未来の補聴器は脳波を読み取って音を聞き分けるようになるのかも

  • author Andrew Liszewski - Gizmodo US
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  • Rina Fukazu
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未来の補聴器は脳波を読み取って音を聞き分けるようになるのかも
Image: Philips

音声認識のイノベーションとなるか...?

騒音のなかでも、話し相手の声だけはちゃんと聞き取れることってありますよね。これは気づかないところで、うまいこと雑音を消そうとしてくれる脳の働きが関係しているといいます。こうした人間の能力を補聴器にも適用できないのかと考えた研究チームがいます。彼らが試したのは、音だけでなく脳波の動きを使って聴き取るというアプローチでした。

もともと、ハイエンドなヘッドフォンと同様に、先進的な補聴器のなかにはホワイトノイズ除去に対応したものもあります。これにより車の騒音などをかき消すことはできるのですが、たくさんの人が集まった場所で特定の人の声を聞き分けるとなると、現在のテクノロジーでは難しい課題でもありました。

Video: Columbia University's Zuckerman Institute/YouTube

そんななか、脳外科手術を繰り返し受けているてんかん患者と協働し、新たなアプローチで補聴器の改良に取り組んだのがコロンビア大学の研究者らです。志願者の脳電極を埋め込んで調べたところ、脳波の動きが自然と、彼らが耳を傾けようとしている話者の話し方(音声パターン)を反映していることが明らかになりました。また、ほかの人の声で意識をそらそうとしても、結果は変わらなかったといいます。研究者らは、こうした脳の働きが、補聴器を格段に改善する鍵となると考えました。

コロンビア大学Mortimer B. Zuckerman Mind Brain Behavior InstituteのNima Mesgarani氏は、テクノロジーを組み合わせることで、単一の声の音を増幅させる新たなマイクロフォンの設計に取り組んでいます。

具体的には、ニューラルネットワークによって、音声処理アルゴリズムがすべての音を拾ったうえで、個々の音声のストリームに分離させます。これをリスナーの脳波と比較し、脳の活動に最も近い声を自動的に増幅させるため、最も識別しやすくなるという仕組み。

以前の研究アプローチでは、配偶者や友人など、よく話をする相手の声には反応できても、新しい人の声には対応できなかったという課題があったといいます。それが、アルゴリズムを事前学習させることで大きな改良が達成できたのだそう。

ただ、まだ課題はいくつか残っているようです。ひとつは、電極を脳に埋め込む必要なしに脳波を正確にモニターする方法を見つけること。また、現在のところ比較的静かな室内でのテストしか行なわれていないため、より騒音が大きく、気の散る要素も増えるような室外環境でも試してみる必要がありそうです。

このテクノロジーが搭載されたウェアラブル補聴器のプロトタイプが出回るのは、おそらく数年後になるかもしれません。まだまだ長い道のりがあるようですが、聴覚障害者を助けることに加えて、いずれAlexaやSiriなどスマートアシスタントの音声認識を向上させるのにも活用できるのではないかと考えられています。