メモ

スポーツ賭博が解禁された途端に海外のギャンブル企業に市場を支配されつつあるという事例

by Beating Betting

世界最大のカジノ街・ラスベガスを抱えるアメリカでは、ギャンブルが非常に盛んです。ルーレットやスロット、ポーカーなどがギャンブルの競技としてプレイされていますが、法律の改正によって、野球やバスケットボールなどのスポーツの結果にお金を賭ける「スポーツ賭博」がアメリカ全土で盛り上がりつつあります。そんなアメリカのギャンブル市場に起こりつつある変化を、海外メディアのThe Ringerが取り上げています。

The Rise and Fall of the Professional Sports Bettor - The Ringer
https://www.theringer.com/2019/6/5/18644504/sports-betting-bettors-sharps-kicked-out-spanky-william-hill-new-jersey


かつてアメリカでメジャーなギャンブル競技といえば、競馬だったとのこと。しかし、1917年にアメリカでは競馬を禁止しようとする運動が起こりました。第一次世界大戦さなかであったこともあり、競馬場には戦争税が課され、地方の中小競馬場は軒並み閉鎖することになったそうです。しかし、競馬を禁止してもギャンブルをする人が減ることはなく、1920年代にはプロ野球や大学のアメリカンフットボールリーグもギャンブルの対象となっていきました。

1930年から40年にかけて、アメリカでスポーツ賭博は最盛期を迎えましたが、その背景にはウォール街でスポーツ賭博ブームが起こり、電話を利用したブックメーカーネットワークが構築されたことも大きいといわれています。1930年代にはニューヨークだけでスポーツ賭博に年間およそ6000万ドル(約65億円)という大金が動いたとのこと。

by clifa

1960年代には当時の司法長官だったロバート・ケネディが違法なスポーツ賭博を取り締まろうと尽力したそうですが、それでもスポーツ賭博を排除することはできず、ファン人口は数百万人に達したそうです。しかし、1992年にNBA(アメリカプロバスケットボール協会)の呼びかけによってPASPA(Professional and Amateur Sports Protection Act、プロ・アマスポーツ保護法)が成立しました。PASPAは一部の州と例外を除いてスポーツ賭博全般を事実上違法とする内容で、PASPAの成立以降はアメリカでスポーツ賭博が急速に下火になっていきました。

2018年5月、アメリカの連邦最高裁判所はPASPAを違憲とする判定を下し、アメリカ各州でスポーツ賭博を合法化する流れが生まれました。

米最高裁がスポーツ賭博を解禁:日経ビジネス電子版
https://business.nikkei.com/atcl/opinion/15/134915/052200019/


突如として盛り上がるスポーツ賭博業界に目をつけたのが、ヨーロッパのカジノに進出するギャンブル企業でした。

by Erin Khoo

ヨーロッパでは以前からスポーツ賭博が盛んでしたが、その市場は既に飽和状態。そこに突然アメリカという巨大新興市場が登場したため、アメリカ国外からギャンブル企業がこぞって進出。例外として以前からスポーツ賭博を合法化していたニュージャージー州をはじめとして、ヨーロッパ式のスポーツ賭博が一気に広まりました。アメリカに進出するギャンブル企業の中でも特に積極的な展開を見せるのが、イギリス最大のブックメーカーであり、ロンドン証券取引所にも上場するウィリアムヒルです。ウィリアムヒルはアメリカの大手カジノである「エルドラド」と提携し、ニュージャージー州やアイオワ州など、13の州でスポーツ賭博サービスをほぼ独占的に提供。アメリカのスポーツ賭博市場において、イギリスのブックメーカーが大きな影響力を持つようになりました。

ヨーロッパ式のスポーツ賭博は、スポーツの結果だけではなく政治や芸能ニュースでもブックメーカーがオッズ(賭けの倍率)を決めてお金を賭けることができるというもの。オッズはブックメーカーが設定できるのですが、一度にかけられる金額に制限をかけられることも多いそうです。ヨーロッパのギャンブル企業が影響力を持つことによって、アメリカにおけるスポーツ賭博シーンも大きく変化しつつあるとのこと。

「Spanky」という名前でスポーツ賭博を中心に活動するプロギャンブラーのGadoon Kyrollos氏は、大学でコンピューターサイエンスの学位を取得し、卒業後はドイツ銀行に就職。真面目に働いていたKyrollos氏でしたが、趣味でギャンブルの理論書を読みあさっていました。Kyrollos氏はスポーツ賭博の中で期待値を計算するプログラミングを自ら組み、わずか2000ドル(当時のレートで約25万円)を元手に賭けを開始。インターネット口座を使わずにブックメーカーと直接賭け金のやりとりを行い、2年間で約4万ドル(約500万円)をゲットしたとのこと。

by Mikerussell

それ以降、プロギャンブラーSpankyとして活動を始めたKyrollos氏でしたが、今はスポーツ賭博を行おうとしても、大金を賭けることができないとのこと。大金を賭けて高い勝率を誇るプロギャンブラーはカジノからも煙たがられる存在となりつつあり、2018年11月、Kyrollos氏はいつものようにカジノでお金を賭けようとして拒否される様子をムービーで公開し、抗議しました。


ギャンブルで生計を立てるプロギャンブラーは「確実に勝てるところに大金を注ぎ込む」というスタイルでギャンブルを行います。しかし、一度にかけられる金額に制限をかけられてしまうと、とても生計を立てられるほどの稼ぎをあげることができないとのこと。また、近年、スポーツ賭博を行うプロギャンブラーがカジノから出入り禁止を受ける例が多く報告されていて、Kyrollos氏のようなプロギャンブラーはもはやアメリカでは思うようにギャンブルができない状況にあるそうです。

「スポーツ賭博のブックメーカーはもはや真剣なギャンブルを受け入れていない」という批判がギャンブルファンから巻き起こりました。これに対して、ウィリアムヒルは「私たちが稼ぐために一部のギャンブラーを禁止しているのは間違いです」と否定していますが、一方でウィリアムヒルのアメリカ支社でマーケティング部チーフを務めるシャロン・オッターマン氏は「私たちはビジネスをやっています。非営利団体ではありません」とコメントしています。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
8億円以上をカジノの「ルーレット」で荒稼ぎした学者が見つけた驚きの攻略法とは? - GIGAZINE

カジノ用システムの脆弱性を報告した研究者がベンダーの役員に襲われる事件が発生 - GIGAZINE

ハン・ソロとランドのミレニアム・ファルコンを賭けたギャンブル対決を360度ぐるっと見られる映像公開 - GIGAZINE

いかにスロットマシンが人から最大限のお金と時間を奪うように作られているのかを解説 - GIGAZINE

in メモ, Posted by log1i_yk

You can read the machine translated English article here.