新タイプの教育向けロボット。
ペットを飼いたくても飼えない世帯って、日本で全世帯の約半分も居るんですって。その大きな理由は、「生き物だから」。生き物だから、世話が必要。生き物だから、亡くなると辛い。生き物だから、隣の人に迷惑をかけてしまうかも。どれも理由の前に「生き物だから」がつくものが多いんです。
生き物を飼いたいのに、生き物だから飼えない。不思議だけど、それが真理なのかもしれません。
ペットを通じた教育に「ロボット企業」が名乗り出る
そんな潜在層に目をつけたのが、GROOVE X(グルーヴX)手がけるペットロボット「LOVOT(らぼっと)」。「あなたに愛されるために生まれてきた」というコンセプトをもち、LOVOTに直接オーナーを手助けするような機能はありません。
そもそも、なぜ人はペットを飼いたくなるのかというと「幸せ」や「癒し」を与えてくれる存在だから。それと、子どもの居る家庭では、ペットを通した「教育」もひとつの飼う理由になりますね。
そこで、LOVOTが教育としてのペットになり得るのでは?という仮説のもと、GROOVE Xは「LOVOT EdTechプロジェクト」を発足。LOVOT自体は2018年12月に発表されたロボットですが、今後は教育でLOVOTが役立つのか本格的に研究していきます。
今回、合わせて都内で発表会を催し、プロジェクトの発足表明を行ないました(詳しい参画企業や活動はこちらをぜひ)。
今までの教育ロボットとは違うアプローチ
ペットを家に迎えること育まれる教育は、もう少し専門的なことばで「情操教育」と呼びます。いわゆる、道徳的な考えや、個性などの人間性を養う教育のこと。ペットを大切にすることで養われることを、LOVOTが置き換えられるのでは?というわけです。
世の中には教育向けのロボットがとても多くなりましたよね。とくに多いのが、GUIでプログラムを書いて動作させるプログラミングロボット。この種のロボットは、プログラミング的思考を養うものが多いような気がします。
しかしLOVOTは、プログラミングロボットのような直接的な見返り(この場合、プログラミング的思考の育み)が目的ではなく、より人間性の部分の育みにフォーカスしているのが新しい。
「愛されるために生まれてきた」というコンセプトで、一方的に人が愛を注げるLOVOTだからこそ、こういった検証できるのかもしれませんね。
気になる「別れ」の表現
しかし、ペットが情操教育に有効なのはペットが「生き物だから」であるわけで、素直に、
「そこ、ロボットが置き換えられるの?」
という疑問が残ります。
たとえば、生き物とロボットの大きな違いに命の重みというのがありますよね。それに対して、LOVOT(あるいは今後のペットロボット全体)がどういったアプローチをとるのかすごく気になるのです。
GROOVE Xの林要CEOが言うに、LOVOTに愛着がつけば自ずと大切に扱うようになる。たとえば、故障などである一定期間LOVOTが居なるとして、それが子どもにとって悲しければ、情操教育になる。と。しかしこれは、あくまでも子どもに向けた話。
映画『her』では、ある日、多数の人間が自分と同じ人工知能を付き合っていることが発覚し、主人公と人工知能「サマンサ」との別れを表現しました。映画『ブレードランナー 2049』では、ホログラムを出力するための機械を破壊することで、人工知能「ジョイ」との別れを表現しました。
もちろん、生死について考えることだけがペットロボットに求められていることではありません。しかし、こうしたSFの世界のように「別れ」の表現は、ロボットの未来を考えたときに直面する大きなテーマだと感じました。命の尊さをテクノロジーで置き換えることは、とても困難なことだと感じますが、今後の研究がとても楽しみです。
Source: GROOVE X