
米金融大手ゴールドマン・サックスの調べでは、半導体メモリー大手のマイクロン・テクノロジーは売上高の13%がファーウェイ向けとされる。通信用半導体の米スカイワークス・ソリューションズも最大で10%程度に達するという。株式市場は早くも「第2のルメンタム」を警戒する。
こうしたなか、米商務省は20日にファーウェイへの禁輸措置の一部取引について3カ月間の猶予期間を設けると発表した。既存の通信ネットワークや携帯端末の保守やソフト更新にかかわる取引などを一時的に容認する。16日付で発効した禁輸措置で米国の利用者に影響が及ぶのを回避する。
米国の地方ではファーウェイの機器を使って通信網を運営する中小規模の通信会社が多い。保守サービスが受けられなくなれば、利用者に不便が生じる可能性があった。
グーグルは一部ソフトウエアの供給を制限する方針と伝えられるが、猶予期間はセキュリティ更新を続けると表明した。
ただ3カ月の猶予期間を設けても、ファーウェイを取り巻く環境は大きくは変わらない。同社の任正非・最高経営責任者(CEO)は21日、中国国営テレビ(CCTV)などの取材に対し、猶予措置について「我々にとって大きな意味はない」と語った。不測の事態に備えて、半導体などの確保を進めてきたと強調した。
「米国製と同様の半導体チップを製造する能力はある」と自信を示したが、外部調達からの円滑な代替ができるかは不透明だ。ファーウェイ問題に象徴される米中対立は、勝者なき消耗戦の様相を呈している。