最新記事

日本企業

日本の正社員の給与の約半分は40~50代前半の社員に支払われている

2019年5月22日(水)15時45分
舞田敏彦(教育社会学者)

日本企業の人件費のうち世代的に人数が多い40~50代前半の給与の割合が膨らんでいる metamorworks/iStock.

<企業が抱える人件費コストの内訳を見てみれば、年功賃金・終身雇用といった日本の雇用慣行が限界に達していることがわかる>

経団連会長とトヨタ社長が「終身雇用制を維持するのは難しい」という趣旨の発言をし、注目を集めている。グローバル化が進むなかでコスト競争に勝てないからだ。

企業にとって最大のコストは人件費だが、従業員の人数的に多い団塊ジュニアの世代が中高年期に達している。年功賃金で給与も上がっているので、トータルの人件費が重みを増している。これに耐えかねて、富士通やNECといった大企業も、45歳以上の中高年のリストラを始めている。

40代後半の正規職員は全国に471万人ほどいる。彼らが手にした所得の総額を度数分布表から計算すると、25兆6909億円となる(総務省『就業構造基本調査』2017年)。同じやり方で年齢層別の正社員の所得総額を算出し、合算すると<表1>のようになる。

mai190522-chart01.jpg

全年齢層の合計は157兆8143億円となる。全国の正社員が手にした所得のトータルで、企業にすれば支払った人件費の総額に当たる。年齢別の内訳をみると、40~50代前半の部分が膨らんでいる。全体の46.4%だ。正社員の給与の半分近くはこの年齢層に支払われていることが分かる。

年功賃金であるうえ、世代的に人数が多いものだから、こういうことになっている。これでは企業も立ちいかなくなるだろう。

いよいよ、年功賃金・終身雇用という慣行も限界に達しつつある。城繁幸氏の言葉でいうとこれは「人間の価値は年齢で決まる」システムで、給与は年齢に応じて機械的に上がり、かつ定年までいられる。高度経済成長期のようなピラミッド型の人口構成ならまだしも、上が厚く下が細い「逆ピラミッド」の社会ではこれを維持するのは難しい。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米経済、「信じられないほど」力強い=JPモルガンC

ワールド

北朝鮮、圧倒的な軍事力構築を継続へ─金与正氏=KC

ビジネス

米ビザ、四半期利益が予想上回る 堅調な消費動向で 

ビジネス

米国株式市場=続伸、マグニフィセント7などの決算に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 2

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の「爆弾発言」が怖すぎる

  • 3

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 4

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 5

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 6

    「なんという爆発...」ウクライナの大規模ドローン攻…

  • 7

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 10

    ロシア、NATOとの大規模紛争に備えてフィンランド国…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 10

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中