音質にこだわりつつもお洒落なヘッドホンを作るMaster & Dynamic(マスター&ダイナミック)から、ノイズキャンセリング搭載のワイヤレスヘッドホン・MW65が発売されました。数々のヘッドホンを試してきた米GizmodoのAdam Clark Estes記者がレビューしてるんですが、「ふたつの意味でソニーの1000XM3を超えた」とかなりの好感触のようです。具体的にどのへんがいいんでしょうか? 見ていきましょう。
最近はノイズキャンセリングヘッドホンといえばソニーの1000XM3、みたいな雰囲気がありますが、ここに新たな王者が生まれようとしています。Master & DynamicのMW65です。ノイズキャンセリング機能搭載のオーバーイヤーヘッドホンはMaster & Dynamicとしては初めてなので、性能面で不安に思われるかもしれません。でもMaster & Dynamicの強みは、MW65でもラグジュアリー感あるデザインや飛び抜けた音質となって輝いています(ただしお値段は500ドル≒約5万5000円とお高めです)。ソニーにもまだまだ有利な面がありますが、これからはより守りを固めていく必要がありそうです。
ノイズキャンセリングヘッドホンは、音質的にもスタイル的にも長い道のりを経てきましたが、そのふたつの要素が両立しているプロダクトはわずかです。最初に出たBose(ボーズ)のQuietComfortはやけにメタリックなシルバーのイヤーカップで、しかも使うときは黒いボックスを腰にくっつけなきゃいけませんでした。それと比べたらMaster & DynamicのMW65は、ほとんど革命です。見た目もスタイリッシュだし、音も素晴らしいです。ノイズキャンセリング機能も、ちゃんと働いています。
Master & Dynamic MW65って何?:ハンサムなノイズキャンセリングヘッドホン
価格:500ドル(約5万5000円)
好きなところ:十分なノイズキャンセリング、素晴らしい音質、美しいデザイン
好きじゃないところ:値段が高いこと
ハイエンドヘッドホンにノイキャンをプラス
Master & Dynamicは2013年にニューヨークで創業したオーディオ企業で、形態と機能にこだわった製品作りで知られています。要はおしゃれで音も良いヘッドホン・スピーカーのメーカーです。MW65は、Master & Dynamicのシグネチャーとなったラムスキンと金属でできたヘッドホンシリーズの第4世代となります。これまでのものと比べると、イヤーカップ部分に赤い小さなボタンがあるのが違っていて、ここでアクティブノイズキャンセリングをコントロールするようになってます。
フラッグシップデザインにノイズキャンセリングを追加したのは、Master & Dynamicにとって大きな決断でした。彼らはまず完全ワイヤレスイヤホン・MW07にアクティブノイズキャンセリングを搭載して高い評価を得ていますが、この技術をオーバーイヤーヘッドホン市場にもってくるのは、ちょっとしたチャレンジだったはずです。でもMaster & Dynamicのハイエンドでハンサムなヘッドホンは、Boseとソニー、二社の無骨な黒いプラスチックのヘッドホンが幅を利かせる市場の中では突き抜けています。同じように美しいSennheiser(ゼンハイザー)のワイヤレスヘッドホン・Momentumも思い起こされますが、Momentumのノイズキャンセリング機能は全然ダメでした。
でもMW65ではそんなことはなく、ノイズもしっかりキャンセリングされています。ふたつのマイクアレイを使ったビームフォーミング方式で周囲のノイズを分析して、音を打ち消しています。ちなみにこのクラスでベストであるソニーの1000XM3は、4つのマイクアレイと専用のHDノイズキャンセリングチップを搭載しています。MW65はそこまで手厚くはやってなくて、大気圧に合わせた調整機能もありません。これがあると、飛行機ではすごくありがたいんですけどね。でも少なくともノイズキャンセリング自体は、MW65もソニーやBoseのトップモデルと比べて遜色ないレベルに達しています。
またMW65は、Google Assistantにも対応しました。Google AssistantアプリとMW65をペアリングしておくと、右のイヤーカップのボタンを押すだけでGoogle Assistantに話しかけられるようになります。MW65経由でいろんな通知を聞いたり、バッテリーライフをチェックしたりもできます。ただソニーの1000XM3みたいな他のヘッドホンにもこの機能はあって便利ですが、みんなが使いたくなるってものでもありません。
MW65は驚くほど軽く、250gしかありません。250gというのはBoseやソニーといった競合のヘッドホンとは同程度ですが、Master & DynamicのMH40やMW60といった従来のヘッドホンと比べるとはるかに軽いんです。長時間着けているとだいぶ違いを感じられそうです。僕の感じとしては、ソニーの1000XM3に比べてイヤーカップが若干小さくてヘッドバンドのパッドがやや薄いので快適さは落ちますが、その分MW65のほうがすっきりした印象になるとも言えます。
完ぺきじゃない部分も
ただ今回のレビュー中、いくつか変なことに気が付きました。たとえば風の強い日に屋外で試してると、マイクが風の音を拾ってしまうんです。ちなみに屋内では問題なかったです。それからヘッドホンを頭に付けたまま動かすと、妙にうなるような音が聞こえたんですが、これはノイズキャンセリングが調整されているときの音だったのかもしれません。僕みたいにしょっちゅうヘッドホンの位置を直してしまう変なクセでもない限り、ほとんどの人は普通に使っているだけでは気づかない程度だと思います。
それからノイズキャンセリングが音質に影響してしまうことはまったくありませんでしたが、逆にあんまり強力じゃないというか、ガヤガヤしたカフェとか轟音の鳴る地下鉄といったうるさめの環境では、周りの音を完全には遮断できてませんでした。上にも書きましたが、MW65のアクティブノイズキャンセリング性能は僕が知る中でのベストではなかったです。でもきっと、今まで以上に音楽を楽しむには十分な性能だと思います。
とにかく素晴らしい音、そしてデザイン
いろいろ書きましたが、MW65はやっぱりMaster & Dynamicらしい素晴らしいヘッドホンです。音質は飛び抜けていて、特にRadioheadの『2+2=5』みたいなディテールのリッチな曲だと、タップやエフェクトのひとつひとつが部屋の別々のところから響いてくるような感覚になるし、ギターの荒々しい部分でも失われるものはありません。クラシック音楽を聞いても素晴らしく、ベートーベンの『第九』なんて、良い音のヘッドホンで聞いたことがない人がMW65で聞いたら耳へのごちそうになると思います。静かな部分では、もっと音が大きければいいのに…と思いかけてしまうんですが、強い音の部分になると、Master & Dynamicのチューニングのおかげでボリューム調節する必要なかったんだと思い直します。
MW65、僕はこの外見も含めて好きですが、万人向けではありません。素晴らしい音質や優れたインダストリアルデザイン、耳に触れるラムスキンのしなやかさといったものを愛するお金のある人たちが、この500ドルのヘッドホンのターゲット層のようです。ソニーの1000XM3はノイズキャンセリングはMW65より高性能ながら音質は若干落ち、素材もどうってことない金属とプラスチックですが、350ドルで買えるし、見た目も悪いってことはないです。それにヘッドホン聞いてるときは、自分からは見えないですしね。
で結局MW65が欲しいかっていうと、やっぱりそう思う人は多いと思います。MW65は物欲を刺激するガジェットであり、物欲を刺激することこそがMaster & Dynamicの特技だとも言えます。夢のような音と、ラグジュアリー商品みたいなデザインなので、お値段もラグジュアリーになってしまうんでしょうね。
まとめ
・ハイエンドなヘッドホンに、ほどほどのノイズキャンセリング
・他のMaster & Dynamicヘッドホンと同じ素晴らしい音質
・複数デバイスで使っても素晴らしい接続性
・24時間持つバッテリーライフ
・ヘッドバンドとイヤーカップがラムスキン
・ラムスキンってすごく高いんでしょうかね…。